不動産のプロが教える!“理想の住まい”の叶え方 第9回 意外と知られていない「リノベでできること・できないこと」

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2023年07月31日 10:01  マイナビニュース

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日本では、まだまだ中古物件よりも新築物件を選ばれる方が多いですが、近年は新築物件の値段が非常に高騰してしまっていて、比較的価格の安い中古戸建や中古マンションを選ぶ方もかなり増えてきました。



やはり、ある程度築年数が経過している物件を買うとなると、内装が傷んでしまっていたり、設備が故障してしまっていることが多く、どうしてもリフォームやリノベーションの工事が必要となってしまいます。


■リノベーションでできること



リノベーションの工事で具体的にどんなことができるのか、あまりイメージがわかない方も多いのではないかと思います。

<設備類の交換>



お風呂やキッチン、トイレ、洗面所などの水回りの設備を新品に交換することはもちろん、壁紙や床のフローリング、和室の畳などを張り替えることも簡単にできてしまいます

<床や壁の一新>



床を一般的な新築マンションなどで使われるようなシートフローリングではなく、本物の木材で作られた「無垢(むく)材」のフローリングに張り替えることもできますし、壁をビニール製のクロスではなく、漆喰や珪藻土などの天然の素材で塗装することもできてしまいます。



無垢材のフローリングは足触りがさらさらとしていてとても気持ちが良く、なんといっても年を経るごとにどんどん味わいが増していくのが魅力的です。



漆喰や珪藻土を塗った壁には調湿効果があり、室内の湿度を調整してくれるので、お部屋の空気が爽やかですし、照明の光が当たったときに、優しく光を拡散してくれるので、お部屋の雰囲気がとても良くなります。

<間取り変更>



キッチンの向きを変えて、オープンで開放的なキッチンを作ることもできますし、玄関を広げて、床にモルタルを敷いて、靴のままあがれる大きな収納スペース(土間)を作ることもできます。



また、リフォーム費用はある程度かかってきてしまいますが、お部屋の壁を撤去して大きなLDKを作ったり、逆に新しく壁を建てて、書斎のようなスペースを新しく作ったりすることもできます。



戸建物件の場合は、建物の構造にもよりますが、階段の位置を変えたり、リビングの天井部分を吹き抜けにしたり、一階にあったLDKスペースを全部二階に移設するといったダイナミックな間取り変更もできる場合があります。

<外壁や屋根の一新 (戸建物件の場合)>



戸建物件の場合は外壁の色を塗り替えたり、屋根を葺き替えたりすることもできますし、少し築年数が古くて、耐震強度に不安のある物件の場合は"耐震補強工事"を行って、耐震強度を上げることもできます。

■リノベーションでできないこと



このように書くと、リノベーションでできないことなんて無いんじゃないの? と思ってしまいますが、もちろんリノベーションには"できないこと"もあります。

<構造に影響のある壁の撤去>



マンションの場合は、背の低い4階建以下の「壁式構造」とよばれる構造のマンションがあり、室内に壊せない(撤去できない)コンクリートの壁が潜んでいる可能性があります。このコンクリートでできた壁は、壊すと建物の強度にも影響してきてしまうリスクがあるので、リノベーションでは原則壊すことができません。



戸建の場合も「ツーバイフォー工法」や「軽量鉄骨造」で作られているような物件の場合、お部屋の中に壊せない壁が隠れている可能性が高くなるので、要注意です。


<戸建の増築>



土地が大きな戸建物件の場合は、増築をしてお部屋を大きくしたいと思われる方も多いですが、「容積率」や「建蔽(けんぺい)率」などのように、土地によって建てられる建物の大きさが、さまざまな法律で制限されています。



制限いっぱいで建てられている物件がほとんどですので、土地のスペースが余っているからといって、簡単に増築ができるとは限りません。



また、増築ができたとしても、増築工事にはかなりの費用がかかったり、雨漏りのリスクが高まってしまうといったリスクもありますので、デメリットも踏まえて、慎重に判断するようにしましょう。

<パイプスペースの位置変更 (マンションの場合)>



マンションにはお部屋の中に、上の階から下の階まで、まっすぐにパイプが通っている「パイプスペース(PS)」という場所があり、このパイプスペースの場所はリノベーションで変えることができません。



物件の間取り図には必ず「PS」と書かれていたり「×」と記載されている小さなスペースがありますが、それがパイプスペースです。



キッチンやお風呂、トイレなどの水回りの設備から出た排水が、このパイプスペースを通って下水に流れていきますので、水回りの設備はこのパイプスペースの近くになければならず、キッチンやお風呂などの位置を大幅に動かすといったことも、なかなか難しかったりします。



パイプスペースから離れすぎると、水が流れなくなってしまうからです。



一方で、木造の戸建物件などでは、水回り設備の場所を一階から二階へ移すなどと、大きく場所を変えられる可能性があります。

<共用部のリノベ (マンションの場合)>



マンションの場合、窓のサッシや玄関扉は「共用部」に当たりますので、勝手に交換することができません。



不具合があるなど、どうしても交換が必要な場合は、マンションの管理組合の許可を得て、交換することになります。



例えば窓の内側にインナーサッシを設置して、断熱性能や遮音性能を高めたり、玄関扉のお部屋の内側の面にシートを貼ったり塗装をして、色味やデザインを変えることはできます。

<ウッドデッキの施工 (マンションの場合)>



お庭やバルコニーにウッドデッキを作りたいという方は多いです。

戸建であれば、お庭のスペースなどに自由にウッドデッキを作ることはできますが、マンションの場合は、バルコニーなどにウッドデッキを作ることは管理規約で禁止されていることがほとんどです。



というのも、マンションで火災などが発生した時には、バルコニーが避難経路になるため、避難を妨げる構造物を作ることができないのです。また、12〜3年ごとに実施する大規模修繕工事の時にも工事の妨げになってしまうので、ウッドデッキの設置が禁止されているのです。



ホームセンターなどに売っているバルコニー用の木目調のタイルやパネルなどのようなものであれば、すぐに撤去することができますし、避難経路を妨げることは無いので、設置できることがほとんどです。

■まとめ



具体的にリノベーションでどんなことができて、どんなことができないのか、お分かりいただけたかと思います。



中古物件を購入される場合は、どの部分をどのようにリノベーションしたいか、「絶対に実施したいこと」と「できれば実施したいこと」など優先順位別に箇条書きなどでリストアップしたうえで、リフォーム会社さんとお打ち合わせに臨むとスムーズです。



足立 淳 あだちじゅん 東京・恵比寿にある小さな不動産会社「サムタイムズ」代表。日々、お客様の上質な中古物件探しと信頼できるリフォーム会社の紹介を行っている。これまでに延べ1,000組以上のお客様の住まい探しをサポート。自身でも築35年のヴィンテージマンションをリノベし、家族4人で暮らしている。北欧ヴィンテージ家具と観葉植物をこよなく愛する。 この著者の記事一覧はこちら(足立 淳)

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