「印税なし」ハリウッド俳優ストライキ背景にサブスク企業の惨状、洋画“休眠”で邦画にも余波

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2023年10月04日 07:10  週刊女性PRIME

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2022年、映画『トップガンマーヴェリック』来日会見時のトム・クルーズ

 7月14日から始まったハリウッドの俳優組合(正式名称:映画俳優組合―米国テレビ・ラジオ芸能人組合)のストライキが、長引いている。

 日本ではスト開始直後に予定されていたトム・クルーズ主演の新作映画での来日PRが果たされず、嘆いたファンも多かっただろう。この俳優組合によるストは43年ぶり。先駆けて始まった全米脚本家組合との同時ストは63年ぶりとなる。この大規模ストはいつまで続くのか。映画ライターのよしひろまさみちさんに話を聞いた。

ストライキは「絶対に必要」

「5月から始まっていた脚本家組合のストが先日ようやく暫定合意に至り、解除しました。170日間止まっていたハリウッドが急に動き出した状態です。俳優組合のストもここから弾みをつけて、大きく進展する可能性があります。うまくいけば年内。11月のサンクスギビング(アメリカの大型連休)までに決着する兆しも見えてきました」

 脚本家組合のスト解除で、やっと交渉のテーブルが用意された俳優組合のストライキ。だが、そもそも庶民からするとハリウッド俳優の暮らしは優雅に思える。ストは本当に必要だった?

「絶対に必要です。出演ギャラのみで暮らせる俳優はごく一部。本来、映画はテレビ放映やビデオが販売されるたび、俳優側に再使用の印税が支払われるもの。でも今は定額制ストリーミング映像配信サービスの時代。大手のネットフリックスやアマゾン、ディズニープラスなどのIT企業はその常識を持たないので俳優に印税を支払わないんですよ」(よしひろさん、以下同)

ディズニーCEOは豪遊

 ほかにもエキストラ俳優たちのスキャンデータをAIで生成し、永久に使用できる“無料画像”にした問題も争点になったが……。

「それは誰が見てもアウトだから争点としては印税ほどの問題じゃない。配信の普及で俳優が搾取され、配信会社のトップだけが潤っている現状がよほど問題です。中でもディズニープラスを抱えるディズニーCEOの評判は最悪。払うお金がないと言いつつ自分は10数億円もの年収で豪遊しているところもパパラッチされています。俳優たちの訴えにも“ストは無意味”など火に油を注ぐコメントも。まさかディズニーのトップがこんなヴィラン(敵役)とは!」

 配信を楽しんでいた視聴者も知らず搾取に加担させられた、と憤る。このストの期間は撮影が止まり、一切のPR活動も禁止になった。

「スターがPRに出られないことで公開を延期している作品もたくさんあります。『デューン 砂の惑星PART2』などお宝作品が塩漬けになっていて、私も商売あがったりですよ」

 ストで洋画は休眠状態なら、邦画が活況になることも?

いえ、むしろ公開が前倒しになってプロモーション期間が短くなるケースが多い。それでもともと見込んでいた数字が取れなくなるんです。映画館も大作がこない中で、少しでも売れた作品を長く出したい。コロナ中のようにずっと同じ作品ばかり上映することになります」

 八方いいことなしのスト。だが、今やらなければ俳優という職業はいずれ廃れ、AIに取って代わられる可能性も。

「幸い脚本家組合の暫定合意で、争点だった印税とAIの問題に取り決めができました。このひな型で早期決着の見通しが立ったので、来年からの公開スケジュールの多くはそのまま続行されそうです」

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