新型SUV「グレカーレ」はマセラティらしいクルマなのか? 試乗で確認!

0

2023年09月18日 11:51  マイナビニュース

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

マイナビニュース

画像提供:マイナビニュース
マセラティのSUV「グレカーレ」は、ポルシェ「マカン」のライバルと目される新型SUVだ。全幅1,980mmの車体は日本で乗っても不安なし? マイルドハイブリッド車(MHEV)の走りにマセラティらしさはある? 「モデナ」グレードに試乗して確かめた。


○マセラティならではの優雅な車内



グレカーレは「GT」「モデナ」「トロフェオ」の3グレード展開。モデナは中間に位置する車格だ。GTとモデナは排気量2.0Lの直列4気筒ガソリンターボエンジンを搭載し、回生機能と発進の補助力にモーターを利用するマイルドハイブリッド車(MHEV)。基本的には同じ動力源だが、モデナは30PSほど最高出力の設定が高い。ちなみにトロフェオは、530PSのV型6気筒エンジンを搭載する。


「ブルーインテンソ」と名付けられた青い外装は、輝くように美しい。マセラティはイタリアのボローニャに創業した自動車メーカーで、長きにわたりレースで活躍し、その複製を市販することから事業を始めた。市販車の開発では、当初からイタリアらしい美しさを継承し続けている。マセラティのエンブレムは、ボローニャの市章である海神ネプチューンが持つ三つ又の鉾だ。


運転席に座ると、上質な革の風合いを伝えるダッシュボードや座席が優雅な雰囲気。イタリア車のなかでも、雅で上質な贅沢さはマセラティならではの特徴だ。


○始動してもエンジン音は控えめ?



ガソリンターボエンジンを始動しても、振動や騒音はそれほど伝わってこなかった。高性能車の印象が強いマセラティのクルマにしては、エンジン音が控えめで拍子抜けするかもしれない。



一方、電気自動車(EV)が普及し始めている今日では、この穏やかな佇まいがかえって日常的であり、もしEVから乗り換えたとしても違和感が少ないのではないかと思えた。ここが、新しいマセラティの魅力となっていきそうだ。



シフトはナビ画面の下に並ぶボタンスイッチで操作する。グレカーレにはEVバージョンも追加となる(ただし、日本市場への導入は未定)そうだが、その先駆け的なシフトスイッチ手法といえそうだ。


MHEVであるため、発進時はエンジンの回転をそれほど上げなくても、アクセルペダルを軽く踏み込んだだけで滑らかに動き出す。狭い駐車場から通りへ出て行くときなど、動き出しの穏やかさに安心を感じるはずだ。通りに出てグッとアクセルペダルを踏みこむと、濁りのないエンジン音が耳に届く。「やっぱりマセラティだ」と感じる瞬間だ。



走りが売りのクルマでよく語られることだが、エンジン音は自動車メーカーによって少しずつ音質が異なる。同じイタリア車であっても、微妙に違う。そこを聞き分けられるほどのマニアではないとしても、エンジン音からマセラティに乗っているという実感を得られるのは理屈抜きの喜びだ。

「スポーツ」モードを選んで全開加速を試せば、たちどころに速度計は跳ね上がった。エンジン音もより高らかに轟く。それでも粗野な面はなく、あくまで優雅に超高速の世界の扉を開く乗り味であった。


○2m近い車幅、取り回しは?



グレカーレは車体全幅が1,980mmもあるので、試乗前はやや構えていた。横幅が2m近くもあると、道路幅などを含め、現実的な制約を実感することが多いからだ。



ところが実車と対面してみると、丸みのある形状のためか威圧感を受けることはなかった。丸みのある車体は車両感覚がつかみにくく、運転していて不安になることもあるのだが、都内の一般道と高速道路を走った限り、グレカーレに不安を感じることはなかった。



その理由は着座位置が適切であることと、運転席からの視界が明瞭かつ的確で、自然に車両感覚をつかみやすいところにあるのではないかと思った。路地などへ入り込めば2m近い車幅がかなり影響するだろうが、日本の道路基準である4m以上の幅があれば、ほぼ不自由なく運転できそうだ。


グレカーレは後席に乗っても快適だ。高性能なSUVであることがはっきりと伝わってくる。引き締まった乗り心地は後席も同様だが、ダンパーの減衰力が強まる「スポーツ」モードでの走行中も、後席の快適性が損なわれることなかった。かえって運転者と一体となり、グレカーレの走りを楽しめる感触さえあった。硬めの乗り心地ではあるが、路面からの衝撃で不快に思うこともない。



後輪からのタイヤ騒音が耳に届きやすい後席にいても、エンジンを始動したときから感じていた静粛性は基本的に変わらなかった。


総じて、快適性に優れたSUVである。伝統的マセラティの優美で高性能な味わいに加え、静かな移動空間のなかに高性能さの片鱗を伝える感触がある。上級SUVとして、独自の存在感を放つクルマだ。



日本に入ってくるかは不明だが、グレカーレのEVにも期待が高まる。EVになるとエンジン音がなくなってつまらなくなるとか、クルマの個性がなくなってしまうなど「負の側面」がよく語られるが、標準的なモードで静かに速度を上げていくMHEVのグレカーレには、他車とは違う乗り味があった。EVになりモーター駆動となれば、操作に対する応答はさらに俊敏さを増し、劇的な走りが実現するだろう。静粛さはいっそう高まり、新たなスピードの世界が現れるはずだ。



EV化でどんな魅力を発信するのか。グレカーレの試乗を終え、マセラティの未来への期待は高まった。


御堀直嗣 みほりなおつぐ 1955年東京都出身。玉川大学工学部機械工学科を卒業後、「FL500」「FJ1600」などのレース参戦を経て、モータージャーナリストに。自動車の技術面から社会との関わりまで、幅広く執筆している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。電気自動車の普及を考える市民団体「日本EVクラブ」副代表を務める。著書に「スバル デザイン」「マツダスカイアクティブエンジンの開発」など。 この著者の記事一覧はこちら(御堀直嗣)

    ランキングトレンド

    前日のランキングへ

    ニュース設定