『呪術廻戦』虎杖を苦しめた脹相が扱う術式「赤血操術」の強さとは?

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2023年11月02日 07:00  リアルサウンド

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 五条悟をはじめとする呪術師と夏油傑が率いる呪霊たちの総力戦「渋谷事変」。アニメ第37話「赫鱗」で繰り広げられた主人公・虎杖と呪霊・脹相による血みどろの戦いも記憶に新しい。


参考:『呪術廻戦』虎杖vs脹相でさらに過熱! 原作を“再解釈”したド迫力バトルの凄さを考察


 虎杖を苦しめた脹相が扱う術式・赤血操術は、御三家の一角・加茂家に代々と継承されてきた術式であり、呪術高等専門学校の京都校に通う加茂憲紀も扱う術式だ。本稿では脹相や憲紀が扱う赤血操術について考察したい。


攻守のバランスに優れた「赤血操術」


 加茂家に代々と伝えられてきた術式・赤血操術。五条悟の生家・五条家相伝の術式「無下限呪術」と比べると派手さは劣るかもしれないが、赤血操術は攻守のバランスに優れた術式だ。


 赤血操術の技として、初速に優れた遠距離攻撃「穿血」 や自身の身体能力を向上させる「赤鱗躍動」、縄上に凝固させた血液で対象を拘束させる「赤縛」が存在する。


 とくに渋谷事変における虎杖vs.脹相の戦闘では、飛び道具をもたない虎杖を遠くから「穿血」で牽制しつつ「赤鱗躍動」で強化した体術で近接戦闘にも対応するなど、赤血操術を巧みに扱う脹相の姿が描かれた。虎杖の耳に装着されたメカ丸も赤血操術を“近・中・遠 全てに対応できるバランス力(りょく)ダ”と評している。


 そんな赤血操術の弱点として失血時には術式を使用できない点が挙げられる。血液を媒介とする術式であるため、自身の血液が不足している際には「穿血」をはじめとする強力な技を失うこととなる。


 ただ京都姉妹校交流会で伏黒恵と対峙した加茂憲紀は、輸血用の血液を常備することで失血の対策をしている。また脹相は呪力を血液に変換できる特異体質であるため、呪力が存在する限り失血しない。


 遠距離から近接戦闘まで柔軟に対応することができ、弱点の対処法が明確に存在する。赤血操術はエリート呪術師たちが集う御三家の一角・加茂家の名に恥じない強力な術式だ。


※以下、原作コミックス15巻以降、アニメ第37話以降の内容を含みます。


家族のために赤血操術で戦う脹相と憲紀


 作中で赤血操術を披露する脹相と加茂憲紀。ふたりは扱う術式のほか、家族想いという点も共通している。


 脹相は9体の呪物「呪胎九相図」の長男として、弟を大切に想う姿が数多く見られる。呪胎九相図の2番目・壊相と3番目・血塗が殺害されたときには、手に持っていた人生ゲームのコマを破壊し怒りをにじませた。また自身に虎杖との血縁関係があることを知ると、脹相は“全力でお兄ちゃんを遂行する”ために夏油傑たちの前に立ちはだかった。


 弟想いの脹相に対し、憲紀は母親想いの人物だ。憲紀の母は加茂家の中で虐められており、自分が憲紀の邪魔になることを危惧し加茂家を出た過去がある。


 そのため憲紀は母親に喜んでもらうために自身の実力を広く知らしめたいという思いがあり(参考:『呪術廻戦 公式ファンブック』)、京都姉妹校交流会では“私は加茂家嫡男として振る舞わなねばならない/母様のために”と心情をあらわにしている。


 兄として弟を大切に想う脹相と、息子として母親のために生きる憲紀。家族を想いながら赤血操術で戦うふたりの姿に胸を揺さぶられつつ、見方によっては血縁に縛られながら生きているようにも映ってしまう。まるで血液で対象を拘束する「赤縛」のように。


 ただ、たしかなのはふたりは血縁から生じる責任や重圧を己の力に変えていることだ。


 京都姉妹校交流会にて、伏黒の術式によって窮地に立たされた憲紀。そのときに彼は母親との過去を回想しながら“私は/負けるわけにはいかないのだ!!”と奮起し、形勢を立て直した。


 渋谷事変のあと、弟想いの脹相と自身の兄を見下す禪院直哉が対峙した第142話「お兄ちゃんの背中」。両者の実力が拮抗した戦いのなか、勝利を収めた脹相は次の言葉を残した。


“何故俺がしぶといのか聞いたな/教えてやる 俺には手本がない 何度も何度も間違える/それでも弟の前を歩き続けなければならん/だから俺は強いんだ”


 脹相の言葉は彼が兄として背負う責任を痛感できるものであろう。しかし弟想いの脹相が兄を見下す直哉に勝利した結果から、兄としての重圧が脹相の強さに還元されていることも感じ取れる。


 血縁から生まれた責任を背負いつつ、その重圧を己の力に変えて戦う。血縁に縛られながらも自身の血を武器として戦う脹相や憲紀の姿から、赤血操術は負の感情や呪いを己の力に変えて戦う『呪術廻戦』らしい術式だと言えよう。


 第146話「死滅回游について」で旅立つ虎杖を見届けた脹相。虎杖に笑顔で“…死ぬなよ”と声をかけ、そのあと自身の目頭を手で押さえた。これまで弟の前を歩き続けてきた脹相だからこそ、虎杖の背中を目にして、胸の内からこみ上げたものがあったのかもしれない。言うまでもないが、それは血液とは異なる、とても透き通ったものであったはずだ。


(文=あんどうまこと)


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