日本初公開映画ほか「女性と映画」を特集、きょうとシネマクラブ発足

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2023年10月23日 18:02  cinemacafe.net

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「きょうとシネマクラブ」ポスター
京都シネマと自主上映や配給などを行うグッチーズ・フリースクールが、月に一度の映画上映イベントを行う「きょうとシネマクラブ」を発足し、毎月1週間限定で、未公開映画や視聴困難な作品でありながら、こんな時代だからこそ見たい映画を上映。12月8日(金)から開催される第1回イベントでは「女性と映画」を特集する。

-きょうとシネマクラブについて-
コロナウイルスの感染拡大などによる映画観劇人口の減少や、様々な時代の変化でミニシアターの経営はますます苦しくなり、また、知名度が低い映画や小規模な作品は、その内容にかかわらず、上映される機会がだんだんと減っている現在。

そんな厳しい状況だからこそ、映画館の個性を活かした独自のプログラムとミニシアターならではのチャレンジングな企画を始めようと思い立ち、京都シネマとグッチーズ・フリースクールがタッグを組んで「きょうとシネマクラブ」を発足。

規模や知名度、新作、旧作にこだわらず、いまこそ見たい映画作品を上映し、これまであまり語られることのなかった、あるいは途切れてしまった映画の可能性を楽しく考えていく、そんなシネマクラブを目指す。

そんな「きょうとシネマクラブ」の第1回目の特集は「女性と映画」。女性監督の作品だけでなく、女性と関連が深いサブジャンル映画も公開する。

12月8日-12月14日『ラブレス』
『ハート・ロッカー』で史上初の女性アカデミー賞監督賞受賞者となったキャスリン・ビグロー監督(モンティ・モンゴメリーと共同監督)の長編映画デビュー作品かつ、『アメリカン・サイコ』『スパイダーマン』でお馴染みのウィレム・デフォーのデビュー作を日本劇場初公開。現代アーティストと映画監督の2つの顔を持つビグロー監督にとって、本作『ラブレス』はアートの世界と映画製作のギャップを埋めるつなぎのようなものだったと後のインタビューで語っている。

1959年のアメリカ南部の閉鎖的な田舎町を舞台に、突然現れたヴァンスたちという異分子が、住民たちの平凡な日常に不穏な緊張感を漂わせていく様子が描かれる。ウィレム・デフォーは主人公ヴァンスを演じている。

不良バイカー集団のリーダーとして強い男性像を演じながら、内面の動揺を繊細に演じた。凶暴性と繊細さを合わせ持ち、独特の色気を放つ(悪としての)キャラクターはその後のウィレム・デフォーの代表的な特徴の1つとなり、『ストリート・オブ・ファイヤー』(1984)や『L.A.大捜査線/狼たちの街』(1985)でも圧倒的な存在感を示すこととなった。

町の娘テレナ役のマリン・カンターはどこか影のある少女を好演。その後、ロバート・ダウニー・Sr監督のコメディ作品『ストレンジ・ピープル』(1990)への出演を最後に俳優を引退。本作は数少ない出演作の1つとなった。

1月5日-1月11日『青春がいっぱい』
全寮制カトリック女子校を舞台とした思春期にある女性の心の機微を描いた『青春がいっぱい』。監督のアイダ・ルピノは多くのTVシリーズと映画で監督を務め、女性として史上2人目の監督組合入りを果たした。

1930年代にイリノイ州シカゴ近郊のカトリック校で過ごした自身の高校時代を描いた、ジェーン・トラヒーの1962年のベストセラー「Life with Mother Superior」が原作。入学当初は修道女たちがなぜその道を選んだのか理解ができないメアリーだったが、彼女たちの愛や寛大さ、献身の心に触れ次第に感化されていく様子が描かれる。

ヘイリー・ミルズは、豊かな感情表現で思春期の微妙な心の変化を瑞々しく演じた。アカデミー賞子役賞を受賞するなど、それまでは子役スターとしてディズニー映画への出演が多かったヘイリー・ミルズにとって、本作はコメディ俳優としての出発点となった。

修道院長役のロザリンド・ラッセルは、ゴールデン・グローブ賞を5回、トニー賞を受賞するなど映画と舞台の両方で活躍した俳優。自身もカトリック学校に通った経験をもち、厳しくも愛のある修道院長を好演している。

2月『ガールフレンド』
ミシェル・ウィリアムズがお気に入り映画のひとつとして挙げ、都会派女性映画として伝説的な作品として名高い『ガールフレンド』。ニューヨーク出身の監督・俳優であり、フリーランスのカメラマンとしても活躍、数多くのドキュメンタリーの製作を手掛けたクローディア・ウェイル監督による本作は、グレタ・ガーウィグやレナ・ダナムなど多くの女性映画製作者らに多大な影響を与え続けている。

ヴィッキー・ポロンとの共同脚本は、ウェイル監督自身の体験に基づくもの。自身もカメラマンとして活動していた時期があるなど、主人公スーザンと重なる点も多い。夢を追いかけながらも、周りの同年代女性の成功や結婚が気になってしまう揺らぐ心の内をリアルに描いている。

資金不足のために完成までに3年の月日を要するなど製作には困難が伴ったが、公開後は女性の友情や大都会で成功を夢見る若い女性をテーマとした作品の先駆けとして高い評価を得る。1978年、本作はロカルノ国際映画祭で銅豹賞(最優秀女優賞)、トロント国際映画祭でピープルズ・チョイス賞を受賞した。1979年、ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞でダヴィッド特別賞を受賞。同年、ゴールデン・グローブ賞と英国アカデミー賞にもノミネートされた。

3月『天使の復讐』
『プロミシング・ヤング・ウーマン』を彷彿とさせる、レイプリベンジもののカルト作品。監督はニューヨーク・ブロンクス出身の鬼才アベル・フェラーラ。性犯罪の被害者となった主人公が男への復讐を果たしていく。

当初は自分を守るために仕方なく殺人を犯す主人公であったが、徐々に殺しへの強い意志をもって街に繰り出すようになる。その姿は男を殺すという使命を背負った戦士を思わせる。内面の変化を表すように、気弱で化粧っ気のなかった主人公が、バッチリと化粧をして刺激的な服装に身を包んだ姿は、まるで別人のような美しさを放つ。

また、自らの正義を果たすために殺人をも犯してしまうという人物像は、本作がインスパイアを受けているとされる『狼よさらば』(1974)、『タクシードライバー』(1976)に共通している。エキゾチックな顔立ちで独特な存在感を示すゾー・タマリスは当時17歳で、本作がデビュー作。

彼女はフェラーラ監督の実生活のパートナーでもあり、俳優のほかに音楽家・政治活動家としても活動していたが、その後、深刻な薬物中毒となり、37歳という若さでこの世を去った。作品には劇場公開時に厳しい批評が多かったものの、現在ではアンダーグラウンドやインディペンデント映画のファンの間で高く評価されている。

「きょうとシネマクラブ」第1回「女性と映画」は12月8日(金)より京都シネマにて上映。
料金:1,500円 ※サービスデー適応外




(シネマカフェ編集部)
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