「学校で英語を勉強したけど喋れない」を克服して、その先に進むには? ――バイリンガルニュース Mamiさんにきく、英語教育の話

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2023年10月12日 10:11  MAMApicks

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人気Podcast番組「バイリンガルニュース」Mamiさんにきく、子どもの英語教育についてのインタビュー後編。英語全般に対するコンプレックスやハマりがちなパターン、継続するためのマインドセットなど、現役の語学学習者だからこその説得力ある意見は、子どものみならず大人にも十分通用するはず。

【記事前編】
「ネイティブも最初はフォニックスからスタート。英語学習はそこからです。」 ――バイリンガルニュース Mamiさんインタビュー
https://mamapicks.jp/archives/52406146.html


■「学校で英語を学んだけど喋れない」は単純にそういう勉強法だっただけ。システムの問題であって自分のせいではない
―― 周囲を見ていると英語教育に焦りを感じているママパパが多いんですが、独学で英語を学んでバイリンガルになったMamiさんから何か声掛けしたいことってありますか?

Mami:うーん、すごく難しいですけど、子どもにペラペラレベルまで英語を話せるようになってほしいのか、落ちこぼれない程度に、受験のような枠の中で世渡りできるレベルでいいのか、もしくはその両方なのか、ゴールが何かによりますよね。

―― 「早く始めた方が学校で得」なのはスポーツだって楽器だってプログラミングも同じだけど、英語ってとりわけコンプレックスを抱きやすい材料になっていますよね。コンプレックスの根深さが違う気がします。

Mami:同じ語学でもフランス語ができなくても私たちは大してコンプレックスを抱かないので、英語を「学校で勉強したのに喋れない」ことが大きいですよね。

単語帳も覚えた、受験でも英語の試験を受けたのに喋れない。だけどそれはシステムの問題であって、勉強の仕方や目標がずれていたから喋れるようにならなかった、と気づく機会はあまりないじゃないですか。今、息子が通っている現地校でも、「自分も学校で英語を勉強したけど、喋れるようにならなかったから、子どもがペラペラになるのを想像できない」って言う親御さんがいるんです。だけど、現地校で学んでいる内容は、日本の学校での受験対策ではないし、この年齢、この環境で英語で生活していれば間違いなく喋れるようになります。

一方で、もう少し年上、現地校に小学生や中学生から通いだして、「子どもだから大丈夫、脳が若いから何もしなくてもすぐ喋れるようになる」ってある意味なめているように見える親もいます。いきなり現地校に放り込まれて、先生の言っていることも分からなくて、友だちとコミュニケーションできないって思春期の子どもにとってはすごくストレスですよね。

このふたつは相反しているけど、どちらも根っこの部分は、英語の本当の難易度を測り切れていないってことだと思います。学校や受験であれだけ勉強したのに成功体験に繋がっていないわけだから、当然迷子になりますよ。それも本人のせいじゃなくて、システムの問題ですけどね。

■英語学習者あるある「何が分からないのかが分からない」。足りないのは語彙?文法?リスニング?分析できれば進みやすい
―― Mamiさんを筆頭に、第ニ外国語として英語を習得した人は必ずと言っていいほど、スピーキングは実技であって、作業量がものを言うと力説していますよね。私もオンライン英会話を日課にしていて、頻度と継続がすべてだと実感していますが、当然のことながらこのことを学校では教わらないです。

Mami:大学生の頃、英会話スクールで講師のバイトをしていた時、すごく真面目に通っているけど、全然喋れるようにならない生徒さんもいました。3年くらい通っていても、「週末何していたの?」と英語できくと何も答えられないレベルなんだけど、テキストだけは進んでいくんです。

「あと1年くらい通ったらペラペラになりますかね?」ってたずねられたけど、言語学習において自分は今どこが弱いのか、具体的に何を改善すれば上達するのかを把握できておらず「何が分かっていないのかが分かっていない」ってことがよくあります。

英語を聞いて意味が分からないって、いくつか理由があるわけですよね。そもそも単語の意味が理解できない=語彙が足りていないのか、文法が頭に入っていないのか、文字にして読んだら理解できるけど、リスニングに慣れていないから追いつかないのか、で必要なスキルが変わってきますよね。単語は理解できるなら単語帳は一旦置いておいて、聴くことに注力してみようとか。

―― 当時の勉強の仕方がよくなくて、喋れないがゆえの苦手意識があると、子どもに漠然と「喋れるようになってほしい」という気持ちも強くなりそうですね。

Mami:実際、自分自身が日本語をどう習得したかというと、赤ちゃんの時からひたすら周りのフィードバックを受けているわけですよね。人の言うことを真似て、カラダで一言ずつ覚えてきたわけじゃないですか。

赤ちゃんが机の前で「この活用がどうこう」とか考えたわけじゃないし、私たちも助詞の「てにをは」について、文法的に説明できないとしても、おかしいときは気づきますよね。散々正しいものを聞いてきて、パターン認識しているから。さらに、漫画を読んだりテレビを見たり、友だちと喋ったりして習得してきているわけですよね。

