羽田線ダブルデイリー再開のブリティッシュ・エアウェイズ、CCO一問一答

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2023年10月10日 16:01  TRAICY

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ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)は、2024年3月31日から始まる夏スケジュールで、東京/羽田〜ヒースロー線をダブルデイリー化する。

現在は週11便、10月31日から始まる冬スケジュールでは週10便を運航し、同日からは最新の個室ビジネスクラスシート「クラブスイート」を備えたボーイング777-300ERを投入する。

同社は今年、日本就航75周年を迎えた。これに合わせ、チーフ・コマーシャル・オフィサー(CCO)のコルム・レイシー氏が来日し、都内でメディアの質問に答えた。

――今後の日本路線の需要をどう見ているか。特に日本人の動きについて。

コロナ後、需要は回復している。現在(2023年夏)は週11便、共同運航のJAL便を合わせると、ロンドン〜東京線を週14便飛ばしている。特にレジャー需要が強く、徐々に出張需要も戻っている。今後の動向は景気の動き次第だが、ビジネス、レジャーとも徐々に回復していることは明言できる。

▲個室ビジネスクラス「クラブスイート」

――エアバスA350-1000型機を日本路線に入れる予定はあるか。入れるとしたらいつ頃の予定か。

今冬はボーイング787型機で週7便、クラブスイートを導入したボーイング777-300型機で週3便飛ばす。2024年の夏については週14便を計画している。ただ、現段階でどの機材を使うかは決めていない。季節ごとの実績、需要傾向、経済活動の動きなどに鑑みてスケジューリングの最適化を図る。

――今後の大西洋路線の需要はどうなると見ているか。

足元では大変いい実績を上げている。特にレジャー、プレミアムレジャーが強い。米国市場は対2019年比でもいい実績だ。米国市場のみならず、欧州路線も需要が高まっている。

大西洋路線の供給量は対2019年比100%の水準まで回復している。牽引しているのがレジャー、プレミアムレジャー。ビジネスクラス利用も回復しているので、2023年の残りの期間は注意深く見つつも楽観視している。

――2023年第3・第4四半期の予約状況は。運賃を割り引かなければならないような状況か。

第2四半期の営業利益は5億1,400万ポンドだった。業績発表の際に(親会社の)IAGは、今後も特にレジャー客が牽引して強さを維持していくという見立てを示している。航空運賃と業績は現段階ではいいバランスが取れていると考えている。

もう一言加えると、第1四半期の供給量は対2019年比88%まで回復している。コロナ後、徐々に需要が回復している状況をこの数字が示している。

――原油価格が上昇している。第3四半期、通期の需要と業績にどうような影響が出ると見ているか。

現段階で利益率を提示することは避けたいが、確かに原油価格は上昇している。今後の需要推移は経済環境によるところが大きい。とはいえ、現段階の予約状況とイールドに関しては満足している。

――ビジネス需要が回復途上ということだが、何をきっかけに弾みがつくと考えているか。今後も横ばい傾向が続くと見ているか。

ビジネス需要というのは出張でビジネスクラスを利用する顧客という定義だが、レジャーでビジネスクラスを使うプレミアムレジャーというカテゴリーもあり、重要な顧客だ。特に英国・日本では定年退職した富裕層がおり、彼らにプレミアムレジャーで利用してもらうのが重要になってくる。

出張でビジネスクラスを使うカテゴリーに絞って話すならば、その顧客の業界や業界を取り巻く経済環境、会計年度、予算の消化状況などの要素によって話は変わる。とは言うものの、特にロンドン〜東京線の出張需要は徐々に増えているという傾向は明確だ。IAGの業績発表の話の時にもあったように、今見えている状況が続くのではないかというのが我々の見立てだ。

――サステナビリティについて。ブリティッシュ・エアウェイズならではの他社に先駆けた取り組みはどんなものがあるか。

持続可能性は我々の取り組みの中でも最も重要な要素で、社員一同取り組んでいる。IAGの決算発表で述べたように、我々は2050年に二酸化炭素(CO2)排出実質ゼロを目指している。

できれば2050年よりも前に達成することを考えており、そのために代替燃料(SAF)を活用している。この取り組みを加速するために、(バイオ燃料メーカーの)フィリップス66の設備に投資するとともに、(新興バイオ燃料メーカーの)ランザジェットともパートナーシップを結び、SAFの確保を進めている。

これは中長期的な取り組みだが、短期的には機内の使い捨てのプラスチック容器の削減などにより、プラスチック使用量を45トン減らすことに成功した。ヒースロー空港などには電気自動車を配備している。

また、旅行中のCO2排出量を計算して可視化できる「CO2ラボレイト」というポータルも提供している。この仕組みを通して、排出量を削減するために、認定済みのクレジット(排出枠)や、CO2回収へのプログラムなどを乗客自身が購入できる仕組みも提供している。

――予約について。直販とOTA、日本の店舗型代理店の比率は。今後その比率をどうしていきたいか。

仰るとおり、我々は公式サイトを通したダイレクトセール、従来のビジネス・レジャー客を獲得するGDS(Global Distribution Systems、旅行関連の予約・発券管理システム)のチャネル、そして新しい技術としてNDC(New Distribution Capability、GDSの機能を強化した新規格システム)にも投資し、アマデウスとトラベルポートを活用している。内訳は各市場によって異なるので、具体的な割合を公表するのは控える。ただ、英国においてブリティッシュ・エアウェイズはブランド認知レベルが高く、日本などの海外市場と比べてダイレクトセールの割合が多い。

