『BMW 635CSi』BMWの美麗なラグジュアリークーペが見せた実力【忘れがたき銘車たち】

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2023年09月13日 20:11  AUTOSPORT web

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1985年の全日本ツーリングカー選手権第2戦筑波を長坂尚樹、茂木和男のドライブで制したハルトゲ635CSi。
 モータースポーツの「歴史」に焦点を当てる老舗レース雑誌『Racing on』と、モータースポーツの「今」を切り取るオートスポーツwebがコラボしてお届けするweb版『Racing on』では、記憶に残る数々の名レーシングカー、ドライバーなどを紹介していきます。今回のテーマはグループA規定の全日本ツーリングカー選手権を戦った『BMW 635CSi』です。

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 1985年から1993年までの9シーズンに渡って“グループA”という車両規定のマシンによって競われていた全日本ツーリングカー選手権(JTC)。このJTCに投入されたBMWといえば、ディビジョン2を長く戦っていた『BMW M3』がもっとも有名な1台だろう。だが、この『M3』以前にもJTCに参戦していたBMWがいた。それが今回紹介する『BMW 635CSi』だ。

 『635CSi』は、BMWの誇るラグジュアリー2ドアクーペ“6シリーズ”のラインナップとして1978年に登場したモデル。レースでは1983年に日本より先行してグループA規定で行われていたヨーロッパツーリングカー選手権(ETC)にてデビューを果たした。

 BMWは『635CSi』をグループAレーシングカーへと仕立てるにあたって、まず車重を大幅に軽量化した。その結果、1500kg近かった重量を1200kg(数値はJTC参戦車のもの)にまで絞った。

 また搭載された3.5リッター直列6気筒SOHCのNAエンジンにもチューニングが施され、市販状態では200ps程度だった最高出力を285ps(JTC参戦時点では296psと言われていた)にまで高めていた。

 こうして誕生したグループA仕様の『635CSi』は前述の通り、まず1983年にETCに投入されると、デビューイヤーながらチャンピオンを獲得する。そして欧州での登場から2年後、1985年にJTCが始まるにあたって、日本にも持ち込まれた。

 この『635CSi』を日本のJTCで走らせたのはBMWのチューナーのハルトゲとスーパーシルエットレースなどで『BMW M1』を走らせ実績を挙げていたオートビューレックがタッグを組んだチームで、これを“M1使い”長坂尚樹と茂木和男のふたりがドライブし、シーズンを戦った。

 デビューとなったのはJTCのオープニングレースだったスポーツランドSUGOでの開幕戦で、このラウンドで『635CSi『は、いきなりポールポジションを獲得。しかし残念ながら決勝レースではクラッシュによりリタイアに終わった。

 だが第2戦以降はその実力をレースでもいかんなく発揮していく。『635CSi』は翌第2戦の筑波サーキットラウンド、西日本サーキットでの第3戦と2連勝を達成した。

 筑波サーキットや西日本サーキットはテクニカルなコースで、大柄なボディの『635CSi』には不利かと思われたが、ハンドリングの良さを活かして、コースを選ばず結果が残せることを証明した。

 その後、第4戦の鈴鹿サーキットラウンドを4位で終えた『635CSi』は、同年のJTC最終戦となった富士スピードウェイで開催されたグループAの国際交流戦 インターTECに挑んだ。このレースは海外より来襲した『ボルボ240T』の2台が席巻した1戦だったが、そのボルボ勢には敗れたものの、総合3位でチェッカーを受けた。

 結果、『635CSi』をドライブした長坂尚樹がドライバー部門で総合チャンピオンとなり、製造者部門でもBMWがクラスチャンピオンに輝いた。

 翌1986年はJTCでは前年ほどの戦果を残せなかったものの、ETCでは再びチャンピオンを獲得したほか、同年インターTECではオーストラリアチームの走らせた1台が総合2位となるなど、ETCでの投入から4シーズン目でもライバル車に対峙して見せたのだった。

 そして1987年になるとグループAで戦うために生まれたエボリューションモデル『M3』が登場する。『635CSi』はこの年もJTCを戦っていたが、次第に主力の座は『M3』へと移行していった。

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