スプリント優勝のマルティンが縮めた54ポイント。「今は彼のほうが強い」とバニャイア／MotoGP第14戦日本GP

　ホルヘ・マルティン（プリーマ・プラマック・レーシング）はMotoGP第14戦日本GPのスプリントレースで優勝したことで、チャンピオンシップのポイント差を詰めて、ランキングトップのフランセスコ・バニャイア（ドゥカティ・レノボ・チーム）に対し8ポイント差とした。バニャイアは「今の時点では彼のほうが強い」とライバルを認める。第14戦を迎え、タイトル争いは接戦の様相を呈している。

　マルティンは予選でオールタイムラップ・レコードを更新してポールポジションを獲得し、スプリントレースでもポール・トゥ・ウインを果たして土曜日を席巻した。

　レース後の囲み取材に現れたマルティンは「パーフェクトな日だったんじゃない？」と聞かれると「うん、すごくいい日だったよ、ありがとう！」とシンプルに回答した。簡潔な答えにその場に笑いが起こったが、そう言い切るほど調子がよかったのだろう。

「フリープラクティス2ではかなり使ったユーズドタイヤで走ったから、上位にいるのが難しかった。でも、ガソリンが少ない状態でコンスタントに走れたんだよね。だから、スプリント用のタンクで走るスプリントレースで速く走れる自信があったんだ」

　あらためてそう説明したマルティンは、チャンピオンシップについて問われると、「先月は62ポイント差だったのに、今は8ポイント差だ！　すごいよね。夢みたいだよ」と認めた。8月中旬のオーストリアGP終了時点で、ランキングトップのバニャイアとランキング2番手のマルティンとの差は62ポイントあったのだ。4戦の間に54ポイントを詰めたことになる。今季からスプリントレースが行われるようになったことも、マルティンが短期間でバニャイアに接近できた要因だろうが、マルティンが勢いに乗っていることは確かだ。

「3、4カ月前はこの状況を考えていなかった。でも、メンタリティーを変える方法はわかっていると思う。ミサノで言ったように、僕は今という時間を楽しみたい。勝ちたいけど、（チャンピオンになる）責任はない。でも、ペコにはある。ファクトリーチームだからね」

　そう言ったマルティンは、優勝したサンマリノGP決勝レースの会見でも「僕の目標は、レースに勝つことなんだ。僕はファクトリーライダーではないし、チャンピオンシップで勝つ責任は僕が負うことじゃない」と語っていた。そのマインドは、変わっていないようだった。マルティンはやはりミサノと同じように「だから僕は楽しんで、全力で“優勝”争いをするよ」と言った。

　方や、バニャイアはカタルーニャGP以降、マルティンの後塵を拝し続けている。今回のレースではリヤのグリップ不足に苦しみながらも、10周目に前を走っていたジャック・ミラー（レッドブルKTMファクトリー・レーシング）をパスして3位でゴールした。

「表彰台を獲得できてハッピーだよ。インドGP（の決勝レース）でクラッシュしたあとだったから、上位に入ることが重要だったんだ。ただ、もっとグリップがいいと思っていたから、それが残念だった」

　そう言ってレースを振り返ったバニャイアは、日曜日の決勝レースについて「グリップ面でまだやることがある」と述べた。そして「ホルヘは今のところ、とてもいい状態で走っている」と続ける。

「すごくスムーズだし、チームとうまく取り組んでいる。きっと僕たちよりいい状態だろう。僕たちはインドとミサノで、ちょっとブレーキングをロスしてしまった。今はそこを改善していかないといけないんだ。そうしたら以前のフィーリングに戻って、いるべきところにいられるだろう」

「僕がいちばん大事にしているのは、チャンピオンシップについて考えないことと、ポイント差が縮まってきていると考えないこと。でも、今の時点では彼のほうが強いのは確かだ。明日の朝のウオームアップが重要になる。レースでは彼を抑えるために攻めるよ。最初の2、3周、彼をブロックできれば僕にも（優勝争いをする）チャンスがあるかもしれない。それにブラッドもすごく強いから、明日はまた違ったレースになるだろうね」

　チャンピオンシップとして、ランキング3番手につけているマルコ・ベゼッチ（ムーニーVR46レーシング・チーム）は、予選Q2で大きなクラッシュを喫したが、幸い大きな怪我はなかった。スプリントレースを6位で終えて、バニャイアとのポイント差は47ポイントに広がっている。