大空翼、坂本轍平、神谷蒼……人気サッカー漫画の主人公、年俸はどのくらい? 実在のサッカー選手から考察

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2023年12月05日 07:10  リアルサウンド

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  ラグビー界最大のビッグイベント、ラグビーワールドカップが南アフリカ共和国の優勝で幕を閉じた。これで南アフリカは単独最多4回目の優勝になり、準優勝に甘んじたニュージーランドは最多タイから単独2位の優勝回数となった。


  4年前には日本がホスト国となったラグビーワールドカップだが、一説には夏季オリンピック、FIFAワールドカップ(サッカー)、ツール・ド・フランス(自転車競技)に次ぐ、4番目に大きなスポーツの国際大会であると言われている。


  大手国際会計事務所、アーンスト・アンド・ヤング(EY)の報告書によると、ラグビーワールドカップ日本大会の経済効果は、6464億円に及んだそうだ。


 実のところ、スポーツとカネは古代から切っても切れない関係だった。


  近代オリンピックは、19世紀末にピエール・ド・クーベルタン男爵の主導でアマチュアの大会として始まったが、1980年代に当時IOCの会長だったフアン・アントニオ・サマランチ氏のもとプロ選手の参加が解禁され、華やかな商業的イベントへと生まれ変わった。


  1984年のロサンゼルスオリンピックは赤字続きのイベントだったオリンピックが黒字転換した画期的な大会で、大会組織委員長をつとめたピーター・ユベロス氏はのちに、世界最大のプロ野球リーグ、メジャーリーグ・ベースボール(MLB)のコミッショナーに就任している。


  オリンピックの商業主義は時に批判されることもあるが、実のところ、ルーツとなった古代ギリシャのスポーツイベントはカネありきの大会が大半だった。当時、各地のスポーツ大会を連戦して賞金・商品で生計を立てるプロ選手がいたほどである。古代オリンピックは賞金・商品こそ出なかったものの、オリンピックでの勝利は選手にとって最高の栄誉であり、オリンピック優勝で得られる名声は選手に富をもたらしたとの記録が残っている。


  興味のある方はトニー・ペロテット(著)『驚異の古代オリンピック』をご参照いただきたい。


 わが国で特に稼げる競技は野球(プロ野球の平均年俸=約4500万円)とサッカー(サッカーの一部リーグ・J1の平均年俸=約3000万円)の二つである。


  野球とサッカーは頻繁にスポーツ漫画の題材になるが、漫画の劇中で選手の年俸が明らかになることはほとんどない。今回は、サッカー漫画の主人公はどのぐらいの年俸を稼いでいるのか、実在のサッカー選手と比較して推定を試みてみよう。


■坂本轍平『ファンタジスタ』年俸18億円程度

  サッカー漫画の題材は高校サッカーなどのアマチュアが多いが、もちろんプロ選手、それも本場ヨーロッパの最高峰でプレーする選手が主人公の場合もある。


  本格派サッカー漫画『ファンタジスタ』と続編『ファンタジスタ ステラ』の主人公・坂本轍平(てっぺい)はイタリアの名門・ACミランの育成組織からトップチームに昇格し、アーセナル(イングランド)→レアル・マドリード(スペイン)と更なるビッグクラブへ華麗なステップアップを果たしている。(※後ろ2チームについては劇中では本物をもじった名前に変更されているが、ここではリアルなクラブ名で表記する)


  現実世界の日本人選手では、冨安健洋(アーセナルFC)、遠藤航(リヴァプールFC)がビッグクラブへのステップアップを果たしているが、この2人はレギュラーではなく、またてっぺいのようなオフェンシブな選手でもない。


