ジャニーズ会見「NGリスト」に見る“遺伝子レベル”に棲みついた悪しき慣習

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2023年10月06日 19:21  Techinsight Japan

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ジャニーズ事務所本社ビルに設置された看板も6日に撤去された(画像は『Google Earth (C)2023 Google』のスクリーンショット)
ジャニーズ事務所が10月2日に二度目の会見を行ったが、参加した記者からあれほど不満の声が上がり、ざわついた会見はそうそうない。前回の会見で問題視された社名の存続については、新社名「SMILE-UP.」として再スタートすることを発表した。東山紀之社長は「アップデートして新しい未来を切り拓く」と決意を示したが、残念ながら会見後に複数の記者の顔写真と氏名を並べた「NGリスト」が発覚した。ジャニーズ事務所は公式サイトで「リスト」は認識していたとしながら、作成や会見での指名については関与を否定している。しかしながら、記者会見の進行を振り返ると、何らかの力が働いたことを感じざるを得ない。“遺伝子レベル”にまで棲みついた悪しき慣習を断ち切ることは、もはや不可能なのか。

10月2日、都内で開かれたジャニーズ事務所の再会見には報道陣約300人が集まった。2時間ほど行われた会見は、まず東山紀之社長やジャニーズアイランドの井ノ原快彦社長、顧問弁護士たちから新体制などについて話があり、それに対する質疑応答の時間が設けられた。司会者から、時間が限られているため「一社一問」とすることを前置きしたうえで始まった。

司会者が「前列の左から3番目、男性で茶色の服の方」という風に座席の位置と服装など特徴を説明して指名する方法で進行した。すると、やがて記者の中から「質問させていただけないでしょうか?」と指名されないことに対して不満の声が上がった。周囲から「順番順番!」と窘める声が出たことからも、予定の順番ありきで指名している雰囲気が伝わってくる。司会者も重複して指名しないように神経を使うため、途中で「いろいろ、顔を覚えられなくなってきました」と漏していた。

そうやって数人が指名された後、指名されない記者から「これじゃ、茶番だと思う」と揶揄する声が上がったため、司会者は「いえ、まったく茶番ではないです」と否定した。その後も一向に指名されないことに業を煮やした記者が、自ら質問するも「ルールを守ってお願いします」と制され、「これは茶番ですよ」と返してざわつく場面があった。

指名された記者たちによる質問とそれに対する回答は、いくつかヤマ場があった。自身も長年のジャニーズファンだという女性ライターが「ジュニアの成長をファンが支える“応援システム”」を踏まえて「ジャニー喜多川さんが気に入った人が全員デビューしているわけではない」、「マスコミが推測だけで『ファンも性加害を容認しているのではないか』などと書くのはいじめではないか」とファンの思いを代弁したことは貴重と言えるだろう。

また、実話誌記者が「ジャニーズ事務所はマスコミ的に怖い事務所と言われている」と切り出して「退所したタレントに圧力をかけて干す」という噂に言及した。これには東山が「圧力などかけない。むしろ応援したいと思っている」と答えれば、井ノ原は「もし圧力をかけるようなことがあったら、どんどん言って欲しい。厳しい目で見てほしい」と実話誌に依頼した。

そして、最後に指名された女性記者による質問は「ジャニー喜多川氏による性加害行為は、少年たちを奴隷化するための手法だったような印象を受けた。それがタレント支配力の源泉になっていたのではないか。事務所側は黙認というより、必要不可欠な手法として利用したのではないか」という核心を突くものだった。東山、井ノ原とも若かった当時を振り返り「触れてはならない。立ち入ってはいけない感じだった」、「絶対的な支配の中にいたと思う。得体の知れない空気感を知っている」と答えるにとどまった。
 
もし、ジャニー喜多川の性加害問題と事務所の関係について追究するこの質問が会見の序盤や中盤で出ていたら、もっと紛糾したであろうことは想像に難くない。

会見の中で井ノ原が読み上げた藤島ジュリー景子氏の手紙には、ジャニーズ事務所はジャニー喜多川氏だけでなく「私の母であるメリーも権力を握っていた」と吐露されていた。ジャニー氏でさえメリー氏にお小遣いをもらう立場だったという。そうしたメリー氏による権力のもと、ジャニーズ事務所のタレントや社員は言いたいことを言えずに過ごしてきたのだろう。さらにマスコミにまでその権力が及んだわけである。

新社名「SMILE-UP.」として再スタートするにあたり、タレントや社員そして業界にまで“遺伝子レベル”に根付いた悪しき慣習を根絶させることは可能なのか。悪は一度断罪され、その後の行動を世間から注視されるようになれば、次は地下に潜る。そして人知れず繁殖を続けるのだ。

画像は『Google Earth (C)2023 Google』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 真紀和泉)
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