ネイティブの先生と英語を喋る機会はすごく大事だと思いますが、英語が母国語の先生は、日本人がなぜここで躓くのか分からない、説明できないという方が結構います。「英語」を学問として習得したわけじゃないからですね。日本人が必ずしも日本語を教えられるわけではないように。

■文法や規則性に囚われすぎると進まない。「スピーキング=実技」だから喋りながら学べばいい
―― 私たちも、日本語学習者に対して、この場合、「〜を」じゃなくて、「〜へ」って言うんだよってなかなか説明できないですよね。

Mami:ただ日本人の英語学習者の傾向として、「なんで?」を気にしすぎて、そこに時間を割きすぎる人が多いというのはあります。「何でここの前置詞は”in”になるんですか?どういうときに”on”になるんですか?」という風に。そこをまったく気にするなと言いたいわけじゃないけど、囚われすぎると先に進めなくなります。日本語も「1本、2本、って何で本という数え方なの」って言われても「何で、じゃなくてそういうものなの」ってパターンですからね。

―― 「いっぽん」「にほん」と来て、何で次が「さんぼん」なの?って音便変化も限りないですしね。

Mami:仕組みや構造を全部理解して完璧に覚えてからじゃないと喋ってはいけないわけじゃないので、喋りながら学べばいいんですよね。これも教育システムの弊害かもしれないけど、「まだ自分は喋るターンじゃない」って6年間過ごすことになってしまいますから。

―― 私もオンライン英会話をおすすめすると「喋るのは自信ないから、独学で練習してから始めてみる」って言われたことがあります。

Mami:逆ですよ(笑)。実技という意味では、サッカーをするのに「サッカーのやり方」って本を読んで知識を得たところでできるようにならないですよね。実際にボールを蹴って、フィールドに出てできるようになるじゃないですか。語学、日本語にしたって私たちも大人になっても毎日のように日本語を勉強し続けていますよね。ニュースで新しい言葉を知ることもあるし、言葉もずっと進化しているし。

―― 知らず知らずのうちに実践を続けているんですよね。知らない語彙とか表現とかいくらでもあるし。日本語話者だって日本語を完璧には習得できないのだから、英語だってそれでいいって思えるといいだろうな。

Mami:そうそう。「ら抜き言葉」とか、従来は文法的に間違いとされたような表現が、英語にも結構あるんですよ。ネイティブだってスペルが間違っていることもしょっちゅうだし、知らない語彙がたくさんあるんです。「完璧になる」ってあり得ないです。

■ネイティブも途中で間違いながら喋っているし、そんな難しい単語も話題ばかり話していない
―― 私は「バイリンガルニュース」を聴いていると「あれ、今言おうとしたことを言い直したのかな? 途中まで文章を組み立てたのに、その後、違う形で組み立て直しているぞ」って気づくようになりました。教科書に載っている文章ではこういうことなかったなと。

Mami:そのとおりです。教科書の文章だけを見ていると、誰もがよどみなく、最初から文章を組み立てて、台本やスピーチの原稿を読むみたいに話していると思うかもしれないけど、話しながら組み立て直すことはしょっちゅうありますよ。そういう意味で、Podcastやリアリティショーなど、ネイティブのリアルな会話を聴いてみるのはお勧めです。

映画『ジュラシック・ワールド』について会話するMami&Michael。使われているのは平易な単語がメインだ。

―― 日本語もそうですよね。「昨日、〇〇に行ったんだけどさ〜、××が違くて、あっ、じゃなくて△△が〜」みたいに、主語はないわ、言葉は間違っているわ、急に話が変わるわ、みたいな。教科書には載っていないだろうけど、話し言葉はそうですよね。

Mami:意外とネイティブはそんな難しい単語を使ってないんですよ。番組のリスナーからは書き起こしテキストを読んだときに「意外と簡単じゃん」って意見をよくもらいます。聞いて分からないと、すごく難解な話をしているように思うけど、そんな高尚な言葉や話題を喋っているわけではないんですよね。

―― 日本人も別に、「議会で〇〇の法案が審議の結果、可決されました」みたいな話ばかりしているわけではないですし……。「子どもがイヤイヤ期でさー」みたいな、もっと普通の話をしていますよね。実態が分からないまま勝手にハードルを上げているところもあるのかな。

Mami:言語の習得って全然キラキラじゃないんですよね。想像するよりもずっと地味だし、時間もかかるから簡単ではないけど、子どもが嫌にならないよう、子どもの吸収力を無駄にしないように効率的に取り組めるといいですよね。始めるなら、とりあえずフォニックスからで……!

▼バイリンガルニュース
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■プロフィール
Mami (マミ) :1986年東京都生まれ。上智大学比較文化学部卒業。外資系PR会社やコンサルティング会社に勤務し、2013年から友人 Michael とPodcast「バイリンガルニュース」を始める。著書に『MY JOURNAL 英語で日記を書こう』(ポプラ社)。現在はロンドン在住。フリーランスで仕事をするかたわら毎週Podcast番組を制作している。

真貝 友香(しんがい ゆか)
ソフトウェア開発職、携帯向け音楽配信事業にて社内SEを経験した後、マーケティング業務に従事。高校生からOLまで女性をターゲットにしたリサーチをメインに調査・分析業務を行う。現在は夫・2012年12月生まれの娘と都内在住。

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