最先端ICTを地方自治体でどう生かす? - 埼玉県白岡市で職員向けDX体験会

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2023年10月19日 11:01  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
少子高齢化による労働力不足を受け、自治体のDX推進が加速している。だが最先端のICTに触れる機会は決して多くなく、職員の理解もなかなか進まないのが現状だ。そんななか、埼玉県白岡市は、NTT東日本とともに市職員向けのDX体験会を開催した。


○地方自治体がDXを実現するための課題とは



コロナ禍によって人々の働き方に変化が訪れ、多くの自治体がDX推進を掲げている。特に注目されているのはAIやVR、IoTといった最先端技術だ。これまではICTが主に情報や交流といった分野をカバーしてきたが、これら最先端技術によってよりアナログな領域のDXが可能となってきた。こういった技術を活用し、少人数でも効率的なオペレーションを実現することこそ、多くの自治体が目指すところだろう。



一方、これまでの概念にない最先端技術だからこそ、その可能性は実際に利用してみないとわかりにくい。加えて、DXを必要とする現場ほどそういった最先端技術に触れる機会も乏しくなりがちだ。



埼玉県白岡市はこのような現状を変えるべく、ICTに対し「どんどん使ってみる」というコンセプトを掲げ、さまざまな取り組みを行っている。その一環が、9月に開催された市職員向けのDX体験会だ。



白岡市 経営企画部 DX推進課 主任の佐久間裕太氏は、「最先端技術に触れる機会の少ない各業務の担当職員に実際に触れていただいて、自分たちの業務に生かしたり、住民のみなさまにどう展開するかをイメージしてもらったりするのが目的です。ただ、住民の方が全員デジタルが得意かというとそうではありませんので、苦手な方にはフォローアップの対応も考えなければなりません。NTT東日本さんの提案を精査させていただき、白岡市の発展に繋げていければと思っています」と、今回の体験会の目的について語る。


NTT東日本 埼玉支店はこの取り組みを全面的に支援し、同社の持つ選りすぐりの最先端技術を紹介した。



NTT東日本 埼玉事業部 設備部 設備企画部門 設備企画担当課長の小山慎也氏は、「NTT東日本はいま、地域を支えるソーシャルイノベーション企業への転換を図っています。白岡市さまにもこういったDX技術をまず体験いただき、白岡市全体の住みやすさや価値が向上するきっかけになればと思いました」と、取り組みの意図について述べた。


○最先端技術を用いた6つのソリューション



DX体験会で紹介された最先端技術のソリューションは大きく6つ。職員は部署ごとにグループを組み、それぞれのブースで説明を受けていった。



「仮想空間を用いたニューノーマルの実現(メタバース×マーターポート)」のブースでは、インターネットを利用した3D仮想空間の体験と、構造物を撮影し3D化する技術の紹介が行われた。とくにマーターポートはこれまで紹介された例が少なく、多くの職員から注目されていた。


「シン・オートコールを活用した防災無線の補完、避難活動のサポート」のブースでは、AIによる音声読み上げ機能を活用した防災・防犯・みまもりの活用事例を展示。スマートフォンを持っておらず固定電話を利用している住民にも対応できる点が、職員に響いていたようだ。


「センシングによる現地派遣の省力化 (IoT)」ブースでは、実際にIoTセンサーやスイッチが展示され、その場でデモが行われた。アイデアひとつでさまざまな活用が期待できるということもあり、職員の間でもさまざまな使い方が話し合われていた。

「画像検知技術活用による安全サポート (AI)」の展示では、車両の停止・不停止をAIが自動判断し、安全性を確保する事例が紹介されていた。地方では仕事の上でも生活の上でも自動車が欠かせない足となっているだけに、多くの職員が実体験と重ね合わせて説明を聞いていた。


「VRを活用した疑似危機体感 (VR)」ブースでは、職員が実際にVRを装着し、擬似的な作業や危機状況の体験を行っていた。実際に発生すると大事故に繋がる現場をVRでリアルかつ安全に体験できるコンテンツは、新人の研修や育成、作業者の訓練に役立つと、とくに反響が大きかった。


「映像配信×ドローン×αを活用した業務効率化・PR活動」の展示では、ドローンの実機や映像配信時の画像合成に用いるグリーンバックとともに活用事例が紹介された。職員からは公共設備の点検や災害時の活用など、市役所勤めならではのアイデアが話し合われていた。


○体験した各部署の職員はどう感じた?



NTT東日本の最先端技術を一挙に体験した、白岡市の職員。今回のDX体験会でどのような学びを得て、どんな活用を思い浮かべたのだろうか。現場の声を伺ってみたい。



白岡市 安心安全課 防災担当の武内麻里奈氏は、「VRとメタバースはすごく楽しかったですし、業務にも繋がると感じました。埼玉県はありがたいことに災害が少ないのですが、そのぶん災害の経験が乏しいので、それを市役所で仮想体験できる意味は大きいと思います。災害時にはドローンで被害状況や避難経路を確認したり、要救助者にドローンからの音声で案内したりと言った使い方も将来的にできればなと思います」と、大規模災害を想定したアイデアを語る。



「DXというとお年寄りには『難しいから』と反応されがちですが、そういった方の助けになる仕組みが多いんじゃないかと感じました。それから子育て世代もですね。DXを進めればみんなの生活をより良くすることができると思うので、市民向けの体験会があったらぜひ参加してほしいですね」(白岡市 武内氏)


白岡市 市民課 戸籍担当の藤堂佳連氏は、「婚姻届や出生届を出された方に、白岡市のマスコットキャラクターと写真を撮ってもらっているのですが、VRや映像配信技術を組み合わせてリアルな合成ができると面白いと思いました。商工観光課などでは、お祭りでドローンや画像検知技術の安全サポートが役立つと感じました。私も最先端技術には疎いのですが、実際に体験してみるといろいろできるようになるんだなって」と、市民の日常生活での活用を提案する。



「今後、さまざまな課からDX体験に基づいた新しい取り組みが出てくると思います。白岡市が他の市町村に先駆けてすごいことをやってるんだと市民の方にも思っていただけるとうれしいです」(白岡市 藤堂氏)


NTT東日本の小山氏は、最後に今回の体験会を次のように振り返り、抱負を述べた。



「今回のリアルな体験が、業務改善を考えるなかで新しいアイデアのきっかけになればと。実際、職員の方からは『学校や公園、河川や道路の点検にドローンを使いたい』『有事の際にIoTを使ってセンシングしたい』といったお話をいただきました。まだまだこういった実際の活用例は少ないので、ぜひ埼玉発で実現してほしいですね。我々も、市民の皆様にどう感動を与えられるかを一緒に考えていきたいと思います」(NTT東日本 小山氏)



※組織名称や役職などは取材時のもの(加賀章喜)

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