スバルでは異例? 都会派SUV「レヴォーグ レイバック」登場の背景を聞く

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2023年09月20日 11:31  マイナビニュース

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スバルが「都会派SUV」を狙った新型車「レヴォーグ レイバック」は、どんな経緯で誕生したのか。スバルにしてみれば異例の「都会派」だけに、新規市場の開拓に向け期待は大きいが……。開発責任者と技術者に話を聞いた。


○スバルが都会派にイメチェン?



レイバックは「レヴォーグ」の車高を上げて作ったお手軽な新型車なのかと思いきや、乗ってみると味わいは別物で、開発陣がいろいろと手をかけたことが伝わってくる出来栄えだった。どうしてこのクルマを作ろうと思ったのか。開発責任者を務めるスバル商品企画本部 PGMの小林正明さんに聞いてみた。



「我々としてはアウトバックやフォレスター、クロストレックなどのクルマで、アウトドア的でいかにもSUV然としたクルマのブランディングには成功したかなと思っています。一方、SUV市場が拡大する中で、街中でスマートに乗っていらっしゃるSUVユーザーが“マス”としてたくさんいることもわかってきました。そこで、レヴォーグをベースに新しいチャレンジをしたのが今回のレイバックです」(以下、カッコ内は小林さん)



確かに、街では「都会派」とか「都市型」といった言葉の似合うSUVをよく見かける。代表的な車種でいえばトヨタ自動車「ハリアー」や日産自動車「エクストレイル」、ホンダ「ヴェゼル」、マツダの「CXシリーズ」などだ。確かに、これらの車種は土の上を走るような用途で作られたクルマではない。


アウトドアのイメージが強いスバルだが、都会派SUVのレイバックを作る上で意識したこととは?



「今回は静粛性など、クルマとしての上質さを演出することに注力しましたが、スバルらしい、SUVとしての走りの楽しさにもこだわりました。上質さと楽しさは相反する要素になりがちですが、両立できたと思います。おっしゃる通り、ハリアーやヴェゼル、CX-5などは意識していますが、我々のこだわりを注入して作った結果、それらとはかなり違う仕上がりになっています」



絶妙なバランスを達成するためには、パワートレインの取捨選択も必要だったようだ。レイバックのエンジンは、最高出力130kW(185PS)、最大トルク300Nmを発生する1.8Lの水平対抗直噴4気筒ターボエンジン「CB18型」の一択。レヴォーグでは選べる2.4Lをレイバックに持ってこなかった理由について、小林さんはこう語る。



「2.4Lがないのは、1.8Lがベストバランスであると思っているからです。2.4Lを載せると、パワーがあるがゆえに、ロール感に対応して足を硬くする必要が出てきます。そうすると、SUVとしての乗り心地のよさと両立できなくなってしまうんです。車高が高いので、2.4Lだと扱いきれないという面もあります。ハイパワーを求めるのであれば、ぜひレヴォーグに乗っていただければと(笑)」


レイバックの価格は300万円台だと聞く。内容から考えるとお買い得のような気がするが、社内では価格設定についてどんな議論があったのだろうか。

「アイサイトXやデジタルコックピット、ハーマンカードン(Harman Kardon)のサウンドシステムなどが標準装備で300万円台なので、お得感があるのではないでしょうか。原価も上がっているので、社内では『もっと価格を上げては?』との声がありましたし、価格を抑えれば利益率も下がるのですが、とにかく、たくさんのお客様に乗ってもらうことを目指しました。販売台数については、レヴォーグと半々くらいになればいいという思いです。レイバックがたくさん売れても、レヴォーグがガクンと下がってしまうと、どちらも見ている私としては悲しいので……」



レイバックの販売台数がレヴォーグを凌駕してしまうという心配には、あながち根拠がないわけではないようだ。スバルには「インプレッサ」と同モデルのSUV版である「クロストレック」があるが、前者は直近3カ月で5,861台(月平均1,890台)、後者は直近8カ月で1万8,974万台(月平均2,371台)の売れ行きだそうだから、SUVバージョンの方が売れる傾向にあるのは確か。また「レガシィ」を見ても、日本ではセダンやステーションワゴンが姿を消し、SUVタイプの「アウトバック」のみとなっている。



レイバック(あるいはスバル車)の弱点といえば燃費だと思うが、電動化については「このクルマが売れることで、将来の取り組みにつなげていけるはずです。燃費についても、今後の電動化に期待してもらえればと思います」とのことだった。

○スバルらしく地道に開発?



スバル技術本部 車両開発統括部の青山寛さんには、レイバックの足回りについて話を聞いた。レヴォーグに比べ全高が70mm高い1,570mm、最低地上高は55mmリフトアップして200mmとなったレイバック。これだけ変わると、足回りのセッティングには相当な苦労があったはずだ。



「よく動く足は、端的にいうと重箱の隅をつつくような感じで仕上げました。飛び道具は持っていないんです。ちょっとしたところをあきらめず、地道に進めました」(以下、カッコ内は青山さん)



地道に愚直にとは、なんとなくスバルらしい物事の進め方だ。具体的には?



「メカ的にいうと、バネは前後ともレヴォーグよりもかなり柔らかくしてあります。前後のロール剛性バランスはレヴォーグと同じで、バネを下げると当然ながら不安定になるのですが、それを抑えるためにはダンパーの減衰力がキーになります。動く時に、いかにゆっくりと減衰を出すか。これがうまく出せると、仮に柔らかくてもパタっと倒れないですし、じわっと動いたときのロールも少なく感じられます。操作に対して気持ちよく、リニアに付いてくる感じです」



「背の高いクルマの足回り」を極めるべく、スバルでは、レイバックに比べ価格帯がかなり上の欧州車をベンチマークとし、エッセンスを学び取って開発にいかしたとのこと。その結果として、レイバックは同価格帯のSUVに比べると、走りはダントツになっているはずだそうだ。確かにその通りで、佐渡島のワインディングで試した限りだが、レイバックの走りのよさはしっかりと体感できた。



技術屋の観点からいっても、世の中の都市型SUVにレイバックは負けていないと青山さんは言い切る。



「都市型SUVで最も売れているモデルに勝ちたいと思っていますし、自信はあります。乗ってもらえれば、ほかのクルマと乗り比べていただければ、差が歴然であることが絶対にわかっていただけると思っています」


スバル車のよさを理解する「スバリスト」はたくさんいるが、そのよさを、もっと広く世の中に伝えるのがレイバックに課されたミッションなのかもしれない。車名はちょっとのんびりした「レイバック」(ゆったりした、くつろいだ、こだわらないを意味するレイドバックから命名)だが、このクルマには、スバル主力モデルの一画を担うという重要な使命があるようだ。



原アキラ はらあきら 1983年、某通信社写真部に入社。カメラマン、デスクを経験後、デジタル部門で自動車を担当。週1本、年間50本の試乗記を約5年間執筆。現在フリーで各メディアに記事を発表中。試乗会、発表会に関わらず、自ら写真を撮影することを信条とする。 この著者の記事一覧はこちら(原アキラ)
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