「もうお腹いっぱい」「なかなか仲良くなれない」「クラッチを繋げてしまった」【SF Mix Voices 第7戦決勝“事件簿”】

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2023年08月20日 23:20  AUTOSPORT web

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2023スーパーフォーミュラ第7戦もてぎ 小林可夢偉(Kids com Team KCMG)
 8月20日、栃木県のモビリティリゾートもてぎで全日本スーパーフォーミュラ選手権2023年第7戦の決勝が行われ、野尻智紀(TEAM MUGEN)が優勝を飾った。

 今回のレースはオープニングラップから多重クラッシュが発生して赤旗中断。その後も随所でバトルや接触、トラブルが起きるなど、荒れた展開となった。今回は決勝後の取材セッション“ミックスゾーン”で、第7戦でさまざまな“事件”の当事者となったドライバーに話を聞いた。

■佐藤蓮(TCS NAKAJIMA RACING) 決勝:16位

 土曜フリー走行から予選、日曜フリー走行と全て15番手とこの週調子を掴み切れていない様子だった佐藤。決勝レースでは開幕直後の多重クラッシュをうまく避け、リスタート時は6番手にまでポジションを上げていた。

「もてぎは基本的に抜けないだろうというところで、前とのペースをコントロールしているなかでも、自分はかなり余裕がありました。ですが、(チーム内で)前にいた山本選手に戦略の優先権があったので、自分は逆の作戦としてミニマムでピットに入りました」

 その際、ピットボックスからスタートした直後に太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)とまさかの接触。交換したばかりの左リヤタイヤにダメージを追って13周目に再びピットインを行い、その後の挽回も叶わず最高尾16位でチェッカーフラッグを受けた。

 なお、ピットロードでの接触はアンセーフリリースと裁定が出され、佐藤には競技結果に30秒加算のペナルティが課せられている。

「ちょっとタイヤ交換に時間がかかって、そこでクラッチを繋げてしまったことでさらに時間がかかった」とアンセーフリリースの前に、作業自体にロスがあったと明かす。

「そこで慌ててしまったなかで、ロリポップが上がってしまって太田選手と接触してしまいました」。その後は接触によって破損したタイヤを再度交換し、「今後のためのデータ収集」として再びコースへと向かう。

 タイヤ交換後のペースについては、「平川(亮)選手と大差ないスピードで走れていたので、非常に良かったです」という。

「今年は一貫してレースは強いのですが、富士では良くてももてぎではダメと、分析しきれていない部分があるので、次に向けてはしっかりと合わせて予選上位に行きたいと思います」と、最終ラウンドとなる次戦鈴鹿での挽回を誓った。

■太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING) 決勝:リタイア

 予選で2番手とそのスピードを見せつけた太田にはスタート前から大きな期待が集まっていた。スーパーGTのメーカーテストでのクラッシュにより、今季開幕前の1度きりの公式テストにも参加できず、開幕後は長く苦戦が続いた太田が、シーズン終盤戦で持ち前のスピードを発揮し、いかにしてポールシッターの野尻智紀(TEAM MUGEN)や、後続のリアム・ローソン(TEAM MUGEN)、大湯都史樹(TGM Grand Prix)と上位争いを繰り広げるのかを楽しみにしていたファンも少なくはないだろう。

 ただスタートの瞬間、太田の車両は動くことができず。他車から大きく出遅れて1コーナーを通過するも、赤旗中断時点での順位は18位と沈んでしまうこととなった。

「スタートで出遅れた原因はまだ詳しくはわかっていないのですけど、ギヤを入れるために手順通りにやってスタートしたつもりが、結果的にはそこでギヤが入ってなかったという感じです」と太田は言葉を絞り出すように説明した。

 つまりエンジンストールではなく、ギヤがニュートラルから1速に入らない状態だった。そのため、グリッド上で動けなかった間もエンジンは回り続けており、大きく出遅れる結果とはなったが再びギヤを操作するとなんとか1速に入り、太田はスタートを切ることが叶った。

 その後、赤旗からのレース再開後は2台をパスし16番手に浮上。ただ、15番手のジェム・ブリュックバシェ(TGM Grand Prix)に引っかかったこともあり、太田は10周終了時というミニマムでのタイヤ交換を選択したが、ここで予想外のアクシデントに出くわしてしまう。

 太田のDOCOMO TEAM DANDELION RACINGのピットの最終コーナー側の隣はTCS NAKAJIMA RACINGのピットだった。6番手走行の佐藤蓮も10周目終わりにピットイン。ただ、右フロントの交換に手間取りタイムロス。そのロスが影響したかはわからないが、まさに太田がピット作業エリアに滑り込むタイミングでTCS NAKAJIMA RACINGのロリポップが上がってしまい、その直後2台が交錯する結果となった。

「ああいう形でレースを終えることになったのは非常に残念です。フロントウイングを交換して1度はコースに戻りましたけど、フロントのトーが変わってる状況で、これ以上は……ということでリタイアを選択しました」と太田。

 予選2番手という好調から一転、決勝ではアンラッキーが続いた太田。しかし、太田はそれでも週末全体を「ポジティブだった」と総括した。

「前戦の予選3番手から今回は予選2番手と来ていますしね。でもこの予選順位を決勝で活かすことができていないのは事実です。正直、『速さはあるのにな……』と思ったりもしているのですけど、その辺りの感情は自分の頭の中で消化し、もっとチームを頼っていかないといけないと考えています」

