カプコン「バイオハザード ヴィレッジ」、開発者が語る「Mac版の作りやすさ」

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2023年06月16日 17:01  マイナビニュース

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ゴーグル型端末「Apple Vision Pro」の話題で持ちきりだったWWDC 23ですが、6月6日にはWWDC恒例の「Apple Design Awards」が発表されました。今年は、Mac版の「バイオハザード ヴィレッジ」(カプコン)が「ビジュアルとグラフィック」部門を受賞。同作は「イノベーション」部門でも最終選考に選ばれるなど、存在感の高さを見せつけました。



Mac版のバイオハザード ヴィレッジは、多くのゲームファンに「Macでもこれほどのクオリティのゲームがプレイできるのか!」と大きなインパクトを与えました。かたや、開発者自身もアップルシリコンのパフォーマンスの高さや開発のしやすさに驚いたといいます。


Macのパフォーマンスの高さや開発のしやすさに驚く



バイオハザード ヴィレッジは、カプコンの看板タイトルの最新作。Windowsやプレイステーション5などのプラットフォームではすでにリリースされていましたが、2022年6月のWWDC 22にてMac版のリリースが衝撃的に発表され、大きな話題を呼びました。M1チップやM2チップを搭載したMac専用タイトルとして、2022年10月にMac App Storeでリリースされました。


プロデューサーを務めるカプコンの神田剛さんは「ビジュアルとグラフィックの部門で受賞でき、作品の売りであるグラフィックスが評価されたことがうれしい。もともと第9世代のコンソール向けに開発したタイトルなので、Mac版でもグラフィックスやプレイ感覚などクオリティを落とさないよう開発したが、満足してもらえたのではないか」と手応えを語りました。


「Mシリーズのパフォーマンスの高さはチャレンジに値すると感じた」と語る神田さん。チャレンジへの手応えは、開発の初期段階からしっかり感じ取っていたそうです。プログラマーの木本雅博さんは「消費電力の少ないモバイル系のチップでここまでパフォーマンスが高いとは想定しておらず、移植してみて意外と速度が出ると感じた」と語ります。



開発を進めていくなかで、随所でアップルシリコン搭載Macのゲーム開発のしやすさを感じたそう。「特に、ユニファイドメモリの存在がゲーム開発では大きい。メモリーが扱いやすくなり、処理もシンプルで済むのがありがたかった」。(木本さん)。



同じくプログラマーの岩崎秀介さんも「グラフィックスに関しても、やはりユニファイドメモリの存在が光った。グラフィックスまわりでは、メモリーの扱いを誤るとすぐにクラッシュしてしまうが、そのあたりの扱いが統一化されていて開発しやすかった。また、さまざまなAPIの使い方がコンソールに近くて移植しやすいとも感じた。各種ツールもそろっており、扱いやすい開発環境が整えられている点を評価したい」と語ります。


iPadへの対応も狙うが、課題も感じている



Macが搭載するM1チップは、iPadでも採用されています。携帯性に優れ、Macにはないタッチ操作にも対応するiPad版のリリースはあるのかを尋ねました。

神田さんは「カプコンはマルチプラットフォーム戦略を打ち出しており、今回のアップルシリコンへの対応もその方針に沿ったもの。iPadユーザーの多さは魅力的だと感じており、積極的に検討を進めていきたい」と語ります。



しかし、技術的な課題も存在すると語ります。木本さんは「Macと同じアップルシリコンを搭載しているとはいえ、APIが異なるので、Macにはない調整が必要となる。また、iPadはタッチ操作には対応するものの、キーボードやマウスが標準では装備されないので、そのあたりの対応も課題になる」と、Macとチップが同じでも開発には異なる点があるとしました。「ただ、iPadはハードウエアの種類が限られるため、コンソールにより近い存在といえる。開発者にとっては扱いやすいハードウエアだと感じる」と語ります。

WWDCの発表では「Game Porting Toolkit」に注目した



今回のWWDCでの発表内容で注目したのが、macOS Sonomaに搭載される「Game Porting Toolkit」。岩崎さんは「MacでWindowsをエミュレーションすることで移植しやすくするゲーム移植キットといえる存在で、どこまで使えるのかとても興味深く感じている。Windowsで展開しているタイトルをアップルのプラットフォームにどんどん移植してください、というアップルの本気を感じた」と語ります。


「アップルがほかのプラットフォームとの互換性の高さを強く示したことは、これまでなかったように思う。ハイエンドのタイトルはさすがに手がかかりそうだが、旧作であればそれほど苦労なく移植できると感じる。最適化に時間が割けるようになるのはありがたい」(岩崎さん)。


今回のWWDCの目玉ともいえる「Apple Vision Pro」にも期待を寄せます。神田さんは「Apple Vision Proは大きなインパクトがあり、デジタルコンテンツの新たな体験の窓口としてとても興味深く感じた。開発者としてはチャレンジしていきたい存在だと感じる」と語ります。


“Macでゲーム”の時代の幕開けは近い



アップルシリコンのパフォーマンスの高さやユニファイドメモリの存在など、もともとゲーム開発がしやすいと評価が高まりつつあったMacに、新たにGame Porting Toolkitと音声や操作の遅延を最小限に抑えるゲームモードが加わることで、「Macもゲームいけるじゃん」という認識が開発者のみなさんの間で広がっていることを感じました。15インチの大画面なのに厚さ1.15cmで手軽に持ち運べるMacBook Airや、ゲーミングPC並みのパフォーマンスを持ちながら圧倒的にコンパクトなMac Studioなど、デバイス側もWindowsにはない個性的なラインナップが続々登場。“Macでゲーム”の時代が、すぐ近くまで迫ってきているのは間違いなさそうです。


©CAPCOM CO., LTD. ALL RIGHTS RESERVED.(磯修)

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