初日“全損”のDステーションに悲壮感なし「中途半端に壊れるなら新品の方がいい」/ル・マン24時間

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2023年06月08日 21:40  AUTOSPORT web

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Dステーション・レーシングの777号車アストンマーティン・バンテージAMR
 6月7日に行われたル・マン24時間レースのフリープラクティス1でクラッシュし、シャシーに大きなダメージを受けてしまったDステーション・レーシングの777号車アストンマーティン・バンテージAMR。一夜明けた8日朝、ドライバーとチームのマネージングディレクターを兼任する藤井誠暢に、マシン修復に向けた現状などを聞いた。

 Dステーションの777号車は水曜のFP1のセッション中盤、キャスパー・スティーブンソンが森のエス出口のガードレールにクラッシュ。コース上に跳ね返って停止していたところに、後続のタワー・モータースポーツ13号車オレカ07・ギブソンが衝突し、777号車はフロント左サイドを中心に大きなダメージを負っていた。

 スティーブンソンはその後マシンを降りて自力で歩行していたとおり、身体にはまったく問題がないという。

 問題は、「フレームのサイドが完全に曲がってしまった」(藤井)クルマの方だ。ガードレールに衝突した際はほぼボディワークのみの破損で済んでいたようだが、後続車両とのクラッシュが大きなダメージを与えてしまった形だ。

 これにより、チームはシャシー交換を決断。メンテナンスを受け持つTFスポーツのイギリスのファクトリーから、ELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズ用のマシンを一晩でル・マンへと運び、その車両のフレームに、 WEC用のパーツなどを現地で組み込むことにしたのだ。

「イギリスとはいえ、そこまで近くはないですからね。準備して段取りして、さっき届いた感じです。また、使うのはボディ(シャシー)と内装だけです。トランスミッションも昨日まで積んでいたものに載せ替えますし、燃料タンクも規格が違うし、エアロパッケージも全然違うので、いま(8日11時)から作業してもFP3(15時開始)は絶対に無理、FP4(22時開始)も間に合うかギリギリなんですよね。でも彼らは仕事が早いですから」

 8日のFP2を走れなかったことで、ル・マン初出場となるスティーブンソンはFP4のナイトセッションで最低5周を周回しなければならない。チームは木曜一日をかけて、新たな777号車を仕立てる作業にあたっている。

 WECフル参戦3年目を迎えたDステーション・レーシングのル・マンは厳しい船出となってしまったが、意外や藤井はポジティブな姿勢を崩していない。

「こんなことで折れている人が、ル・マンなんてできません。プロ/アマでレースをしていれば、これくらいは想定内ですから、(クラッシュが起きたときから)どういう決断して、どうやって準備をして……ということを考えていました」

 ちなみに事故後、13号車陣営とはとくに話はしていないという。

「日本だと謝りに来た・来てない、みたいな話になりがちですが、海外レースではそんなことは関係ないですし、そもそも保険も入っていますし、何より彼(スティーブンソン)も無事だったので……もうポジティブに考えるなら、『中途半端に壊れるならフレームが新品になる方がいいかな』と(笑)。僕はもう、レースもビジネスもポジティブにしか考えません。ビリからスタートになるので、気負わずいけますしね」

■星野敏「100周年に出られるだけでも光栄」

 個人としては4回目のル・マンを迎えている星野敏もまた、藤井同様に焦った素振りも見せず、ポジティブに構えている。

「藤井選手の主宰しているシミュレーターラボでしっかりと練習してきましたので、走り出しから違和感なく、まずまずのタイムを刻めて、順調に来ていました。でも、そこで思いがけないアクシデントが起きるのがル・マン、という感じですね」

 走行時間は減ってしまうことになったが、「そこはあまり関係ないですね。もう、コースはわかっていますから」と星野は平然と構える。

「この100周年のル・マンに出られるということだけでも本当に光栄ですし、クルマも思いがけず新しいものになりますから、最後尾からになるでしょうけど24時間を走りきれればいいなと思います」

 大きなアクシデントにも関わらず、悲壮感のかけらもないといった雰囲気のDステーション・レーシング。最後尾からの躍動に期待がかかる。

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