ケシ畑に棲みつき根こそぎ食べ尽くす白鳥「中毒症状で飛べなくなっている」と農家は苦悩(スロバキア)<動画あり>

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2023年06月20日 18:02  Techinsight Japan

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スロバキア南西部コマールノのケシ畑に棲みついてしまった白鳥たち。収穫直前のケシの実を食い尽くし、被害総額は1万ユーロ(約155万円)に上っている(画像は『DW News 2023年6月15日付Twitter「Swans in Slovakia found a poppy field and munched on the opium-producing plants to their hearts’ content for months」』のスクリーンショット)
今年2月以来、スロバキアのあるケシ畑に白鳥の群れが棲みついており、ケシを食い尽くす白鳥たちに農家は頭を抱えている。農家の話では、栽培されているケシは種を除いてすべての部分に毒性があるという。白鳥たちはケシを過剰摂取して中毒症状に陥っており、飛ぶことができず、すでに数十羽が死んでいるそうだ。バルト三国のニュースメディア『Baltics News』などが伝えた。

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スロバキアでは、ケシの実(ポピーシード)がお菓子の材料などに頻繁に使用されるため、ケシの実の生産国として知られている。ケシの実はケシ科の植物の花の種子で、日本では発芽を防ぐため熱処理されたものが七味唐辛子に入れられたり、あんパンの上にトッピングされている。

食用のケシの実をスロバキア南西部コマールノで長年栽培しているバリンツ・パムさん(Balints Pam)の畑では、手間暇かけて育ててきたケシが鮮やかな花を咲かせ、まもなくケシの実の収穫の時期を迎えるところだ。そんな中、白鳥の群れがエサを求めてバリンツさんのケシ畑に舞い降りた。

バリンツさんは「白鳥の数は徐々に増えてきています。約200羽はいますね」と現状を話しており、大量の白鳥たちは食欲を満たすために、バリンツさんの大切なケシを花から根っこまで食べ尽くしているのだ。

通常、渡り鳥である白鳥は春になるとエサを求めて移動し、菜の花などの葉物を好んで食べるそうだ。しかし今年は白鳥がやってきたタイミングで大雨が降り、ケシ畑に大きな水溜まりができた。水辺とエサになる植物という2つの組み合わせは白鳥にとってベストなコンディションであったため、ケシ畑に棲みついてしまったのではないかとバリンツさんは推測している。

大量のケシを食べた白鳥たちは、すぐに新たな場所へ移動するかと思われたが、全く移動するような気配を見せない。バリンツさんは「ケシには種を除いてすべての部分に毒性があり、中毒症状をもたらします。中毒症状が現れた白鳥は呆然とし、飛ぶことができなくなるのです。また疲れや混乱、無気力などの症状も現れ、捕食動物の恰好の的になってしまいます」と説明した。白鳥たちはケシの毒性を知らずに食べ続けているため、過剰摂取によりすでに数十羽が死んでいるそうだ。

2月に白鳥がやってきてからの約4か月間で、5ヘクタール分のケシが被害を受け、被害総額は1万ユーロ(約155万円)になった。大打撃を受けたバリンツさんは、ケシ畑を荒らす白鳥たちをどうにかしたいのだが、スロバキアにおいて白鳥は保護対象であるため、駆除どころか生態を脅かすような手段を取ることすらできなかった。

またスロバキアでは、白鳥などの保護鳥による被害は珍しいケースであり、国や保険会社が補償金を支払うような制度は整っていない。スロバキア国立自然保護局のヤンス・カラフスキスさん(Jans Kalavskis)は「次のシーズンに向けて、生産者たちは保護鳥を追い払う対策を行う許可を得るために申請する必要があります。今いる白鳥たちは、手で追い払うしかないですね」と今回の件についてコメントした。

ちなみに2021年にはイギリスで、何時間も玄関ドアをノックし続け騒音を立てる白鳥に、住民が頭を悩ませているというニュースが注目を集めていた。



画像は『DW News 2023年6月15日付Twitter「Swans in Slovakia found a poppy field and munched on the opium-producing plants to their hearts’ content for months」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 iruy)

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