高橋ヨシキが映画『怪物』と『ウーマン・トーキング 私たちの選択』をレビュー!

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2023年06月02日 17:21  週プレNEWS

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高橋ヨシキが『怪物』をレビュー!

日本有数の映画ガイド・高橋ヨシキが新作映画をレビューする『高橋ヨシキのニュー・シネマ・インフェルノ』! カンヌでも話題になった是枝裕和(監督)&坂元裕二(脚本)の期待作と、怒れる女たちの命がけの話し合い!

【写真】『ウーマン・トーキング 私たちの選択』のレビューにも注目!

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『怪物』

評点:★2点(5点満点)

「映画的で美しい瞬間」がすべてを曖昧にする

曖昧模糊とした映画......でもないのだろうが、肝心なところに踏み込まないため隔靴掻痒(かっかそうよう)の感は否めない。

我が子が学校でいじめに遭っているのではないか? 担任教師に問題があるのか? それとも学校自体のシステムや校長に問題があるのか?という「ミステリー」が『藪の中』を思わせる多角的な視点によって徐々に明らかになる物語構造は洗練されている。

が、観ていけば分かるように本作の主眼はそこにはない。映画の後半で前景化してくるのは、思春期前期のセクシュアリティの芽生えであり、同性愛への接近だ。にもかかわらず、本作は迂回に迂回を重ねて少年たちのセクシュアリティに肉薄することを拒む。

「好きな人がいるけど、そのことは人には言えない」という主人公に対し、とある登場人物はトロンボーンを持たせて「人に言えないことはね、こうやってプーッと吹いちゃいな」などと言うのだが、これは詩的なようで単なるタブーの強化でしかない。

自身のホモセクシュアリティを自覚していると思(おぼ)しき別の少年は父親に虐待され、学校でいじめられと悲惨の連続だが、「映画的で美しい瞬間」がすべてを曖昧模糊とした領域に強引に押し込んでしまうのだ。

STORY:大きな湖がある郊外の町の学校で起きた子供たちのケンカ。どこにでもあるトラブルに見えたそれは、やがて社会やメディアをも巻き込んだ大ごとへと発展していく。そしてある嵐の朝、子供たちは忽然と姿を消してしまう。

監督:是枝裕和
脚本:坂元裕二
出演:安藤サクラ、永山瑛太、黒川想矢、柊木陽太ほか
上映時間:125分

全国公開中

『ウーマン・トーキング 私たちの選択』

評点:★4点(5点満点)

無数の「問いかけ」と対峙することを迫るパワフルな映画

なんという映画だろうか! 

原作小説は2005年から2009年にかけて、ボリビア中部に暮らすメノナイト(文明から隔絶した生活を送るキリスト教の一派。アーミッシュとは異なる)のコミュニティで起こった集団昏睡連続レイプ事件に着想を得た作品で、作者自身もメノナイトの両親に育てられた女性である。

そうしたコミュニティの女性は読み書きを教わることなく生涯を送るという(メノナイトにもさまざまな宗派があり、必ずしもその限りではないが本作ではそうだ)。そんな彼女たちが「何もしない」「残って戦う」「コミュニティを去る」という3つの選択肢をめぐって議論することになる。

「信仰」に基づく、かなりといえば特殊なコミュニティの話にもかかわらず、そこでやりとりされる言葉はパワフルで、性差に基づく権力構造のおぞましさが帰納的に明示される。

かつてコミュニティから破門されたものの「議事録」を作成するため再び呼び戻された男性(若者)に投げかけられる、「もし、あなたが何を言ってもまともに取り合ってもらえなかったら――そしてそれが一生続くとしたら――どう感じると思う?」という問いかけに対して、我々は何と答えたら良いのだろうか?

STORY:2010年、自給自足で生活するキリスト教一派のある村で、女たちが次々レイプされるが、男たちはそれを「悪魔の仕業」「作り話」と否定。やがて女たちは男たちが不在の2日間に、自分たちの未来をかけた話し合いを実施する。

監督・脚本:サラ・ポーリー
出演:ルーニー・マーラ、クレア・フォイ、ジェシー・バックリー、フランシス・マクドーマンドほか
上映時間:105分

TOHOシネマズ シャンテほか全国順次公開中

●高橋ヨシキ(たかはし・よしき)

デザイナー、映画ライター、サタニスト。長編初監督作品『激怒 RAGEAHOLIC』のBlu-ray&DVDが発売中。

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