ランドクルーザー250公開でトヨタ副社長が質問攻めに! なぜプラドじゃない?

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2023年08月03日 08:51  マイナビニュース

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トヨタ自動車が新型「ランドクルーザー“250”」を世界初公開し、「ランドクルーザー“70”」の日本再上陸を発表した。250および70のお披露目の場は詰めかけた報道陣でごった返し、会場にいた中嶋裕樹トヨタ副社長の囲み取材は質問の途切れる暇もないほどだった。その模様をお伝えする。


ランドクルーザー(ランクル)は「トヨタBJ型」として1951年8月に誕生したロングセラーモデル。新型250は「原点回帰」を掲げ、「人々の生活、地域社会を支える」質実剛健なクルマとして登場した。「ランドクルーザー プラド」の実質的な後継モデルではあるものの、都市型(シティユース)の色合いが強かったプラドに比べると、250は角ばっていていかにもオフローダーっぽい雰囲気。先に登場した「ランドクルーザー“300”」はラグジュアリーSUV、今回の250は「ランクルのコア、ど真ん中」という位置づけになる。



以下、中嶋副社長の囲み取材から興味深かったやり取りをご紹介したい。


○なぜ新型プラドじゃない?



――250は実質的にプラドの後継モデルだと思うんですが……。



中嶋副社長:なんですか? プラド? 聞いたことないな〜(笑)。



(筆者注:何度か囲み取材や質疑応答に参加したが、中嶋副社長は関西弁で冗談も交えながら話をするタイプの方のようだ)



――プラドというサブネームをやめた理由は?



中嶋副社長:やっぱりランクルの原点回帰といいますか……。300は大きなSUVとしてしっかり王道を歩み、高級SUVとして理解してもらっています。プラドは本来、質実剛健で、ランクルのコアという位置づけだったのですが、だんだん上級に移行してきて、「300の少し小さい版」になってしまっていました。



「原点回帰」の意味は人々の生活、命を守るクルマというランクル本来の使命を、しっかりと一般のお客様にお届けするということです。ランクルの原点回帰なので、(名前は)プラドではなく250にしました。300はラグジュアリーなSUV、250はど真ん中のランクルです。



70は昔からワークホース、はたらくクルマとしてしっかりやってきました。デザインを変えたかったわけではないのですが、(日本に導入するには)法規適合があるので少し形を変えて、ミニマムな変更でワークホースを再現しました。


○ランクル初のハイブリッドは米中のみで販売?



――ランクル初のハイブリッド車(HV)を設定した背景は?



中嶋副社長:フレーム構造のクルマは一般的に、モノコックのクルマに比べて重量が重たいんです。フレームが付いているだけで200キロくらい重くなるとよくいわれます。カーボンニュートラルを議論するとき、重量が重いと、同じエンジンを積んでも燃費が悪くなる。少しでも社会、カーボンニュートラルに貢献するという意味で、ハイブリッドを設定しました。厳しい環境でも使える耐久性を上げたハイブリッドで、環境性能と悪路走破性を両立しています。



――米国では「ハマー」が電気自動車(バッテリーEV=BEV)になったりしていますが、ランクルについては?



中嶋副社長:BEVは選択肢のひとつになりうると思います。250では原点回帰したからこそ、ランクルの立ち位置を明確化できました。原点を見失わず、ヘビーデューティーのBEVはどうあるべきかを考えたい。ランクルの群戦略として幅を広げていく、そのスタート位置に立ったと認識しています。



――プラドはシティユースを意識したクルマという印象でしたが、今回の250は? アウトドアブームなども意識されたのでしょうか?



中嶋副社長:当然、そういう思いもありますが、それはどちらかというとマーケティングの話で、モノづくりとしては、ランクルの原点を見失いたくないという気持ちです。ランドクルーザーは“40”が原点となり、ステーションワゴンができたり、70ができたり、プラドができたりしましたが、今回は40をもう一度よく調べて、開発当時の思いに立ち返りました。やはり、目指すべきは質実剛健、人々の生活をサポートするクルマです。


――電動パワーステアリング採用の狙いは?



中嶋副社長:いや、楽でしょ(笑)。私が担当した「ハイラックス」でも苦しんでいたことなのですが、このご時世、油圧でしか堅牢性が担保できないというのは……。お客様の観点でいうと、毎日オフロードに行く人は、まあ少しはいらっしゃいますが(ほとんどいない)。日本国内、あるいは先進国ではランクルの信頼感、砂漠に行っても生きて帰ってこれるという信頼感で、オンロードを楽しんでいるお客様がたくさんいらっしゃいます。そういう方に「これは油圧でしか動きません」というのは苦しいので、電動化して、一般のSUVから乗り換えた人でもオンロードでしっかりと楽しめるようにしました。

――ランクルはカーボンニュートラルとは対極にあるようなクルマだと思うのですが。



中嶋副社長:先日、ランクルベースの「LX」で作った水素エンジン車を公開しました。フレーム車は重いというネガな要素がありますが、フレームがしっかりと付いていることで水素タンクが設置しやすかったり、フレームとラダーの間に電池を置くことで守りやすかったりと、プラスの面もあります。重たいというビハインドを新しいテクノロジーで置き換えて、カーボンニュートラルに資していきたいです。ランクル、フレーム構造の世界では、そういう風に考えています。ですから、水素エンジンもFCEV(燃料電池自動車)もBEVもありえます。フレーム構造は将来にわたって残していきたいんです。



