トヨタに続き、プジョーとBMWもル・マンの水素カテゴリーに関心。ポルシェは「主な焦点ではない」

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2023年07月13日 10:00  AUTOSPORT web

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2022年途中からWEC世界耐久選手権に参戦しているプジョー9X8
 ル・マン24時間レースをオーガナイズするACOフランス西部自動車クラブは近年、水素技術を推進しており、2026年にはひとつのカテゴリーとすることを目指している。

 トヨタは6月のル・マン24時間で『GR H2レーシング・コンセプト』を発表/展示し、このカテゴリーに本格的な動きを見せた最初のマニュファクチャラーとなったが、プジョーとBMWもWEC世界耐久選手権における水素燃料について、関心を示している。

■水素は「理にかなっている」とプジョー

 現在ハイパーカークラスに9X8で参戦しているプジョーのリンダ・ジャクソンCEOは、「我々はとてもオープンだ」と語っている。

「なぜいま、WECなのか? それは我々の電動化戦略の一部だからだ。現時点でそれは、ハイブリッドだ」

「2038年までにカーボン・ネット・ゼロを目指すという我々の目標は、どのような分野であれ、その戦略とリンクしていなければならない。これはステランティス(グループ)の目標だ」

「我々にはすでに、水素燃料電池を使用したプジョー・エキスパートの市販車両がある。したがって、我々はすでにその技術に対して非常にオープンだ。物事は進化していくだろう。どうなるか見てみよう」

「我々はとてもオープンだが、それは電動化戦略やカーボン・ネット・ゼロへの移行というアイデアとリンクしていなければならない」

 ステランティス・モータースポーツディレクターのジャン・マルク・フィノーは、WECの将来の水素カテゴリーへの参戦について、決定はまだ先だが、プジョーにとって 「理にかなっている」と付け加えた。

「面白いかもしれない」と彼は語った。

「いまはハイブリッド技術に集中しなければならない。次のレギュレーションは水素かもしれない。それは理にかなっている」

「だが、次の10年で何がクルマの動力源として最適なのかを知るのは難しい。多くの解決策がある。もちろん、科学的なインプットもあれば、顧客の期待や政治的な提案もあるはずだ」

「だから、今後数年間で、何が最も間違いのない技術になるかを見極めるのは非常に良いことだ。だが、水素でのレースは我々にとって理にかなっているかもしれない」

 プジョー、BMW、アウディ、トヨタは現在、レースプラットフォームとしての水素をテーマにした技術ワーキンググループ会議に参加しているマニュファクチャラーである。

 こうした議論の最近の重要な成果は、電気燃料電池を搭載したものと、トヨタのコンセプトのように水素を燃料とする内燃機関を搭載したものという、2種類の水素動力自動車を認めることである。

 iX5ハイドロジェンで燃料電池技術を開発したBMWは、モータースポーツ部門のボスであるアンドレアス・ルースによれば、「技術的にオープン」であると考えられている。

「BMWにとって水素は、以前から常に大きなトピックだった」とルースは述べている。

「これは、量産車の側において、我々が現在調査しているテーマだ。したがって、レースの側においても確かに我々が検討していることである」

「現時点では、それがどの方向に進むのか、本当に解決策になるのかを見極めるには時期尚早だ。だが、間違いなく我々はそれを調査し、それが我々にどのように関連するかを確認する」

「というのも、BMWにとって最も重要なのは、我々(レース部門)がロードカーとの関連性を持っているということだからだ。その逆もまた然りだ」

「だが、我々がどのような方向に進むことができるかを語るのは時期尚早だ」

 ルースはまた、どの水素技術がこのクラスに最も適しているかを判断するのは時期尚早だと言う。

「確かに、純粋にロードカーとの関連性を考えると、現時点では燃料電池の方が理にかなっている。燃料電池車両がロードカーにあるからだ」

「もし、モータースポーツに適した解決策を考えるとするなら、まだ早すぎる。そこで我々はいま、実現可能性についての調査を開始し、それがどの方向に進むのかを見極めなければならない」

「もちろん、常に何が起こっているのか、どの方向に進むのかを見たいと思うものだ。本当にそうなるのかどうか、常に大きな疑問符がつきまとう」

「それはまた、BMWグループがどの方向に進みたいのかにも左右される」

「明日決まるようなことではない。どちらかというと長期的なもので、ACOのロードマップによれば2030年頃だと思う。まだ少し時間はある」

「だが、開発も“一日にして成らず”なので、ある時期から検討を始めなければならない」

■ポルシェ、アウディ、ランボルギーニの動向は?

 プジョーとBMWが耐久レースでの水素技術導入にオープンであるのに対し、ポルシェは合成eフューエルに重点を置いていると、モータースポーツ担当副社長のトーマス・ローデンバッハは述べている。

 WECでLMDhマシンを走らせているドイツのメーカーは、フォーミュラEにも参戦しており、短距離スポーツカーレース用の電気技術を開発している。

 欧州連合(EU)は2035年にICEエンジン搭載車の新車販売を禁止するが、ドイツ政府はこの動きに反対し、カーボンニュートラルに設計されたeフューエルを使用すれば、ICEは引き続き有効であることを要求している。

 ローデンバッハは「現時点では、水素はブランドとしての戦略の主な焦点ではない」と述べた。

「モータースポーツは常に、ロードカーに関連することに集中すべきだということを忘れてはいけない。我々はeフューエルを推進し、サポートしている。それは基本的に水素であるが、eフューエルに置き換えたものだ」

「だから、我々は検討するつもりだ。まだ、決定してはない。いまのところ、(水素が)主な焦点ではないが、いずれ分かるだろう。まだ少し先の話だ。決してあり得ない、とは言えない」

 一方、同じフォルクスワーゲン・グループのアウディとランボルギーニは、少なくとも短期的には限定的な関心を示している。

 アウディスポーツのカスタマー・レーシングのボスであるクリス・ラインケは、「我々はワーキンググループのミーティングに参加している」と語っている。

「しかし現時点では、これは純粋にリソースの問題であり、このような戦略的ベンチャーに対する我々の能力はLMGT3にフォーカスしているため、(水素については)むしろ少し遠巻きに見守っているところだ」

 また、2024年にLMDh車両をデビューさせるランボルギーニ・モータースポーツの責任者であるジョルジオ・サンナは、次のように語った。

「技術的な面では、あらゆる可能性を調査している。しかし現在のところ、我々は中期的な未来であるハイブリッド化に集中している」

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