ホンダの新型「N-BOX」、車内はどう変わった? デザイナーに聞く

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2023年08月07日 11:31  マイナビニュース

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フルモデルチェンジしたホンダの軽スーパーハイトワゴン「N-BOX」。キープコンセプトのエクステリア対して、インテリアは大きく変わった。内装デザインを担当した藤原名美デザイナーと飯泉麻衣パッケージデザイナーに話を聞きながら変更点を確認してきた。


○売れ筋モデルの改良は難しい?



新型N-BOXのインテリアはどんな考え方で開発を進めたのか。藤原デザイナーはこう話す。



「今回の新型は『パッケージは崩したくない』というのを最初に掲げて意思を固めつつ、ホンダらしく“ワイガヤ”的なやりかたで開発を進めました。内装については、日常的に違和感なく安心して使えることに重きを置きました。なので、力を入れたのはやっぱりストレスのない視界ですね。直線基調の骨格にすることで『あれっ、私、運転が上手くなったかな』と自然に思えるようなデザインを目指しました」(以下、カッコ内は藤原さん)


確かに、先代N-BOXはアウトホイールメーターで凹凸が多いデザインだったのに対し、新型はインホイールメーターにすることですっきりとした水平基調のダッシュボードになっている。ステアリングも2本スポークの軽快ですっきりしたデザインに変更した。


「開発当初は2代目(先代N-BOX)をとことん乗りつぶして、『ここはいい、でもここはもっと良くなる』というポイントを絞り込んだんです。今回のこだわりはメーターです。ここ(インホイール)に下ろして、TFTの大きくて新しいメーターに変えることで、自車がどういった状態かをユーザーに明快に伝えてあげる、というところを大切にしました。グラフィックは初心者から高齢の方までいろんな人と意見を交わしながら、見やすさや、やさしさ、ゾーニングにこだわって作りました」



インホイールの7インチTFTメーターは、ホンダセンシングの表示内容がゾーニングされていて見やすい。カレンダー表示にしておけば、スタート時に「出かけたくなるような場所」の写真がアトランダムで表示されたり、誕生日を祝う演出がなされたりする。ちょっとほっこりする遊び心だ。


「2代目のアシスタント席には、なんでもポンポンと入れられるバケツのような大きなトレーがあって使いやすかったのですが、最近の家などを見ていると、収納は隠す方向になっていて、どんな時に来客があっても整っているという空間が主流になっています。今回の大容量グローブボックスは、そんなイメージで配置しました。すっきりしている方が、毎日気持ちいいですよね」



グローブボックスの大きさは先代の2倍。ティッシュボックスのほかに大きな除菌シートなども入れられる。フタには隙間があって、スマホをグローブボックスに入れたとき、外側のUSBポートにつなぐケーブルを通すことができる。


「2代目はシフトの横に引き出し式のカップホルダーがあったんですが、それが助手席の人の膝に当たってしまうことがあったので、ダッシュ左右の元の位置に戻しました。今回のインパネのテーマは『出窓』なんです。出窓のような場所としてのトレーがあって、そこにいいものを飾ったり、i-Padとコーヒーでくつろぐといったようなシーンをイメージしています。お母さんがちょっと気を休められるような場所にしてあげたいな、というこだわりです。ダッシュのシボ材も住宅の建材のような表面になっていて、自然にお家の中にいるような感覚になれます」



助手席の前には、人に優しい「カドマル」処理を施したトレーを配置している。ノーマルバージョンはコルクのように見える樹脂製。自宅の棚のようなイメージだ。



「全体としては走るものなので、運転にできるだけ集中させてあげたい、余計な情報を与えたくない、すぐになじむ、というところにこだわりました」

運転席と反対側の側面を確認するため、助手席側Aピラーにサイドビューサポートミラーが付いているのは先代と同じだが、今回は配置を変更し、さらに視認しやすくした。


「後席では、肩周りをできるだけ削ってスペースを広げ、その下側にティッシュボックスやカップ(右側席)を置ける場所を作りました。子供さんが後席に座る場合は『ニンテンドースイッチ』も入るんです。オプションでUSBも付けられます。このスペースは、ハーネスの位置を設計さんと切磋琢磨して調整して生み出したものです。実現できたときは『まだ空間があったね』とみんなで話しました」


