『どうする家康』は丁寧さが足りない “大坂の陣”豊臣方武将の扱いが雑でガッカリ

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2023年12月04日 12:20  キャリコネニュース

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今年の大河ドラマもいよいよ大詰めだ。12月3日放送の[『どうする家康』第46回では、大坂の陣が勃発する経緯を丁寧に描いてみせている。

流れをざっと説明すると、もう余命いくばくもない家康(演:松本潤)が江戸幕府の将来のために、どうしても豊臣の勢力を削っておきたいという願望に端を発するもの。そのため豊臣方と共に方広寺を再建した折、徳川方がその釣鐘に刻まれていた文言に難癖をつけていわゆる“鐘銘事件”を引き起こしている。

この文言の解釈についても駿府城で意見が二分するという妙に丁寧なドラマシーンも描かれていたが、一方で大坂城では大野治長(演:玉山鉄二)がわざと家康が言いがかりをつけてきて、開戦のきっかけになるように扇動した様子をのぞかせる。

鐘に刻まれた文字、「国家安康」は家康の名前を裂断しているもので、これを呪いと訴えた徳川方の態度は史実そのままに、今回のドラマでは目にシャドウ入れ過ぎな玉山治長が「そもそも挑発していたんだよ」という武闘派としての姿勢を見たのはちょっと新鮮だった。

ここに至るまで、『どうする家康』では、観ている側がガッカリする合戦模様が相次いでいた。散々書いてきたけれど、合戦シーン丸々カットで「なんやかんや」のナレーションで済まされることもあったし。

ただ大坂の陣に関しては戦国時代最後の戦であるため、鐘の文言や大坂城が続々と牢人を収容していく様子など含め、さすがにしっかり描いている。(文:松本ミゾレ)

歴史ファン以外には「誰だっけこの人」な武将たち。すぐに人物相関図に載せてほしい

で、今回の放送では大坂城に入城する歴戦の武将たちも顔見せした。その筆頭はやっぱり真田信繁(演:日向亘)。大坂冬の陣では鉄壁の大坂城に存在する、唯一の弱点をカバーするために建造した出城の真田丸に入り、前田隊に損害を与える様子も描かれた。

本作の信繁は出番こそ少ないが、九度山に配流されて以来の鬱屈した日々もあってか、この再登場では顔に険しさが宿っていて、時間の流れを感じさせる。冬の陣では全体的に豊臣方が劣勢だったものの、この真田丸攻防では家康も慌てて撤退を指示したとされるほどに強かったので、家康はつくづく真田には勝てない武将だったということになる。

もっとも劇中では家康が前田隊の損害を報告されるところ止まりで、眉一つ動かしてなかったのがアレだけど。ある時期から松潤家康って表情の変化が乏しくなったというか、顔の表情はさほど変わらず涙だけ流すみたいな感じで、見てて変化がないんだよなぁ。あの老け顔の特殊メイクって、そんなに表情の動きを阻害するのかな。

声も相変わらず若いままだし、余計に……もうちょっと声色を工夫できないかなぁ。歴代の大河主役たちも壮年期を演じるときって、結構老け声を頑張って出してたのに。『毛利元就』の中村芝翫とか本当にジジイみたいで良かったなぁ。ここが役者とジャニーズのやっぱり決定的な差だよね。偉そうなこと書くけど、老け役ができるような経験を積んでない。

松潤なんてもう実年齢40なのに、未だに20代ぐらいの声色だし。それだけに序盤の少年期の演技は流石にちゃんとそれっぽく見えてたので、これはもう完全に適材適所だった序盤と、そうじゃない終盤との違いなんだろう。

それこそ北川景子なんて本作ではお市の方とその娘の茶々の二役なのに、声色も表情も全然違うものだからどうしても比較してしまう。茶々なんて常に顔がこわばってるわ声もどっしりと通るわ、秀頼なんかよりよほど総大将の器に見えてしまう。つくづくこのドラマ、北川景子に助けられてるよね。

その豊臣方に与する諸将も今回で一気に出揃う。没落した宇喜多に仕えるキリシタン武将の明石全登、大国毛利からの使者・勝永、長宗我部からは盛親、そして関ケ原では小早川秀秋の裏切りのせいで自刃を強いられた大谷刑部の息子・吉治。黒田官兵衛に仕えた経歴を持つ後藤又兵衛。

それぞれ歴史ファンにとっては見逃せない面々なんだけども、公式サイトの人物相関図では12月4日現在もこれらのメンバーが更新されていない。豊臣方の登場人物で最後に更新されたのは大野治長。普通新登場キャラクターが出れば更新はその週にはやるものだと思うけどなぁ。

放送終了後に公式サイトに飛んで復習する“余韻”の楽しみがない!

これに関しては、僕みたいな戦国ファンならおおよその動きは把握できているので問題はない。でも、歴史にあまり興味がなかったけど、今回の放送でちょっと豊臣の牢人たちにも興味を持った人が不憫だ。公式サイトの人物相関図を見ても、そもそもどの勢力のどこからやってきたのか分からないと、話も理解できない。何なら誰が演じてたかも分からない。

今回の大河って丁寧さがないんだよな。突然登場人物が増えて、突然退場。アナウンスもなく、死亡描写もなく、それで終わりというキャラがあまりに多過ぎた。徳川家にしても、譜代家臣との別れとか、ちゃんと全員分やってくれよって何度思ったか。

かと思ったら劇中で何十年も経過した頃に回想でちょろっと顔が出て、そこで初めてとっくに死んでたっぽいことが語られたり。服部半蔵以下服部党なんかメンバーの大半は名前もなかったし、当然人物相関図にも半蔵と大鼠、女大鼠ぐらいしか記載がないままだった。彼らがその後どうなったのかについても説明が未だにない。三代目半蔵に引き継がれてることは分かるけど、とにかく出てこないんじゃどうしようもない。

去年の『鎌倉殿の13人』は、少なくともこういうことはなかった。ちゃんとその回で初登場し、セリフも出番もそこそこにある人物は、名前がない医者ですら登場人物一覧に「医者」として列挙されていた。

なので毎回の放送終了後、鎌倉時代についてあまり明るくなかった僕なんかは公式サイトに飛んで、そこで人物相関図を見て学んで、そっから興味が出た人物については書籍なんか取り寄せて調べて楽しむようなことが多かった。

死去した人物もすぐに一覧から消えるのでなく、顔画像がモノクロになって残っていて。さらに一度物語から退場したと見せかけて、人物相関図からも消えたキャラクターが、後々新しい衣装をまとった写真と共に復活表示されるという流れも割とあった。人物相関図を見ることで楽しみながら歴史を勉強することにも繋がっていた。

歴史を好きになるきっかけ作りとして、公式サイトの人物相関図って有効だったと思うんだよね。だけど今年はもう、ちょっとでもモブっぽい扱いの人とかはOPのテロップを見て名前と役者さんを自力で検索してみる他ない。

山内一豊なんてちゃんとした有名人なのに一瞬しか出なかったし、結局あの太った役者さんの名前も忘れてしまった。思い返そうにも人物相関図のどこにもいない。丁寧にドラマを作って、丁寧に人物相関図も更新する。これがちゃんとできていた大河がつい去年まで放送されていただけに、なんだかすごく勿体ないよね。

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