「電撃文庫30周年」有名キャラ全てを「黒星紅白」が描き下ろす偉業 かつて手塚治虫も挑戦した、”他者キャラ”を描く難しさ

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2023年07月31日 07:01  リアルサウンド

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黒星紅白のイラストが圧巻の完成度

  2023年は、ライトノベルのレーベル「電撃文庫」が創刊されて30周年という節目だ。これを記念して、全国の書店で電撃文庫のフェアや、埼玉県所沢市の「ところざわサクラタウン」で人気作家のサイン会なども実施される。また、実に10年ぶりとなる大型展示イベント「超電撃文庫展」が9月16日から11月5日まで「EJアニメミュージアム」(ところざわサクラタウン)で開催されることが決定した。


  文庫30周年を記念して様々なイベントが開催されているが、圧巻なのが、電撃文庫から刊行された総勢50名の歴代作品のキャラクターが描かれた記念イラストだ。このイラスト、なんと黒星紅白がすべてのキャラクターを描いているのだ。黒星紅白と言えば、アニメ化もされた『キノの旅』の表紙絵や挿画を描いた人気イラストレーターであり、電撃文庫の歴史を語る上で欠かせない存在である。


  電撃文庫の歴史は、ライトノベルの歴史そのものと言っていい。集合絵を見ると時代を彩ったキャラが多数目に付くのがわかる。パッと見ただけで、作品のタイトルを連想できる人も多いことだろう。記者が気になったのは『とある魔術の禁書目録』『灼眼のシャナ』『とらドラ!』『エロマンガ先生』だが、タイトルを並べるだけで、どの世代なのかが瞬時にわかってしまうのもまた恐ろしいところだ。


 『灼眼のシャナ』は、リアルサウンドブックでインタビューしたいとうのいぢが表紙と挿絵を描いた作品であり、シャナは2000年代のツンデレキャラの代表格としても重要である。このように絵柄も違う他のイラストレーターのキャラを描くのは大変なように思うのだが、その大仕事を成し遂げた黒星紅白は凄すぎるといえるだろう。



40年前、手塚治虫も挑戦していた

  ところで、約40年前、黒星紅白と同じことに挑戦した漫画家がいる。漫画の神様、手塚治虫だ。1982年7月に行われた「マンガ博覧会'82」のポスターには、『ゴルゴ13』から『オバケのQ太郎』『釣りキチ三平』『Dr.スランプ』まで、戦後日本を代表する漫画から当時流行した漫画まで多数のキャラクターが描かれている。このすべてのキャラクターを、手塚治虫が描いているのだ。


  手塚治虫の手になるゴルゴ13(デューク・東郷)、オバQ、アラレちゃんが見られる、極めて貴重なイラストといえるだろう。手塚はかなり忠実に模写をしようと試みているが、それでも若干の丸みを帯びた手塚風のタッチになっているのが楽しい。これを多忙な中で描き切った手塚は凄いというほかないし、よく引き受けたなあ……と驚いてしまう。


  手塚治虫といえば、有望な若手や、実力ある若手を常に研究し、生涯に渡って同じ土俵で戦おうとしていた。「マンガ博覧会'82」の仕事は手塚にとって他の漫画家のタッチやキャラデザを研究する、絶好の機会だったといえるのかもしれない。


  この手塚治虫のイラストと同様に、黒星紅白のイラストも後の時代に当時のライトノベルの盛り上がりを語る上で欠かせない、歴史的な作品になるのではないだろうか。


 


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