主人公の愛車は? ライバルはランボ? 映画『グランツーリスモ』の気になるクルマ

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2023年10月04日 11:41  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
クルマ好きなら、すでにご覧になったかもしれない。9月15日に日本でも公開が始まった映画「グランツーリズモ」のことだ。この映画には日本のファンも嬉しいあの日本車など、たくさんのクルマが登場する。作品を鑑賞してきたので、ネタバレには気を付けつつクルマの話がしたい。


○主人公は日産「GT-R」でレースに挑む



『グランツーリスモ』はソニー・インタラクティブエンタテインメントから発売されているドライビングシミュレーションゲームだ。ゲーム内に登場するクルマは実車を忠実に再現しており、クルマファンのみならず、多くのゲームファンを虜にしてきたシリーズである。



そんなゲームを題材にした映画『グランツーリスモ』がこのほど公開された。ゲームの『グランツーリスモ』が好きな主人公ヤン・マーデンボローが、ゲームではなく実車を使った本当のレーサーになるために悪戦苦闘する物語は実話だというから驚きだ。そんな主人公ヤンが、レーサーになるための練習に使う車両として、またレースで実際に使用する車両として登場するのが、日産自動車の「GT-R NISMO」なのだ。


GT-Rは日産のスポーツモデルとしてラインアップされていた「スカイライン GT-R」の後継車種として2007年に登場したスーパーカー。デザインは日産社内で公募した中から選ばれたといわれており、2023年時点の新型車(2024年モデル)でも(モデルチェンジは行われてきたが)ほとんどボディ形状を変えることなく続く高性能マシンだ。


劇中に登場するGT-R NISMOは、GT-Rの最上位に位置づけられるNISMOモデル。NISMOは「ニッサン・モータースポーツ・インターナショナル株式会社」の略称で、モータースポーツ向けの部品製造や設計、販売などを行っていた日産の子会社だ。現在ではオーテックジャパンと経営統合しているが、部品開発、製造、販売、レースでの技術支援やイベント、レーシングスクールなどは継続しており、ブランド名もそのまま残っている。



そんなNISMOの名を冠したGT-R NISMOは、他のモデルとはまったく異なる硬い乗り心地が特徴。サーキット上で走行性能を最大限発揮するように設計されている。


映画『グランツーリスモ』はCGを使わず、実車の映像や音にこだわって製作されている。鑑賞すればGT-R NISMOのエンジン音、ドアを閉める音、タイヤのロードノイズにいたるまで、まるで目の前にいるかのような臨場感が味わえる。それだけでも観る価値は十分にある。GT-R NISMOはレースシーンに登場するだけでなく、冒頭から主人公ヤンがアカデミーで練習する車両としても複数台登場し、大活躍する。GT-Rファンにはたまらない光景となっているはずだ。


なお、映画に登場するGT-R NISMOとまったく同じモデルはすでに新車で購入することができない。参考までだが、2023年に発売されたGT-R NISMOの価格は2,865万600円からとなっている。ちなみに、2024年モデルの「GT-R Premium Edition T-spec」には筆者も試乗したが、高性能と乗り心地を高次元で両立した出来栄えには驚いた次第だ。


○金色に輝くライバル車は…?



主人公ヤンが乗るGT-R NISMOのライバルとして火花を散らすのが、ランボルギーニ「ウラカン GT3」だ。このクルマは、2014年にデビューした市販車「ウラカン LP610-4」をレース仕様にした高性能マシン。エンジンは5.2LのV型10気筒を採用。詳細なスペックは公表されていないが、市販車で最大出力610PS、最大トルク57.1kgm/6,500rpmを叩き出している。徹底的に軽量化されたボディも特徴で、車両重量は市販車より180kgも軽い1,239kgを実現。カーボンファイバー製のシャシーを実装、クルマの各部には空力性能を向上させるパーツが盛りだくさんだ。


劇中では、金色のボディにブラックライン、大型のウイングが迫力満点。ストーリーの詳細は避けるが、主人公に正当とはいえないやり方で仕掛けてくるその様に、観ているこちらも思わず苛立った。一見すると精悍なフロントフェイスも、劇中では悪人のように見えたのは筆者だけではないはず。ウラカンGT3が放つ圧倒的な存在感を劇場でぜひ確かめてほしい。

○魅力的な高性能マシンが多数登場



本作は本格的なレースゲームがベースとなっているだけあって、GT-R NISMOやウラカンGT3のほかにも多数の魅力的な高性能マシンが登場している。例えば「アウディ」からは「R8 LMS GT3」が登場。劇中ではホワイトのボディカラーに赤や緑、黄色のカラーリングで白熱のレースに彩りを添える。また、「アストンマーティン」からは「ヴァンテージ GT3」がレースに参戦。鮮やかな黄色のボディカラーに鋭いヘッドライトが速さを物語っていた。


ほかには、映画『フォードvsフェラーリ』にも登場したフォード「GT40」の後継車種である「GT」やフェラーリ「488 GT3 EVO」、日本車からはレクサス「RC FGT3」など、紹介しきれないほど多くの高性能マシンが登場する。どれもレース仕様なので街で見かけることはほぼないが、いずれのレースマシンも市販車がベースになっている。そのため、同じモデルの市販車であれば実車を見かける可能性はゼロではない。気になったマシンは鑑賞後にチェックしてみてほしい。


○レース映画で感動するとは…



多数の高性能マシンが登場することに加えて、映画全体の見やすさも特筆すべき点だ。本作のレースシーンでは、主人公の順位がいま何位なのか、ゲームと同じようなアイコンと音で知らせるという演出がなされている。そのため、順位の入れ替わりの激しいレースシーンでも、レース全体を俯瞰し、あたかもゲームをプレイしているかのような感覚で鑑賞できる。それでいて、実際の走行シーンは実車のリアルさが徹底的に追求されている。


さらにいえば、内容も単にゲームを映画化しただけの単調なものではない。夢を諦めきれない主人公が、さまざまな逆境にあいながらも成長していく人生ドラマに仕上がっているのだ。この映画には謎解きもなければ、妙な小細工もない。シンプルで単純で王道の成功物語だ。そこにリアルな高性能マシンの走行シーンやエンジン音、ゲーム的なアイコンの演出、一癖ある登場人物などが飽きさせないスパイス的な役割を果たしている。ストーリーのテンポもよく、飽きずに最後まで鑑賞できた。



正直、レースを題材にした映画でここまで感動するとは思わなかったし、なにかに挑戦したくなる気持ちが大いに湧き上がった。これまでにないジャンルの「傑作」といっても決して言い過ぎではない。感動と大迫力のレースシーンは必見だ。



室井大和 むろいやまと 1982年栃木県生まれ。陸上自衛隊退官後に出版社の記者、編集者を務める。クルマ好きが高じて指定自動車教習所指導員として約10年間、クルマとバイクの実技指導を経験。その後、ライターとして独立。自動車メーカーのテキスト監修、バイクメーカーのSNS運用などを手掛ける。 この著者の記事一覧はこちら(室井大和)
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