不可抗力による準備不足が招いた「ナーバスな状態」。変化する路面にも苦戦した勝田貴元/WRCギリシャ

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2023年09月14日 07:20  AUTOSPORT web

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総合6位に入りドライバーズポイントを持ち帰った勝田貴元(TOYOTA GAZOO Racing WRT) 2023年WRC第10戦アクロポリス・ラリー・ギリシャ
「今回のギリシャに関しては正直、悔しい気持ちは大きいですが、ポイントを持ち帰れたというところでは最低限の仕事ができたかなと思っています」

 2022年大会は、ライバルメーカーであるヒョンデに表彰台を独占されたTOYOTA GAZOO Racingワールドラリーチーム(TGR-WRT)にあって、トヨタ陣営最上位の総合6位を獲得した勝田貴元。1年後のアクロポリス・ラリー・ギリシャでふたたび6位となった後、彼は恒例のオンライン取材会でこのように伝統のグラベルラリーを振り返った。

 TOYOTA GAZOO Racing WRCチャレンジプログラムにより、4台目のトヨタGRヤリス・ラリー1で2023年のWRC世界ラリー選手権第10戦ギリシャに挑んだ勝田は、冷却系トラブルや2度のパンクを喫した彼を含め、多くの選手たちがメカトラブルやアクシデントに見舞われた“サバイバル・ラリー”を走り抜き、ドライバー選手権ポイントを獲得した。

 このアクロポリスは勝田が3位表彰台を獲得した前戦フィンランドと同様に、グラベル(未舗装路)で行われるイベントだが、その性質はまったくと言っていいほど異なる。フィンランドがスムーズで高速のステージであるのに対し、ギリシャはラフでツイスティ、かつては“カーブレイカー・ラリー”の異名をとるほど過酷な路面で行われる。とりわけ今大会はラリーウイークの前半にギリシャ国内で洪水が発生するほどの大雨が続いたことで、路面状況がさらに悪化。ステージのいたるところにぬかるみができたほか、乾いた区間ではステージの砂が雨で洗い流されシャープな岩や岩盤がいたるところでむき出しとなっていた。

 災害発生レベルの大雨はラリーのスケジュールにも影響し、通常競技前に行われるシェイクダウンが中止に。これはスケジュールの関係でチーム内で唯一、ギリシャ国内でのプレイベントテストができていなかった勝田にとって大きなマイナスとなった。前述のとおりフィンランドとギリシャでは、ラリーのタイプがまるで異なるため、クルマのセッティングについても「グラベルからターマック(舗装路)に来るくらい違いがある」とは勝田の言葉だ。

 そうした中で本来できていたはずの準備のうち、感覚的に約7割に相当する事前テストができず、さらに残りの3割を担うシェイクダウンでの最終確認の機会がなくなってしまったため、勝田は実戦の中で、具体的には天候が回復した“フルデイ初日”金曜のSS2からコンディションにクルマと自身のドライビングを合わせこんでいくことを強いられた。

「結構難しかったです。今回は(路面が)一定のコンディションでないということもあって、金曜日の時点でのコンディションにドライビングを合わせたところで、翌日により乾いた路面になった時に果たしてそれはどうなっているのかとか、そういったところも含めて予測しながら合わせ込んでいかなければならず、その部分が本当に難しかったです」

■自信のあるラリーであれば違うアプローチもとれた

 フルデイ初日はプッシュしたいところを我慢しつつ、改善点を探りながら総合6番手となった勝田は、土曜のデイ3で総合5番手に浮上するもSS11での2度のパンクチャーによって4分以上のタイムを失ってしまう。その後、彼はクルマを最後まで運んでいくアプローチに切り替え、ポイントを確実に持ち帰ることをミッションとしこれを完遂した。

 今大会を振り返ったとき、勝田は事前の準備が整わない状況でラリーを迎えたことでナーバスな状態で走っていたと述べた。

「自分のドライビングで『もうちょっとこうしたかった』『こうしないといけなかったかな』というところも、やはり事前テストができていればそこでいろいろとトライもできるのですが、それらをラリー中にしなくければいけなかったという部分。また、ドライビングに関しての修正もあり……例えば昨年非常にいいパフォーマンスを発揮して自信も持ってるラリーであれば、また違ったアプローチができたと思います」

「しかし、実際には昨年とても苦戦したラリーのひとつでもあったので、そういったところで非常にナーバスなスタートになって、ラリー中も自信を持って走れていたかというと反対にかなりナーバスな状態で走っていたように思います」と打ち明けた。

 スタート段階の状況が状況なだけに、チームからも「割り切っていこう」と言われていたという勝田。彼自身もアクロポリスの結果をすべてネガティブに捉えるのではなく、今回浮き彫りになった課題を見つめ、それらを「次に進める一歩」として捉えている。

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