――ランクルはトヨタ車の中で最も利益率の高いクルマだと聞いていますが……。



中嶋副社長:販売価格は結局、お客様が決めるんです。我々は原価低減を一生懸命やります。



例えば、ある地域では販売価格を高く設定しても、喜んで高く買っていただけます。原価低減をすれば、その差(販売価格と原価の)が「利ざや」として入ってくるわけですが、これは地域で異なります。ランクルでも収益が苦しいところはたくさんあるんです。300でもベースの(安い方のグレードの)は、なかなか収益的に苦しかったりします。



一般的にいえば300のようなクルマは、クラウンのようなクルマもそうですが、収益率が高くなります。一方で、より小さなクルマは低くなります。だけど利益というのは新車だけの話ではなく、サービスの収益、用品の収益もあって、バリューチェーンは広いんです。



大事なことなんですが、トヨタでは、原価があって、利益を積んで、販売価格を決めるのではありません。販売価格はお客様が決めるんです。一生懸命に原価を下げて、残ったぶんが我々の利益です。



――HVを北米と中国にだけ投入する狙いは?



中嶋副社長:どういう狙いというよりも、順番に出していきますよ。



――日本にも?



中嶋副社長:もうあるんですから、モノは。だから、マーケティングの仕方だけです。ランクルのハイブリッド車に、燃費を意識しながら乗るお客様がどれだけいるのか。今回は、かなり幅広くパワートレインを用意していますので、市場ごとに、お客さまと対話しながら決めていきます。実質的には、全てのパワートレインをどの国にでも導入できるようにしてあります。



――70を日本に導入する背景は?



中嶋副社長:ぜひとも復活してほしいというお客様からの声がたくさん届いていました。実質的には、法規への適合がさまざまあって「ディスコンティニュー」したのですが、今回は全ての法規を満足させて、エンジンの冷却性能も確保した上で出します。基本は変えていません。


――70のカーボンニュートラルへの対応は?



中嶋副社長:未来を語るには電動化というソリューションが必要だと理解しています。ハイラックスにもBEVがありますし、LXの水素エンジン車にもトライしています。このクルマが必要な地域、環境は必ずあるので、それと地球環境をどう両立させるかは我々の課題です。



一番簡単なのは、(こういうクルマを作るのを)やめちゃえばいいんです。そういう手があります。でも、やめたくないんです。皆さんから「復活して」ですとか、たくさんの声を頂いているからです。グローバルでもご愛顧いただいているクルマです。



――ランクル(300)は人気でなかなか手に入らないクルマになっていますが、250はどうですか?



中嶋副社長:需要の読み違えがあったりしたのも正直なところですが、今は需給のバランスをしっかりとるということで、例えばグレードを絞るなど、お客様の動向に合わせながら、極力お待ちいただく時間を少なくしたいと思っています。オーダーを頂いたら、どういうオーダーかをしっかり見極めて、それをダイレクトに生産につなぐという取り組みを国内営業もやっています。ご迷惑をおかけしているのは十分に承知しています。納期を縮めることが我々のタスクだと思っています。



――300は受注停止状態ですが、再開のめどは?



中嶋副社長:まだ明確にはいえないのですが、生産ボリュームを増やす取り組みは間違いなくやっています。



――ハイブリッド車には2.4Lターボエンジンを組み合わせています。理由は?



中嶋副社長:最適な排気量と燃費/CO2を考えると、大排気量が厳しくなっているのは事実です。大排気量の良さは、しっかりとトルクが出ることや走りの良さです。今回は従来の排気量神話ではなく、実際に走る際の「ひと転がりのトルク感」、そういうところを、モーターをうまく活用することで、オフロード車であってもハイブリッドの良さが出るようにしました。2.4Lターボとモーターパワーをうまく掛け合わせると、もっと排気量の大きいトラックと同じような感覚で運転できます。それで燃費もよくなるんです。



――ランクルの群戦略を進めるとのことですが、今後は?



中嶋副社長:300もLXもそうなのですが、「オフロードに行くクルマ」だと思われがちなんですね。ですが実際は、お客様の7〜9割くらいはオンロードで乗っているというイメージです。だから、300もLXもラグジュアリーSUVなんです。それでも、なぜわざわざランクルを買うのかといえば、砂漠に行っても壊れず、生きて帰ってこれる信頼感、それが、自分でオンロードを走るときや、家族を乗せる際の信頼感となり、買っていただけているのではないかと想像しています。



ランクルは、いつまでも原点を見失わず、ラグジュアリーもあれば原点回帰のクルマもあって、用品を変えれば自己主張もできるというようなクルマにしたい。250は原点回帰ですがオンロードでの使用も想定し、オンロードとオフロードで乗り心地を変えられるような新しいシステムを入れたりもしています。オン/オフ両立で使っていただけるクルマですが、原点回帰というメッセージにしっかりと共感していただけるお客様にご購入いただけるのではと思っています。(藤田真吾)

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