 サッカー選手の年俸をポジション別に見ると、オフェンシブな選手ほど年俸が高い。仮にまだ若い冨安がレアル・マドリードに加入してレギュラーを獲得してもてっぺいほどの年俸は稼げないだろう。今後可能性がありそうなのは、レアル・マドリードが買い戻しオプションを保有している久保建英(レアル・ソシエダ)だろうか。中盤の攻撃的な選手であり、2001年生まれでまだ22歳と若い。今後は可能性があるかもしれない。


 残念ながら現時点で、てっぺいと比較対象するべき選手は日本には見当たらない。
 少々おおげさかもしれないが、経歴※、年齢、活躍した年代などを考慮するとクリスティアーノ・ロナウドとの比較が適当そうである。
※経歴=実績については説明するまでもないと思うが、スポーツ選手は1歳でも若いほうがより価値が高く、プロリーグの経済規模は年代によって差が出るため考慮が必要である。


  セカンドトップを本職とし、センターフォワード、サイドハーフ、トップ下としてもプレーできるてっぺいとウィング、センターフォワードがメインのロナウドでは単純比較できないが、同じく点を取ることを期待されるポジションのプレーヤーで性質的にはまあ近い。


  2002年時てっぺいは高校1年生、マドリード加入が2010年なのでてっぺいは加入当時、24歳。ロナウドのマドリード加入はその前年の2009年で、加入当時24歳。イングリッシュ・プレミアリーグのビッグクラブ(マンチェスター・ユナイテッドFC)から加入した経歴、プロとしての経験年数も同程度なので、レアル加入当時のロナウドとてっぺいは同程度の評価だったのではと考えられる。レアル移籍当初のロナウドが年俸18億円程度だったと推定されているので、てっぺいも同じ程度は稼いでいたのではないだろうか。


■大空翼『キャプテン翼』約18億円

  では、日本一有名な架空のサッカー選手であろう、『キャプテン翼』シリーズの大空翼はどうだろうか?


  翼はトップ下を本職とするオフェンシブプレーヤーで、ブラジルの名門クラブ・サンパウロFCから世界的ビッグクラブFCバルセロナに移籍。移籍した『キャプテン翼 -ROAD TO 2002-』時点で20歳だった。


  ブラジルのクラブから若手のうちにビッグクラブに移籍して成功した選手はかなりの例が存在するが、年代は2000年ごろで、20代前半でブラジルのクラブから直接バルセロナに移籍して成功した選手は残念ながらピッタリあてはまる例が見つからなかった。年代に10年ほど開きがあるのが気になるが、経歴と年齢を考えるとネイマールが比較的近いと言えそうだ、


  ブラジル代表の最多得点記録を持つネイマールはブラジルのサントスFCでプロデビューし、2013年に21歳でバルセロナと契約。ネイマールはウィンガー、または中盤の攻撃的なポジションの選手なので、トップ下がメインの翼とプレースタイルが完全に一致するわけではないが、オフェンシブな選手であることに変わりはない。


  プロとしてのキャリアの長さ、実績、年齢を考えると翼の年俸はバルセロナ移籍当初のネイマールに近いのではないだろうか。


  バルセロナ加入当初のネイマールの年俸は約18億円とのことだった。サッカー選手の年俸は年々増加傾向にあるので、年代を考えると翼はもう少し下だろう。ヨーロッパサッカーはスペイン、イングランド、ドイツ、イタリアの一部リーグで俗にいう4大リーグを構成している。


■シーナ『VIVA! CALCIO』 約6億円

  2006年のカルチョ・スキャンダルなどをきっかけに相対的地位が低下してしまったイタリア1部リーグ・セリアAだが、『VIVA! CALCIO』の連載当時(1990年代)は紛れもない世界最高のプロリーグだった。連載当時、日本人がセリアAで活躍するなど完全な絵空事であり、中田英寿氏が絵空事を現実にするにはもう数年の時間が必要だった。


  当時のスター、ディエゴ・マラドーナ氏の全盛期(ナポリ時代、1990年代の前半)の年俸が6億円程度とのことなので、『VIVA! CALCIO』の主人公・シーナも全盛期には同程度か少し下ぐらいは稼いでいたのかもしれない。


