中村倫也、“年上のおじさん”たちとのわちゃわちゃ現場に「やっぱり好き」【連載PERSON】

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2023年08月03日 10:11  TVerプラス

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人生に影響を与えたテレビ番組を軸に、出演作品の話題からその人のパーソナルな部分にも迫るインタビュー連載「PERSON〜人生を変えたテレビ番組」。今回は池井戸潤さんの同名小説を映像化する木曜ドラマ『ハヤブサ消防団』(テレビ朝日系、毎週木曜21:00〜)に主演する中村倫也さんが登場します。

中村さんは本作で、池井戸さんが自身を投影した主人公のミステリ作家・三馬太郎を演じます。物語はスランプ気味の太郎が亡き父の故郷“ハヤブサ地区”に移住したことから始まります。地元の消防団に加入した太郎ですが、それを機に、連続放火騒動や住民の不審死などの怪事件に次々遭遇し、真相を追ううちに、集落の奥底にうごめく巨大な陰謀に突き当たっていきます。

中村さんは高校1年生のときに所属事務所からスカウトを受け、所属事務所の養成所にて演技を学びます。2005年に俳優デビュー。同年に第17回フジテレビヤングシナリオ大賞『アンプラグド(unplugged)』でドラマ初主演を飾ると、その後も2018年のNHK連続テレビ小説『半分、青い。』の朝井正人役など、様々な作品に出演して、現在の人気俳優の地位を掴みました。

そんな中村さんに、『ハヤブサ消防団』の見どころを尋ねつつ、中村さんが過去に影響を受けたテレビ番組についても話を聞きました。

13年ぶり共演の川口春奈は「信頼できる人」

――今回のドラマのオファーをもらった時の心境を教えてください。

過去に池井戸さん原作の『下町ロケット』に出演していましたし、今回の『ハヤブサ消防団』のプロデューサーが、『ホリデイラブ』の現場でお世話になった飯田サヤカさんと木曽貴美子さんということも聞きました。『ホリデイラブ』はとても楽しかったので、現場で一緒だった方が声をかけてくださるということは、愉快なものになるのではないかと思いました。知り合いが声をかけてくださったという動機は35歳を過ぎてから仕事を選ぶ上でとても重要な要素になっていると思います。

――脚本を読んで、今回の役についてどんな感想を持ちましたか?

三馬太郎は、役柄的には無味無臭、でも、時たま、すごく動き出す、そんなイメージを持ちました。脚本を読んでの印象としては情報量がとても多いなと。小説家としての柱と、ハヤブサ地区という場所で、消防団に入って、そこで接する人やコミュニティのこと、さらにその先にある連続放火についての謎を追うこと、川口春奈さん演じる立木彩のこと……。4つくらい作品の柱があって、それがだんだん集約していくんだろうなと想像しました。

そこに僕は出ずっぱりで、シーンが変わるたびに違う場所にいるんですが、その情報量の乗りこなし方が大切になるなと思いました。自分のリアクションや声色、そういうもので見ている人が混乱しないように演じられるかということが、やりがいにもなるし、大変な点にもなるなと感じました。

――撮影現場の雰囲気を教えてください。

最近は、どこへ行っても共演者やスタッフの半分くらいが年下になっているんです。だからこんなにも年上の方々の中に入るというのは20代前半の頃以来ではないかなと思いました(笑)。20代の頃は演劇の現場が多かったのですが、今回の先輩たちも、演劇の人ばかり。僕と水が合うというか、同じ畑で育っている感じがするというか……(笑)。

自分も今は、年下の子をフォローしたり、気を回したりするようなことがだんだんできてきた年頃かなと思うんです。自分が若い頃に先輩にしていただいてありがたかったことがあるんですが、それを自分が年下にできるようになってきているんです。でも、今回撮影をしていて、「やっぱり、おじさんが好き」とすごく感じました(笑)。

――その“年上のおじさんたち”とはどんな話をされるんですか?

いやもう、それは、小学生みたいな話です。童心でもなければ演劇をやらないのではないかと思います……(笑)。この間も「おじさんたちといると、生き生きしていますね」と言われました。

――具体的にどのキャストさんがそうだったんでしょう。

生瀬(勝久)さんが基本的にずっと喋っていて、なんの脈略がなくてもちょっかいをかけあったりして……。それを体育会系の(橋本)じゅんさんが、「いや、先輩、それは……」と笑いながらツッコんでくるんです。そして、たまに岡部(たかし)さんが巻き込まれて、(満島)真之介がいじられて……。(梶原)善さんが5分に一回くらい、「まあ、まあ」と言ってきて、僕は生瀬さんと一緒に悪ノリしているという……(笑)。すごく楽しい現場です。

――川口春奈さんとは13年ぶりの共演になります。

当時は彼女が15、6歳で高校1年生だったんです。学園ドラマで、僕もまだ21、2歳くらいで、そんな僕が15歳でメインをはっている女優さんに話しかけることはそんなにないんです……何を話しかけていいのかわからないですし(笑)。だから当時は全然話をしていなかったんですが、その後、他のスタジオですれ違うと、「お久しぶりです」と言ってもらえたりして……。

当時は全然話をしなかったですし、どんな方かも分からなかった……といったことを、今回の現場で川口さんに話したら、「(当時)連ドラがほとんど初めてみたいな状況だったので、私はすごく周りを見ていて、みんなのことをめちゃくちゃ覚えています」と言うんです。