■坪井翔(P.MU/CERUMO・INGING) 決勝:リタイア

 11番手グリッドからスタートし、なんとか多重クラッシュを避けて10番手となった坪井。

 さらに、リスタート直後の第3コーナーでは前を行く小高一斗(KONDO RACING)をオーバーテイクし9番手となり、着々と順位を上げていた最中の8周目にダウンヒルストレートで突如失速してしまい、そのままピットへマシンを戻してリタイアとなってしまった。

 その原因については、「ギヤトラブルですね」と語った。

「3から4が入らなくなってしまいました。2と3は動いていて、1も動いていたのですが、3からが上が入らない。4に入らないので、その上もないという状況でした」と、スローダウン時のトラブルの状況を明かした。

 また、スタート直後に起きたクラッシュついて、「(阪口)晴南と僕が1〜2コーナーをイン側で立ち上がって、クラッシュが起こった側にいました」と、自身の目の前で起こった衝突の様子を振り返った。

「一瞬、飛んでいるクルマが見えたので、咄嗟にブレーキを踏みました。ですが、パーツがすごい飛んできて、フロントウイングやサスペンションアームに当たってしまいました」

「それでアームが曲がってしまったり、ダクトの部分が破損してしまって、もう走れないかなという状況でした。ですが、とりあえず真っすぐ走ってくれてはいたので、突貫工事でやれることをやって直してもらいました」

「クラッシュの影響はとりあえずなかったのかなと思いますが、パーツがフロントウイングに当たっているくらいで、もう少し自分の方に来ていたらと思うと危なかったので、少しヒヤッとするシーンでした」

■小林可夢偉(Kids com Team KCMG) 決勝:7位

 土曜フリー走行では3番手を記録し、予選では6番手グリッドを獲得。午前中のフリー走行ではトップタイムとなる速さを見せ、可夢偉は待望のスーパーフォーミュラ初優勝も射程に収めていた。

 決勝では11周目にピットへと向かい、順調に自身のレースを進めていたかと思われたが、そのピット作業で右リヤタイヤの交換に手間取り大きくタイムロス。最終的には7位でレースを終えた。

 レース終了後のミックスゾーンに現れた可夢偉は、開口一番に「もうお腹いっぱい」と漏らし、がっかりした様子で話し始めた。

「勝てていたレースだと思うので、またここで同じようなことをしてしまって。タイヤがまだついていないのにロリポップをあげたのでスタートしてしまって、それで余計に危険を生んでしまいました。もう、普通にレースがしたいです」と、かつて何度も同様の形でレースを落としたことを示唆しながら落胆する。

 走り始めのペースについては「全然速かったです」と語る可夢偉。中継映像でも「プラン通りいこう」という無線のやりとりが流れていたピットタイミングについては「(前のマシンの)後ろについたら正直抜けないです。だから11周目に入りました」という。

 大きく順位を下げたピットアウト後は、大嶋和也(docomo business ROOKIE)の背後で長時間を過ごすことになった。31周目、S字コーナーで大嶋をオーバーテイクし7番手に順位を上げると、さらに前を行く小高にも接近しバトルを仕掛けたが、終盤の最終コーナーで接触。

 その際ややスローダウンする様子が見られたが、そのときのトラブルについては「当たった時にギヤが飛んだんです」と語る。

「ギヤは3速だったのですが、アクセルを踏んでも加速しなくて。ドライブシャフトがいったかなと思って、クラッチを握ったらいきなり(駆動が)帰ってきました」と、接触後に起きた失速の原因を振り返った。

 結局小高を抜くことはできずに7位でレースを終えた可夢偉だが、勝てるレースを失ったことへの失望が、最後に大きなため息となって漏れていた。

■笹原右京(VANTELIN TEAM TOM’S) 決勝:12位

 18番グリッドからスタートした笹原は、11周目にピットストップを済ませて後半スティントを長めにとる戦略を敢行。それが功を奏し、29周目には9番手までポジションを上げた。

 ところが30周目のS字コーナーで単独スピンを喫しポジションダウン。最後まで挽回を試みたが12位でチェッカーを受け、今回もノーポイントで終わってしまった。

 今レースを振り返った笹原は、「ペースが全くなかったです……」と開口一番。

「前回の富士では集団にまったくついていくことができない感じでしたが、今回はOTSもめちゃくちゃ使って、とにかくその集団にしがみついていきましたし、戦略もうまく利用して9番手までポジションを上げられました」と、第6戦富士より改善はあったというが、苦戦する展開に変わりはなかった様子だ。

 後半のスピンについては「S字の2つ目で、普通に(リヤのグリップが)スポンと抜けた感じでスピンしました。人生であんなスピンはしたことがなかったです。だから『どうしたものかなぁ』という感じです。それだけ紙一重というか綱渡りのところでドライビングしている感じはありました」と笹原。

「なかなか(36号車と)仲良くなれないですね。僕も(クルマに対して)声掛けはしているんですけど、いつも違う答えが返ってくる感じです。それでも今回は何としてもポイントを持ち帰りたかったですが……そこは僕のミスです」と悔しい表情をみせた。

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