■高杉和也 『俺たちのフィールド』数億円

 『俺たちのフィールド』の主人公、高杉和也も最後はセリアAのフィオレンティーナで主力選手として活躍していた。和也は純粋なオフェンブプレーヤーではなく、ユーティリティプレーヤーだったので、評価は違っていただろうが、少なくとも億単位の年俸は受け取っていたことだろう。


■嵐木八咫郎『カテナチオ』約300〜400万円

  時代は変わって現役連載作品『カテナチオ』の主人公で、イタリアの一部リーグFCオリヴェーロ(架空のクラブ)に所属する嵐木八咫郎はどうだろうか?


  嵐木はまだ駆け出しの選手であり、クラブの育成チーム(U-19チーム)に所属している。イタリアの名門・ユベントスのセカンドチームは3部リーグにあたるセリエCの所属である。強豪ではないオリヴェーロの育成チームはもっと下のカテゴリーのリーグかもしれないが、参考程度にはなる事実だ。残念ながらセリエCの返金年俸はわからなかったが、日本の3部リーグにあたるJ3は平均年俸約300〜400万円とのことだ。


■千明明『Mr.CB』不明

 『Mr.CB』の主人公、千明明は日本国内の3部リーグ所属クラブの新人選手なので、この範囲の下限のほうの年俸だろう。セリエCの平均年俸がどの程度か不明だが、J3よりも下ではないだろう。(高額でないことは間違いないが)


 ほかのトップディビジョン所属ではないキャラクターはどうだろうか?珍しいゴールキーパーを主人公に据えた『蒼のアインツ』は舞台設定も凝っており、ドイツ・ブンデスリーガの2部リーグ(2. ブンデスリーガ)を舞台にしている。日本のJリーグはブンデスリーガをお手本に創設・発展してきたがリーグの歴史も規模も比較にならない。


■神谷蒼『蒼のアインツ』2億円超

  『蒼のアインツ』の主人公・神谷蒼はドイツ2部リーグのレーゲンスブルクに加入し、苦難の末にレギュラーを獲得するが、2. ブンデスリーガの平均年俸は約5500万円で、J1の平均年俸を大きく上回る。ゴールキーパーはポジション別で最も平均年俸が低いが、レギュラークラスの選手が平均以下の年俸ということはないだろう。蒼は最終的にクラブの1部昇格にも貢献しており、最終的には低く見積もっても年俸2億円を超えていたのではないだろうか(ブンデスリーガ1部の平均年俸は約2億6600万円)


なお、ドイツは3部リーグの3. リーガですら平均年俸は1400万円もある。日本ではJ1所属クラブがJ2に降格すると観客動員に如実に影響が出るが、伝統クラブのシャルケ04は2部に降格しても観客動員数がほとんど変わっていない。サッカー文化がそれだけ深く根付いているのだろう。


蛇足だが、国別でプロ選手の返金年俸が最も高いのはイングランドである。トップディビジョンのプレミアリーグは平均年俸約4億1500万円で世界1位。2部リーグに相当するチャンピオンシップですら約9000万円である(何とJ1の3倍近い)。


 『カテナチオ』に登場するスカウトのシルヴィオ・テスタは「現在ヨーロッパサッカーの覇権はイングランドにある」と語っているが、プレミアリーグの平均年俸は次に平均年俸の高いブンデスリーガのおよそ1.5倍である。シルヴィオの表現は決して誇張では無い。


  サッカー漫画にはクラブとカネの関係にフォーカスをあてた『マネーフットボール』があるが、残念ながら長期連載とはならなかった。今回はスポーツとカネの関係の話なので、せめて名前を挙げておくとしよう。


  また『ブルーロック』のネオ・エゴイスト・リーグ編では選手に入札という形で直接値段がつけられる描写があることにも言及しておこう。


 


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