「N-BOXは乗用車に匹敵するくらい売れている軽自動車なので、家族で使う方も多いんです。そういう意味で、こだわったのは出口側の取っ手です。ここは乗り降りの際、自然にユーザーさんの手がいく位置なんです。例えばうちの子は、ここに手をついて登ります。ちょうど3〜4歳だと、自分で登りたがるんですね。お母さんが乗せようとすると『自分でやる!』となるので。その動作を見て、『それなら、そこをちょっと凹ませてあげようか』と。くぼみの深さは上下で変えていて、下の方は子供に合わせて浅くしています。実際に、この部分だけの深さ違いのピースを作って、家で子供たち(10歳と4歳)につかんでもらったりもしました。時期としては開発の中期ごろでした」



確かに、乗降用グリップの幅にまでこだわっているクルマは他になさそう。新型N-BOXには、子育て世代の意見がふんだんに取り入れられているようだ。


「N-BOXは2代目で完成しているともいえるので、開発チームには『だからこそ、おもろいことをやろうよ』という勢いがありました。今回は『社内のママさん、パパさん集合!』と声をかけて集まってもらって、しこたまやりました。『またやってるよ』みたいなこともいわれましたけど(笑)」

○自転車が積みやすい! 雨の日のお迎えに配慮



パッケージデザイナーの飯泉さんには、荷室への自転車の積み込みを実演してもらいながら話を聞いた。


「自転車の積載については、社員を実験台にして、タッグを組んで設計と戦うといった感じでひたすらやりました。センサーの位置によって開口部の高さが上がりそうになったときは『絶対に上げないで!』といったり(笑)。チームは和気あいあいなので激しいやり取りにはならないのですが、実際に他のクルマと比べてN-BOXの開口部の低さ(低い方が自転車を積み込みやすい)を感じてもらったり、社内の自転車を借りて積んでみて、『低いのは正義』ということを設計さんに納得してもらったり。そんな仕事をコツコツとやっていましたね」(ここからカッコ内は飯泉さん)



飯泉さんには、自らの手で27インチのママチャリを新型N-BOXに積んでみてもらった。塾帰りの子供が突然の雨で帰宅できなくなったとき、翌日のことを考えて、迎えに行った際に自転車も積んで帰るという使い方を想定した実演だ。



自転車を積んでみると、アップハンドルでも天井に当たらない。これまで通りの低い床面にはタイヤが通る窪みがあるので、自然と正しい位置で積むことができる。横に切った前輪が前後シートの隙間に収まり、スタンドを立てる床面が平らになっているので、先代以上に自転車が安定するのだ。


「高さについては、変わりそうなところを守ったというのが実情です。安全面ではセンサーや衝突などいろいろあって環境は変わりますが、その中で変えてはいけないところを問われ続けた、というのが今回です。そんな中でも先代同様、自転車を積みやすいクルマを出せました」



新型の衝突性能は普通車並みに上がっている。例えば電柱にサイドシルをぶつけるようなロール衝突のモードでは、これまでの26km/hから普通車と同レベルの32km/hに対応させている。



キープコンセプトのエクステリアに比べて、新たなアイデアが満載で見どころの多い新型N-BOXのインテリア。「もし2台目のクルマとして購入したとしても、自然にファーストカーになりかわってしまうほど“こわいクルマ”に仕上がっているんです」と開発陣は自信たっぷりだった。


原アキラ はらあきら 1983年、某通信社写真部に入社。カメラマン、デスクを経験後、デジタル部門で自動車を担当。週1本、年間50本の試乗記を約5年間執筆。現在フリーで各メディアに記事を発表中。試乗会、発表会に関わらず、自ら写真を撮影することを信条とする。 この著者の記事一覧はこちら(原アキラ)

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