ホンダの新型「N-BOX」は乗ってわかるほど進化しているのか? 新旧を比較試乗

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2023年10月07日 12:01  マイナビニュース

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「見た目はあまり変わっていない?」とか「細かいところに工夫が盛りだくさんだ!」など、いろいろな評判を聞くホンダの新型「N-BOX」だが、肝心の走りはどのくらい進化しているのか。栃木にあるホンダのテストコースで新旧N-BOXを乗り比べてきた。


○日本でいちばん売れている軽、どこを変える?



N-BOXは今回のフルモデルチェンジで3代目となる。2代目N-BOXは2017年8月に登場し、すでに6年が経過している。2023年1月から6月の新車販売台数は、モデル末期でありながら11万2,248台を記録。2023年8月だけでも1万6,812台を売り上げた。この台数は軽自動車だけでなく、乗用車を含めてもダントツの1位だ。登場から6年が経過していることを考えると、驚異的な販売台数といえる。


ここまで人気なのにはいくつか理由がある。例えば、軽自動車規格を最大限活に活用し、広々とした室内空間を実現しているボディや、随所に見られる使い勝手のよさ、クセのないシンプルかつスタイリッシュなデザインなどだ。筆者の周りにもN-BOXオーナーが何人もいるし、街に出れば必ず見かけるほどで、中古車市場でもかなりの台数が流通している。


絶大な人気を獲得して庶民の足となり、すでに成熟し、完成しきっているN-BOX。フルモデルチェンジと聞けば何がどう進化するのか期待せずにはいられないが、実際に公開された新型N-BOXは、現行モデルのデザインをほぼ変えずに登場してきた。成熟が進んだモデルだけに、外観を大きく変えずに登場したことには納得できる反面、これならフルモデルチェンジをしなくても(ビッグマイナーチェンジでも)よかったのでは? とも思ってしまう。



ところが、実際に乗車して走り始めてみると、その進化をすぐに体感することができた。具体的にどう進化したのか、詳しく見ていくことにしよう。


○エンジン音の「うなり」が低減



まずはターボエンジンを搭載した新型N-BOXのカスタムから試乗を開始。車内に乗り込んだ印象としては、細かな部分の変更点はあるものの見慣れたN-BOXという印象だ。



はじめに高速道路を模したテストコースで合流するための加速を試してみた。すると、軽自動車にありがちなエンジン音の「うなり」がかなり抑えられていることに驚いた。乗用車と変わらないとまではいわないが、軽自動車にしてはかなりスムーズに100km/hまで到達できた。そのまま巡航していても、エンジンが無理をしている様子はない。



これにはエンジンの改良が功を奏しているようだ。キックダウン変速後の突き出し感の低減によるところが大きいらしい。従来であれば、アクセルを踏み込んだ瞬間にエンジンの回転が一気に上がり、突き上げ感を感じていた。その回転を、徐々に高めていくように制御することで突き上げ感を抑え、滑らかでスムーズな加速を実現したというわけだ。



加えて、スーパーハイト車にありがちな「ふらつき」が少ない。もちろん、風などの影響によって変わってくるが、高速走行中のカーブでも車体姿勢は安定していた。



以前、改良でふらつきを抑えたというミニバン(乗用車)に試乗したことがあるが、今回はそのときと変わらない剛性感が感じられた。これには、ボディに使われている鋼板のハイテン率の高さが影響している。「ハイテン」とは鋼板の「ひっぱり強度」のこと。簡潔にいえば、強度の高い部材を多用することで、操縦安定性、乗り心地、衝突性能を向上させているのだ。

さらに、フロアカーペットには遮音層フィルムを新たに採用し、車内の静粛性を引き上げた。これにより、ロードノイズなどの車外音をカットすることに成功している。さらに、サスペンションの締結を適正化することで、段差の乗り越え、路面のうねり、路面のざらつきなどをうまく低減できているようだ。


続いて、ノンターボである標準タイプの新型N-BOXに試乗した。さきほどのカスタム(ターボエンジン)と比較すると、アクセルを踏み込んだときのエンジン音は少し大きくなる。特に100km/hに達するまでのうなり音は、カスタムと比較するとわずかに大きい。



また、傾斜7%の坂道を登る際のアクセルレスポンスも、カスタムの方がスムーズに登っていく印象を受けた。標準タイプでも不満はないが、やはり乗り比べると明らかな違いを実感した。近所へ買い物に出かける程度で、ほとんど遠出をしないというのであれば標準タイプでまったく問題ない。ただし、高速道路を頻繁に運転する、あるいは舗装路でも上り坂が多い地域に住んでいるのであればカスタム(ターボ)がおすすめだ。

○移設されたサイドアンダーミラーがかなり便利!



市街地走行テストで利便性を最も実感できたアイテムがある。助手席側のドアミラーに取り付けられた「サイドアンダーミラー」だ。2代目N-BOXにも同じパーツがあったが、ミラーに映る範囲がこれまでとは全く違っていた。



2代目N-BOXのサイドアンダーミラーは、運転席から見るとクルマからかなり離れた左後方を映し出していた。位置が変わった新型のサイドアンダーミラーには、より車体に近い範囲、具体的には後席スライドドアから後輪にかけてのすぐ下側が映っていた。これが想像以上に便利で、「左折時はここを見たかった!」とうなってしまうような場所をピンポイントで示してくれていた。極論、「サイドアンダーミラーの確認だけで左折しても安全なのでは?」と思ったほどだ。左折時に左側方が見えずに不安を感じているドライバーは決して少なくない。その不安をこのサイドアンダーミラーが見事に解決してくれるだろう。


3代目となった新型N-BOXは、ユーザーのさまざまな意見を取り入れ、細かい部分をブラッシュアップし、より成熟した1台に仕上がっている。ボディ形状は、これまで通り丸目のヘッドライトが特徴的な「標準タイプ」と、専用ボディカラーや専用ホイールキャップによってポップなエクステリアに仕上げられた「ファッションスタイル」、精悍なフロントフェイス、テールゲートスポイラーなどが特徴的な「カスタム」の3種類から選択できる。



ひとつ残念なのは、ターボエンジン搭載モデルはカスタムでしか選べないこと。ターボの力強さはほしいが、カスタムのようなフロントフェイスは避けたいというオーナーは少なからずいるはずだ。この点を開発担当者に聞くと、「標準タイプでターボを選択するお客様がかなり少ないため、設定しなかった」とのこと。しかし、開発段階から「標準タイプでターボを選択できたほうがいいのでは?」との意見はあがっていたという。今後、オーナーの反響によっては、標準タイプでターボを選択できるようになるかもしれないとのことだった。今後のラインナップ拡充に期待したいところだ。


室井大和 むろいやまと 1982年栃木県生まれ。陸上自衛隊退官後に出版社の記者、編集者を務める。クルマ好きが高じて指定自動車教習所指導員として約10年間、クルマとバイクの実技指導を経験。その後、ライターとして独立。自動車メーカーのテキスト監修、バイクメーカーのSNS運用などを手掛ける。 この著者の記事一覧はこちら(室井大和)
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