そういう風に端役であっても覚えていてくださるのは、僕にとってはとても嬉しい存在なんです。ずっと脇(役)にいた人間からすると、そういう方ってすごく人として信頼できます。今回大人になった2人で、ちょっとずつ気楽に楽しくやれたらいいかなと思いました。

――作品の見どころを教えてください。

見どころは福田転球さんですね。居酒屋「サンカク」の店主をしてらっしゃるんですが、僕が22歳くらいの時に、一緒に旅公演に行った役者としての先輩でもあるんです。チャーミングで素敵で大好きで……。転球さんをブレイクさせるというのが、今回の僕らの裏テーマです(笑)。

あと、今回は最終話を知らずにやっているんです。目線はみなさんと同じだと思います。謎がきっと最後は繋がっていくと思うので、そこを楽しみに見ていただきたいです。1話の後半のあたりから物語が離陸して転がりだしていく。まさに転球です(笑)。二重の意味で転球を楽しんでほしいです。

――『ハヤブサ消防団』は民放公式テレビ配信サービス「TVer」のお気に入り登録者数がすでに15万人を突破(※取材時点。現在では83万人超)しています。

すごいですね。嬉しいですよ。テレビといえど、能動的に見てもらったほうが絶対楽しめる作品だと思うんです。ただ単純にチャンネルが合ったからというので見てもらえるのもありがたいですが、それよりも2倍、3倍、お気に入りしてくださった方たちは楽しんでもらえるんだろうなと思います。そういう人により深く想像力を働かして見ていただけるよう、いい作品を作りたいなと思います。

――綺麗な場所がたくさん出てくるドラマでもありますが、中村さんが今行ってみたい場所はありますか?

ずっと行きたいのはイスラエルです。宗教的、歴史的な場所が好きで行ってみたいんです。日本だと神社仏閣、海外だと教会のような場所に1人で行くこともあります。そういうみんなの思いが蓄積している場所が好きなんです。僕は、信仰心はないですが、特別なエリアだと思いますし、そういう場所は建築も細かな装飾が行き届いているので、時代が見えるというか。なかなか簡単に行ける場所ばかりではないですが行ってみたいですね。

中学時代に影響を受けたのは『ハヤブサ消防団』共演者のあのドラマ

――ここからは、中村さんとテレビとの関わりについてお聞きしたいです。中村さんにとって、影響を与えてくれたテレビ番組はありますか?

小さい頃に、能動的に見たドラマが、玉置浩二さんが出ていた『コーチ』というドラマです。サバカレーを作っている人たちが草野球をやっている話だったんですが、小学校の時は21時に寝ていたので、21時からの連ドラは見ていなかったんです。なので、母親と一緒に、録画した作品を翌日見ていたんですが、『コーチ』が最後まで見た初めての連ドラだと思います。

その次は『ビーチボーイズ』や、堂本剛さんが出演されていた『Summer Snow』とか……。それと中学の時にサッカーをやっていたんですが、21時に練習が終わって家に帰ってくると22時。そこからお風呂に入って、いろいろしているうちに眠くなるんですが、そんな中23時台に起きて見ていたのは『トリック』です。最初のシーズンが中2くらいだったと思います。生瀬さんも出ていましたね(笑)。

これらのドラマは特別な作品として覚えています。大人になってからも見返せるものは見返しましたし。あと、母は映画が結構好きだったんです。だから小学校5、6年生の時に『セブン』や『ショーシャンクの空に』を見ていました。小学生が見るにしては大人な映画を見ていたと思うので、そこで社会を見る目線みたいなものは育てられたかなというのはあります。

――今だとどういうものを見るんですか?

僕、ドラマも映画も一切見ないんです。仕事で見ないといけないものは見るんですが、25歳くらいから見なくなりました。

――能動的に見るというのが重要だったということですか?

そうですね。あと、友達が出ていると、1話だけは見てみようと思って見ています。ただ、カット割りを見ていると先の展開が読めることもあったり、いろいろなことが重なったりして、純粋な視聴者にはなれなくなったのかなと思います。

――逆にいうとバラエティなどを見る機会の方が多いのでしょうか。

そうですね。あと、みんなそうだと思いますが、だんだんドキュメンタリーを見るようになってきています。行き着く先はドキュメンタリーなんだろうなと自分でも思います。本物には叶わないので。

「SLAM DUNK」を描いた井上雄彦さんが、「この物語より実際の方がもっとドラマがある」と仰っていたんです。そういうことなんでしょうね。僕らはフィクションを作る職業なので、フィクションはフィクションなりにどこまで説得力を持たせられるかが仕事だと思っています。

――役者としての信念や座右の銘はありますか?

座右の銘は「早く帰って飯食って寝る」です(笑)。「みんな笑顔」とか。役者としてのモットーは「見てくれる人に楽しいものを作る。だけど、自分の信念からはズレない」です。その信念が何かを、今ここで言語化すると時間がかかるのでやめますけど、そういうことを大切にして俳優業をやっています。自分が芝居をする上で、その台詞をきちんと理解して、納得してやることが何より大切なことだと思うんです。

取材・文:名鹿祥史
写真:松本理加
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