とはいえ市場によって状況は異なるため、パートナーと協業していくのは必要だ。例えば日本ならツアー会社やトラベルエージェントと協力し、グローバルキャリアとしてのプレゼンスをさらに強化していきたい。

技術的な投資も続け、ダイレクトセールのサービス強化するとともに、新しい流通チャネルであるNDCに関してもキャパシティとサービスの強化を図っていく。

――NDCは以前から取り組んでいるが、現在のところどのレベルまで進んでいるのか。また、どこまで拡大したいと考えているか。

NDCは一旦接続すると、全てのカスタマーサービス系の活動や販売をその中で行わなくてはいけない仕組みになっている。カスタマーサービス系については、現在は87%がNDCで完結している。残りの13%は何かトラブルがありコールセンターを経由している割合だ。

――日本就航75周年を迎えて、日本とのビジネスを展開する課題を改めてどう捉えているか。

我々の成長は需要に直結している。この需要というのは顧客セグメントやどういった理由で旅行したのかというところに繋がる。英国・欧州〜日本間では、ビジネス、レジャー客ともにとても重要なセグメントであると考えている。

これらの2つの重要なセグメントが今後どう推移するかは、経済環境の動きによるだろう。特に為替や消費者トレンドがどう動くかだ。イギリスでは日本がとても人気ある国になっているが、将来の成長に向けて、そのようなトレンドや消費者行動が今後も続いていくのか見定めなくてはいけない。英国、欧州、日本の消費者がどういった需要を示し、どのような消費者行動をするのかによる。

――ボーイング777Xについて。当初の開発スケジュールから遅れているが、デリバリー時期はどのくらいになる見込みか。また、開発の遅れによって機材計画にどのような影響が出るか。

機材は親会社のIAGが購入するので、我々は何とも言えない。航空会社というのは常にプランA、B、Cと代替案を持って行動している。コロナ後でサプライチェーンがまだ混乱しているので、特にメーカーなどのパートナーとは密に連絡を取り、現在の状況を互いにすり合わせている。事業上の影響も常に認識できるようにしており、その都度の状況に合わせて俊敏に適応していく。

――777Xは将来的にブリティッシュ・エアウェイズのフラッグシップになると思うが、今のフラッグシップに位置づけられる機材は何か。A380やA350か。

我々は多種多様な長距離用機材を保有しており、新たな機材もすでに発注している。常にルートごとに最適な座席配列や機材を考えている。それを決めるのは顧客のニーズと需要だ。我々はコンコルド以降は、これがフラッグシップだということは明言しないようにしている。

――現在のロシア・ウクライナ情勢下で、アジア路線にどうような影響が出ているか。

現在はロシア領空を飛ぶ権利がなく、スケジュールの変更を強いられている。その結果、ロシア上空を飛べる以前の状況と比べ、ヒースロー〜東京間では約1時間半長くかかっている。我々はロシアをコントロールできる立場にはないので、今の状況下で的確なルートを選び、安全な状況でフライトを提供している。

――ヒースロー〜東京線ではSAFを何パーセント使っているのか。将来は100%で飛ぶ予定なのか。

現在、ヒースローから東京向けでは10%。生産体制次第だが、目標は50%。ただ、50%以上になってくると今度はエンジンを変える必要があり、メーカーと要相談になる。

――空域の権利を得るために支払った金額はいくらか。

コストは開示できない。まだNATS(National Air Traffic Services、航空管制)との協議が進行中で、具体的な内容は話せない。

――2022年に7,400人の従業員を確保した意図は何か。また、パイロットの確保については特別なスキームがあるのか。

2022年に採用した人数は7400人ではなく、1万1000人。これは会社が始まって以来の規模だ。座席供給量をコロナ禍以前の水準に戻す努力をしている中、各部門の人員を強化する必要があった。

パイロットの採用については、パイロット・キャンディッド・スキームというプログラムを用意している。これはパイロット候補のトレーニング費用をブリティッシュ・エアウェイズが負担する仕組みだ。DEI(Diversity, Equity and Inclusion)の観点だけではなく、これまでパイロットのプログラムに入りにくいと感じている人も入れるような仕組みにした。このスキームに関しては誇りを持っている。

――70周年の際に実施したような運賃キャンペーンは実施しないのか。

座席が順調に売れているため、キャンペーンは今回計画していない。とはいえ機内では9月・10月に特別な仕組みを設けている。例えば1960年代のフライトを想起させるような新たなメニューを提供したり、山崎10年やアサヒビールを提供したりしている。

――2023年以降の日本市場のトレンドをどう予測しているか。

日本の需要動向、マーケティングについては東京事務所の営業チームに任せておきたい。

――2022年はヒースロー空港のグランドハンドリングが混乱していたことがあったが、ブリティッシュ・エアウェイズではハンドリングのキャパシティは十分か。

先ほど申し上げたように、2022年に新たな従業員採用を行っていたので、現在のリソースは十分にあると考えている。ただ、特に北ヨーロッパで管制塔の問題が生じている。フランクフルト、アムステルダム、シャルル・ド・ゴール空港などでは管制塔絡みの困難が残った状態だ。また、サプライチェーンでなかなかスペアパーツが手に入らないというのも一つの課題になっており、対処しなくてはいけない状況にある。

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