塀の向こう側にはどんな世界が...? 吉本興業の元社員が記す、刑務所での釈放前教育実体験

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2023年11月22日 18:11  BOOK STAND

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『それでは釈放前教育を始めます! 10年100回通い詰めた全国刑務所ワチャワチャ訪問記』竹中 功 KADOKAWA
 できることならば、一生のうち一度も入ることなく済ませたい「刑務所」。とはいえ、その中の様子については、ちょっぴり興味がある人もいるのではないでしょうか。今回ご紹介する書籍『それでは釈放前教育を始めます! 10年100回通い詰めた全国刑務所ワチャワチャ訪問記』は、気になる刑務所の内部事情を非常に詳しく記した一冊です。

 といっても、著者の竹中 功さんは受刑者ではなく「釈放前指導導入教育員」という立場で"ムショ入り"しています。吉本興業での約35年にわたる広報マンとしての実経験を活かし、仮釈放や満期釈放で出所する前の受刑者たちに向けて「社会復帰プログラム」と題した1時間授業を4コマおこなっているのだそうです。

 そんな竹中さんの授業テーマは「コミュニケーション力をつけよう!」。「出所者が二度と刑務所に戻らないこと」「出所者が再犯で被害者を作らないこと」という目標を叶えるべく、出所後の社会生活においてコミュニケーション能力がいかに大切かという内容を伝えているそうです。

 授業の様子について読んでいると、受刑者たちの中には「共感すること」が難しい人が多いように感じられます。たとえば4コマ目の授業でおこなわれるハラスメントの講義の中で、竹中さんが「カラオケ・ハラスメントとはどのような嫌がらせか?」と尋ねた際、受刑者たちから列挙されたのが「歌が下手で聞いていられない」「知らない歌ばかり選ぶので付いていけない」といった自分目線での答えでした。

 そこで竹中さんが「人前で歌うのが恥ずかしくてイヤ」「この上司とデュエットはしたくない」(そういう人たちに無理やり歌わせる)といった意見(視点)を伝えると、みな驚いた表情になるそうです。彼らの多くは「カラオケが嫌いな人なんているわけない」という勝手な思い込みを抱いており、竹中さんはこれこそが「行動認知の歪み」だと考えます。その自覚を持ってもらうためにも、この「仮称ハラスメント・クイズ」は役に立つといいます。

 ほかにも竹中さんの授業では、コール&レスポンスの妙味を体感できる「大喜利」スタイルを取り入れたり、頓智を利かせるなぞなぞ問題を出したりと、吉本興業で学んだお笑い作りのノウハウが満載。「被害者側の観点にも立ってみるという、そんな『視点』を身につける」ためにも、コミュニケーション能力を身につけることは大切だと竹中さんは記します。

 釈放前教育の体験談のほかにも、全国の刑務所のリアルな実情についても知れる同書。「所有者ナンバーワンの本は日本地図」「網走刑務所には全国で唯一の『肉牛』育成施設がある」「まじめに過ごしている収容者にはおかしが与えられる」......などなど、皆さんが初めて知ることも多いかもしれません。簡単には見ることができない塀の向こう側を、皆さんも同書でのぞいてみてはいかがでしょうか。

[文・鷺ノ宮やよい]



『それでは釈放前教育を始めます! 10年100回通い詰めた全国刑務所ワチャワチャ訪問記』
著者:竹中 功
出版社:KADOKAWA
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このニュースに関するつぶやき

  • でも、出所してもどうせまた再犯するよ。吉本興業さん、無駄だと思うよ。横山やすしや前田五郎や島田紳助の件でどんだけ大変な思いしたんよ?
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