『ONE PIECE』海軍将校たちの“多様な正義” 熱い信念の“ぶつかり合い“を振り返る

0

2023年06月02日 13:51  リアルサウンド

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

リアルサウンド

SwitchBoxより(イメージ)

『ONE PIECE』には、さまざまな人間の信念や理想のぶつかり合いが描かれている。その対象は海賊だけではなく、海軍も含まれており、彼らの標榜する「正義」には無数のバリエーションが存在するのだった。


(参考:【写真】ナミ、ハンコック、たしぎやビビのモデルも……『ONE PIECE』のキャラをイメージしたウェディングドレスが美しい


 物語が最終章に差し掛かった今こそ、その在り方を振り返っておくことには意義があるだろう。


 そもそも作中における海軍は、海のならず者から市民を守ることを役目としており、その地位が世界の治安を維持することにつながっている。そんな立ち位置を象徴するのが、元海軍本部元帥の“仏のセンゴク”が掲げる「君臨する正義」だ。


 センゴクはその信条を現実のものとすべく、時には非情に見えることもあるほど、徹底的に海軍の使命と向き合っていた。


 しかし彼が信じているのは、あくまで権力ではなく正義そのものだ。インペルダウンから多くの囚人たちが脱走した際、その事実を隠蔽した世界政府に対しては、疑念を抱いていた。


 また、センゴクの考え方をより先鋭化させた存在が、海軍元帥“赤犬”ことサカズキだ。彼が掲げるのは「徹底的な正義」であり、海軍の価値観にそぐわない者には一切容赦しようとしない。


 2年前のマリンフォード頂上戦争では、当時海軍大将だったサカズキが正義を貫く姿を見せ付けていた。その際には「人間は正しくなけりゃあ生きる価値なし」とも豪語しており、海賊に対する憎悪は深い。


 他方で、海軍のなかにはハト派の存在も少なくない。代表的なのが、現海軍大将の“藤虎”ことイッショウだ。


 彼が体現するのは「仁義ある正義」であり、ドレスローザの港町でルフィに助けられた際には、その正体を知りながら恩義のために見逃すという行動に出ていた。


 そして世界政府の体質や王下七武海の制度に対しても疑念を抱いており、しばしばサカズキと衝突することからも、海軍の価値観を絶対視していないことがよく分かる。


アニメオリジナルの「正義」を標榜する海兵も


 海軍のハト派としては、「どっちつかずの正義」を掲げる“黄猿”ことボルサリーノも興味深い。


彼は海軍の価値観を徹底するわけではなく、1人の人間として信念を持って動いているわけでもない。単行本64巻のSBSでは、オハラの惨劇をきっかけとして“どっちつかず”の境地に辿り着いたことが明かされていた。


 ただ、思わせぶりな態度も相まって、ボルサリーノを海軍に潜伏するスパイではないかと疑う読者も多いようだ。


他方で“青キジ”ことクザンは、正義観が途中で変わったキャラクターだ。かつてはサカズキに近い「燃え上がる正義」を掲げていたが、オハラ事件をきっかけに「ダラけきった正義」へと転向した。その後は海軍の所属を抜けたが、いまだに苦悩が続いているようにも見える。


 海兵たちの間では、他にもさまざまな思想が入り混じっている。海軍本部中将の“大参謀”つるは、「清らかなる正義」の標榜者。あらゆるものを洗濯する「ウォシュウォシュの実」の能力者にふさわしい正義観だ。


また、扉絵連載「エースの黒ひげ大捜査線」などに登場したコーミルは、「ゆとりある正義」を掲げていた。


 そのほかアニメオリジナルキャラクターとしては、『ONE PIECE 〜アドベンチャー オブ ネブランディア〜』に登場した天才策略家・コーメイが「知略による正義」を提示。そして「海軍超新星(ルーキー)編」では、「メリハリのある正義」をモットーとするプロディという海軍中将が登場している。


 物語が終盤に突入するなか、彼らの「正義」がどのようにぶつかり合うのか、今後の展開が楽しみだ。


文=キットゥン希美


    ニュース設定