どれだけ知ってる? 教習所で教わらないバイクTips 第22回 バイクで熱中症? 真夏のツーリング対策【ライダー編】

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2023年07月25日 16:01  マイナビニュース

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夏の海岸線を爽快に走るオートバイ。こんな小説やドラマのワンシーンにあこがれてライダーになった人も多いはずですが、実際は強い日差しとアスファルトから立ち上る熱気、さらに自分のバイクや周囲のクルマから発する熱風に驚くはずです。



驚くだけならまだしも、暑さで体調不良になって事故を起こしてしまったら大変です。そんなことにならないよう、今回は真夏のライディングにおける対策方法を紹介します。

■現在の夏は昔より過酷!?



バイクに乗り始めてワンシーズンを走れば、ツーリングに最適なシーズンは春と秋で、夏はとても大変だということがわかってきます。これは昔から言われていたことなのですが、その過酷さは年々強まっているようです。



この原因は熱をため込みやすい路面の舗装化や、海や山からの風を遮る高層ビルの増加といった人工的なものが挙げられます。都市部では「ヒートアイランド現象」と言われ、家庭やオフィスでエアコンを利用するため、室外機からの熱風がさらに外気温を上げる原因になっています。



こういった問題は東京や大阪といった大都市だけではありません。周囲を山に囲まれた盆地のような地域でも気温が40度近く上がることもあり、クルマのようにエアコンをつけられないバイクのライダーにとっては非常に過酷なものです。



また、現在主流のバイクは水冷エンジンですが、渋滞時はオーバーヒートを防ぐためラジエターのファンが回り、その熱風がライダーに吹きつけられます。排気量に比例して発生する熱量は増加するため、小排気量からリッターバイクに乗り換えた方はあまりの暑さに辟易するはずです。


■水分は普段よりも多めに補給



猛暑の夏で一番怖いのが「熱中症」です。高温多湿の環境下で身体の水分や塩分のバランスが崩れ、体温が上昇することによって発症する障害で、重度の場合は意識障害にもなります。軽度でも立ちくらみや筋肉の硬直といった症状が出ますが、バランス感覚が重要なバイクでは事故や転倒の原因になりかねません。



熱中症対策は身体を冷やして水分を取ることですが、屋外にいる場合はエアコンがないため、人間の体は汗をかいて気化熱で身体を冷やそうとします。しかし、バイクの場合は走行風で汗がどんどん乾燥してしまうため、知らないうちに水分不足に陥ることもあります。そのため、普段よりも多めの水分補給を心がけた方がよいでしょう。



また、汗とともにミネラルやビタミン、塩分も失われます。スポーツ飲料は糖分が多いので取りすぎに注意すべきですが、ミネラルなら麦茶、塩分の補給は飴などのタブレットがおすすめです。



熱中症は炎天下の屋外だけでなく、梅雨の合間や室内でもおきる症状で、疲れがたまって体力が落ちていたり、疾患がある場合はさらにリスクが高まります。真夏のライディングはとても過酷ですので、身体に異変を感じたら無理はせず、すぐにバイクをとめて休んでください。


■メッシュジャケットなどのウエアで対策



あまりに暑いからといってTシャツや短パンで乗る人もいますが、事故や転倒時はもちろん、ラジエターからの熱風や加熱したフレームで火傷をすることあるためおすすめはできません。紫外線と排気ガスによる肌のダメージも大きいため、女性ライダーは特に注意すべきでしょう。

肌の露出しない長袖・長ズボンの着用はとても暑そうですが、夏のバイク用ウエアとして一般的なのが「メッシュジャケット」です。これは風通しのよいメッシュ生地を使用したものですが、強度や形状などはバイク用にデザインされ、肩や肘、背中などには衝撃吸収用のパッドがついています。ほとんどは取り外し可能のインナーが附属しており、初夏や秋口の季節や、高地などの涼しい場所もカバーできるはずです。



また、最近では冷水を専用ポンプで循環させるベスト型のウエアや、メントール成分を配合した水をインナーウエア内に吹きつける冷感アイテムも登場しています。工事現場やアウトドアではファン付き作業が普及しつつありますが、バイク用以外の製品では走行時にどれだけの効果があるかはわかりません。



メッシュ生地を用いたバイク用品は、グローブやパンツ、ブーツのほか、バイクのシートに被せるアイテムもあります。メッシュではないスリーシーズン用ジャケットでも、多くはベンチレーション用のファスナーやインナーが外せますので、お手持ちのウエアを確認してみてください。


■夏に最適なツーリング・プランを考える



電車やバスの時刻表やルートを気にせず、自由気ままにプランを決められるのがバイクツーリングのよいところですが、賢いライダーは「行きたい場所」だけでなく「いかに快適に行けるか」も考慮します。真夏の場合、一番過酷なのは炎天下の渋滞なので、これにできるだけ遭遇しないプランを考えてみましょう。



真夏の休日はクルマを使ったファミリー層も海や山の観光地に繰り出します。彼らと同じ時間やルートで行動すれば、渋滞にもつきあうことになるでしょう。夏は早朝の4時台には空が明るくなるので、スタートを早朝にすれば、気温の上がらないうちに渋滞の予想される区間を通過することができるはずです。



また、一般的に11時半〜13時頃は昼食休憩で飲食店やパーキングエリアが混雑して道路の交通量が減るため、自分の昼食を前後にずらせば距離を稼げるはずです。全体のスケジュールを前倒しにすれば、早めに帰宅して洗車をしたり、ゆっくり身体を休めて翌日までに疲れを取ることもできるでしょう。



春や秋に丸一日走る耐えられる体力があっても、夏は半日でバテてしまうものです。早朝スタートは近隣の方々が寝静まっているので、大通りまではエンジンをかけず押していく配慮も必要ですが、景色も幻想的なのでおすすめです。ナイトツーリングは視界も悪いうえ、眠気で注意力も低下します。長距離トラックなども飛ばしているため、初心者向きではありません。


■海水浴や温泉は体力を消耗するので要注意



せっかくの夏だから海水浴をして温泉にも立ち寄りたいと考える方もいるはずです。汗まみれになった身体をさっぱりと洗い流せますが、海水浴や温泉は泳がなくてもかなりの体力を消耗します。炎天下の走行で疲労もたまっているため、帰りは身体もフラフラで注意力も散漫になりがちです。



ツーリングには夏らしいイベントを盛り込みたいものですが、真夏の走行は春や秋よりも体力を使います。無理をせずにイベントや走行距離を削るか、現地で宿泊するなど、余裕のあるプランを立てるのがよいでしょう。



また、渋滞や炎天下のイベントで疲れているのはほかのクルマのドライバーも同じなので、自分が気をつけていても相手の不注意で事故に巻き込まれるリスクが高まります。事故は16時〜20時までの時間帯に多いというデータもありますが、これは疲労による気のゆるみや、夕暮れや夜間で視認性が落ちることが原因のようです。



クタクタになった真夏のツーリングも終わりに近づき、走りなれた自宅近くになると、つい早く帰ろうと飛ばしてしまったり、安全確認がおろそかになってしまうものです。無事に帰宅してエンジンを止め、ヘルメットを脱ぐまでは十分に気をつけてください。



津原リョウ 二輪・四輪、IT、家電などの商品企画や広告・デザイン全般に従事するクリエイター。エンジンOHからON/OFFサーキット走行、長距離キャンプツーリングまでバイク遊びは一通り経験し、1950年代のBMWから最新スポーツまで数多く試乗。印象的だったバイクは「MVアグスタ F4」と「Kawasaki KX500」。 この著者の記事一覧はこちら(津原リョウ)

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