稲垣吾郎が抱く“欲”「昔ほどギラギラしなくなってきている」も、大切にしている唯一の欲深さ

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2023年11月10日 05:00  週刊女性PRIME

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稲垣吾郎(49)撮影/廣瀬靖士

「僕は小説や漫画を“もし映画になったらどうなるかな”と想像する読み方を結構します。海外の映画も“日本でリメイクしたらどうなるかな”と考えながら見たり。そして“そのとき、自分に出番はあるかな”とか。

 そんな“ごっこ”が楽しかったりするんですが、『正欲』については映像化は難しいと思ったので、そんなふうに考えずに原作を読んだ記憶があります。この作品を映画化するというチャレンジは、引き受ける以外には何も考えがなかった。衝動的にやりたいという思いが強かったです」

原作・朝井リョウの同名小説、稲垣吾郎主演で映画化

 原作は、46万部超の朝井リョウの同名小説。主演の稲垣吾郎は、検事・寺井啓喜を演じている。抱えているものや生活環境、性的指向などが異なる5人が少しずつ、少しずつ交差し、その先にあるものは。

「この作品を語るにおいて難しいんですけど、啓喜はマジョリティー側の人間で。今まで自分は少数派やちょっと癖のある役のほうが多かったので、“こっち側の人間”を演じるというのは意外だったし、俳優としての挑戦だなとも思いました」

 不登校の息子が、小学生ユーチューバーとして生きがいを見いだすも、まったく理解ができない啓喜。その杓子定規な思考は家族だけでなく、検事として対面する“生きづらさ”を抱える人たちの尊厳をも無意識に傷つける。

「最初は自分が正しいって思っていたのがいつしか揺れ動いて、グラついて。心が不安定になっていく感じは、演じていていちばん大切にしていたポイントかもしれないですね。

 決めつけてはいけないんですが、大半の人がまず最初に僕の目線でこの物語を見るんじゃないかと思っていて。人間って二面性どころじゃなく、いろんな面があって当然だし。人に言えないことがあって当然だし。何が正しくて、何が普通で、何が普通じゃないのか。受け取った観客の方々がそんな気持ちになってくれれば正解だったのかなと思います

スマスマ以来となった新垣結衣

 本作では新垣結衣と共演。顔を合わせたのは『SMAP×SMAP』でのゲスト出演以来で、芝居においては初共演だという。新垣が演じているのは自分自身を押し殺すように暮らす、広島のショッピングモールの販売員・桐生夏月。その人生は啓喜とクロスするはずもないように思われたが……。

「新垣さんが夏月役だと聞いたときは、意外だけどすごく腑に落ちました。“おまえ、何目線だよ”っていう話ですけど(笑)。新垣さんは太陽のような輝きを放つ“ガッキー”なイメージがありますが、でもお芝居をしているとナイーブさや陰のようなものが僕の中で勝手に見えて」

 共演シーンは少ないが、とても印象的なものになっている。

「現場でお会いしたとき、失礼ながら一瞬、誰かわからないくらい役になりきられていて。まとう雰囲気っていうのかな? たぶん、人って姿形よりもその人の空気で認識するときもあると思うんですが、まさにそんな感じでした」

 現場で話す機会はあまりなかったそうだが、最近、岸善幸監督を交えて3人で鼎談をしたという。

「僕のラジオ(『編集長 稲垣吾郎』文化放送)をたまに聴いていると言ってくれて。うれしいですよね。調子に乗って“今度、ゲストで出てください”って言っちゃいました(笑)」

どんなこともひと通り経験して、見ておきたい

 “傑作か、問題作か”と銘打たれた本作。稲垣が抱える欲について尋ねてみると、

何でしょうね? 3大欲求もそうですけど(笑)、やっぱり昔ほどにはギラギラしなくなってきていますよね。仕事に対する欲、人間関係に対する欲。あとは、生活においての食欲や物欲とか。それは当然の流れではあるけど、それがなさすぎるのも“まずいな”とは思います。どんなに年齢を重ねても、バイタリティーにあふれている人は素敵ですし。そういう方たちって、いい意味で欲深いですからね(笑)。

 だから、具体的な答えになっていないかもしれないですけど、ありとあらゆるものに対してのバランス欲はあると思います。何かに対して“まったく欲がない”ってあんまり僕、言ったことがないと思うんですね。自分でも、バランス感覚は結構あると思っていますし(笑)。どんなこともひと通り経験して、ひと通り見ておきたい。そんな感覚はすごく大切にしていますし、そこに対しては欲深くいきたい気持ちはずっとあります」

親交もある、原作者・朝井リョウ

 読書家でもある稲垣。原作者の朝井リョウは『ゴロウ・デラックス』('11年〜'19年)に何度も出演し、プライベートでの交流もある。今回、何か言葉をかけられた?

「それがあんまりなくて。やはり、監督を筆頭とした映画のチームに受け渡している感覚だと思うんです。それに“ここをこうやって演じてくれ”と言う原作者はいないですよね(笑)。僕が作家だったとしてもたぶん、それは言わないと思う。朝井さんは取調室でのクライマックスシーンのときに(現場に)いらしてくださって。“お疲れさまです”“僕がいてすみません”みたいな感じで、小さくなっていらして(笑)。本当に謙虚な方なんです」

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ヘアメイク/金田順子、スタイリング/黒澤彰乃

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