実写『ONE PIECE』アルビダのイジリにも変化が……原作から現代版にアップデートされた要素とは

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2023年09月10日 07:01  リアルサウンド

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photo:Zoltan Tasi(Unsplash)

   ※本稿は実写版『ONE PIECE』のネタバレを含みます。


  Netflixによるオリジナル実写ドラマ『ONE PIECE』の配信が、8月31日に始まった。同作は、ルフィたちの冒険の出発点にあたる「東の海(イーストブルー)編」を現代風に再構成することで、原作ファンが安心して楽しめるストーリーを実現している。


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  しかし同エピソードの連載が始まったのは、今から20年以上も前のこと。現代の価値観とのズレを解消するためか、実写版ではさまざまな点で設定やストーリーのアレンジが行われていた。


  まず同作を見始めて気づくのは、金棒のアルビダにまつわるエピソードのアレンジだろう。実写版の第1話で登場したアルビダは、巨大な金棒を振り回す恐ろしい女海賊であり、コビーを海賊団の雑用として使役していた。そこでアルビダが決めゼリフとして発するのが、「この海で一番強い海賊は誰だい?」という言葉だ。


  原作読者なら分かると思うが、ここでアルビダが放つのは、「この海で一番美しいものは何だい!?」という決めゼリフのはずだった。原作のアルビダはとにかく美へのこだわりが強く、船員たちに自分の美しさを褒めさせていたことが印象的だ。だが実写版では、美しさよりも強さにこだわるような性格となっている。


  また、原作ではルフィとコビーがアルビダへの反抗を示すため、彼女の容姿をけなすセリフがあったが、こちらも実写版では少し変化。ルフィは英語では「意地悪で残酷」「そして海牛のように頭が悪い」、日本語吹き替えでは「ドSの極悪人」「トドみたいにおつむが弱い」とアルビダをけなしていた。こうした改変からは、ルッキズム(外見至上主義)への配慮を感じられるだろう。


  そのほか、海上レストラン「バラティエ」で仲間になるサンジも、そのキャラクター造形が現代的なものに変化している。


  原作のサンジは女性にはとことん紳士的である一方、男性に対してはそっけなく、時として必要以上に愛想が悪い部分がある。それに比べて、実写版のサンジは女性好きなところは原作と変わらないが、男性に対しても紳士的な態度を崩さない。たとえばルフィがゾロのために「おにぎり」を作ってほしいとリクエストした際、にこやかに快諾するシーンなどが印象的だ。


  また、「バラティエ」に客として訪れたナミと出会った際に、年齢や未婚・既婚を問わない敬称「マダム」で呼びかけていたのも、現代的ですぐれた改変と言えるのではないだろうか。


  ほかにも、原作の序盤では男だらけだった海軍のなかに、女性の海兵の姿があったり、ナミが序盤から戦闘員として活躍していたりと、今の視聴者が違和感なく楽しめるようにする配慮が随所に見られる。


原作改変によって新たに生まれた名シーン


  実写『ONE PIECE』では、現代の視聴者に届けることを意識した結果、原作にはない名シーンもいくつか生まれている。そのなかでも必見と言えるのが、シロップ村におけるナミとカヤの心の交流だ。


  シロップ村に到着したルフィたちはウソップに出会い、カヤが住んでいる巨大な豪邸に泊めてもらうことに。そこでナミは夜中にこっそりと金目のものを盗んでいたが、運悪くカヤの部屋に飛び込んでしまう。しかしカヤは彼女が何をしていたのか知りながら、責めようとはせず、本音で話し合う“お泊まり会”が始まる……。


  ナミは貧困に苦しめられてきた過去があり、豊かな者から窃盗することに良心の呵責を抱いておらず、富豪のカヤに対しても偏見を抱いていた。だが、ふたりだけの夜を過ごした後、ナミの意識が変わったような描写が入るのだ。女性キャラクター同士が格差を超えて打ち解けるこのシーンは、現代ドラマならではの見応えがある。


  また「バラティエ」ではアーロンが来訪するという物語の変更があり、その結果として印象的なシーンが生まれた。アーロンは魚人を差別してきた人間を心の底から憎んでおり、我が物顔でレストランを占拠する。


  そこでアーロンは差し出された料理に手を出すのだが、テーブルマナーを無視してむさぼるような食べ方を見せる。そして周囲の人間に冷ややかな目を向けられていることに気づくと、逆上して人間を恫喝しながら、魚人が置かれている差別的な現状について語るのだった。


  原作では「魚人島編」で掘り下げられた魚人差別の実態だが、実写版では「バラティエ」の時点で先取りされ、アーロンのバックボーンを示すと共に、現代ドラマとしての深みを与えることにも成功している。


  そんな実写版『ONE PIECE』は公開早々、世界各国でNetflixの視聴ランキング1位を獲得している。おそらく原作を知らない人でも、違和感なく楽しめる作りになっているからこそ、ここまで広く受け入れられているのだろう。長大な『ONE PIECE』の世界に踏み入る入門編として、この上ない傑作が誕生したのかもしれない。


(文=キットゥン希美)


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