「興味なくなったわ」『THE FIRST TAKE』が炎上し音楽論が加熱、委ねられているユーザーの感受

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2023年08月18日 20:00  週刊女性PRIME

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『THEFIRSTTAKE』(公式Twitterより)

『THE FIRST TAKE』が炎上している。

『THE FIRST TAKE』炎上も、楽しみ方は人それぞれ

 ことの発端は4人組ロックバンド「KEYTALK」の首藤義勝氏の発言だ。8月13日、首藤氏はInstagramのストーリーズで、

「某“一発どり系”YouTube 初めて聴いたけどピッチ修正ゴリゴリやってるね 個人的には大賛成です。補正はお化粧みたいなもんなので」

 と発信。ストーリーズの投稿画像をTwitter(現「X」)にも載せ、続けて、

《ハリボテのエンタメで若い才能を騙す行為はクソだ。歌の力に優劣なんて関係ない。みんなこんなモン気にすんな。輝いたモン勝ちだ。一緒に明日を過ごそう》

 と投稿した。

 この発言がネットニュースに取り上げられると、コメント欄では、

《事実なんだし、発言自体はアリかと。完全一発って信じている若い人はたくさんいるのは事実なわけで…》

《初期の頃は面白かったよね。本当に上手い人が出演して実力を見せつけてる感じで。圧倒されたことがある。最近は色々なアーティストが出過ぎちゃって、なんか音いじってないか?と感じてから急激に冷めてしまった。ファーストテイクというタイトルは語弊を生むよなぁとは思う》

《最初の頃しか見てないけど、本当にずっと一発録りしてるのかと思ってた。確かに何も手を加えないありのままを撮ってるから面白いし動画の意味があると思うけどそこは重要視してなかったのね。益々興味なくなったわ》

 と炎上。首藤氏はその後、「嫌な思いをさせた方ごめんなさい」と詫びるに至ったが、今回の騒動を機に『THE FIRST TAKE』への見方が変わった人も多いだろう。そんな『THE FIRST TAKE』について広告代理店の男性はこう話す。

「『THE FIRST TAKE』は国内外の広告賞をいくつか受賞しています。少なくとも広告という概念では、多くの視聴者にコンテンツをクリックさせるきっかけを作り出したということでしょう。それは再生回数やチャンネル登録者数の急増からもわかります」

 実際に、再生回数の多いものピックアップしてみると、

・DISH//(北村匠海)『猫』2億回再生
・YOASOBI 『夜に駆ける』1.3億回再生
・LiSA『紅蓮華』1.3億回再生
・優里『ドライフラワー』1.1億回再生

 そして、チャンネル登録者数は836万人だ。(※再生回数、チャンネル登録者数は8月18日現在のもの)

 続けて、エンタメ誌の編集者は「『THE FIRST TAKE』は音楽シーンにおいて大きな功績をもたらしてもいる」と話す。

「『THE FIRST TAKE』で1億再生以上の楽曲は、いずれもヒットソングばかりで、多くの人が一度は耳にしたことがあるようなものです。カラオケなどでも聞いたことがあるのではないでしょうか。ダウンロード数やサブスクリプションでの再生回数。カラオケでの歌唱印税なども含めれば大きな利益をもたらしたと思います。

 こういったヒットソングが誕生することで、楽曲制作者たちは収入を得ていくので、『THE FIRST TAKE』に出演することはPRとして理にかなっています」

コロナ禍で人々に寄り添った動画コンテンツ

 そんな『THE FIRST TAKE』の中でも注目したいのが、YOASOBI の『夜に駆ける』だ。「THE HOME TAKE」と題され、コロナ禍で配信されたコンテンツのひとつで、YOASOBIをメジャーシーンに押し上げたヒットソングでもある。

『THE FIRST TAKE』をきっかけに多くの人々の目に留まっただろう。人々が集まることを許されなかったあの頃に、少しでも“ライブ”や“生”という感覚を擬似的にも味わうことができたからかもしれない。

 YOASOBIのikuraは「THE HOME TAKE」の動画冒頭でこう話している。

「夜のみんなの1人の時間に、少しでも寄り添えたらいいなと思います」

 自粛生活を強いられ、不安ばかりが煽られた当時、エンタメが不要不急なのかと多くの議論が交わされた。リアルでのつながりが絶たれていく中、この動画に救われた人もいるだろう。

 他にも『THE FIRST TAKE』で配信されたパフォーマンス動画は、ほとんどが100万回再生を超えている。

「100万再生いけばヒットコンテンツと言えるYouTubeの中で、これだけの再生回数を世に送り出したことはすごいです。配信する楽曲の選曲などで、ユーザーの心を掴んでいるのでしょう」(前出・エンタメ誌の編集者)

 視聴ユーザーを「一発撮り」という謳い文句で騙していたという捉え方もできるが、一方でそれだけユーザーたちが望んでいるコンテンツを産み出していたということも再生回数が物語っている。

 音楽とはそもそも何か。そんな議論が繰り広げられているが、音楽の楽しみ方は人それぞれであっていいだろう。歌詞の捉え方が聞き手に委ねられるのと同じように、動画コンテンツをどのように受け取るかも視聴者に委ねられている。

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