どんな音? 走りはほぼBEV? マツダ「MX-30ロータリーEV」に試乗!

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2023年12月08日 11:31  マイナビニュース

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マツダが11年ぶりに復活させたロータリーエンジン搭載モデル「MX-30ロータリーEV」に試乗した。自慢のロータリーエンジンを発電専用の「黒子」として使ったというプラグインハイブリッド車(PHEV)はどんな走りなのか。エンジン音はカッコいい? 試乗して確かめた。


MX-30ロータリーEVってどんなクルマ?



久々の量産型ロータリーエンジンを載せた新型と聞くだけで興奮するのは、なにもマツダファンだけではない。報道陣だって同じなのだ。「マツダR&Dセンター横浜」(神奈川県横浜市)で行われた試乗会には200人を超えるメディア関係者やジャーナリストが参加したというから、そのボルテージの高さがわかるというものだ。



MX-30自体はすでに電気自動車(BEV)とマイルドハイブリッド車(MHEV)がデビューしている。今回のロータリーEVは、プラグインハイブリッド車(PHEV)という3つ目のパワートレインだ。


搭載するシステムは、エンジンで発電してモーターで走る「シリーズハイブリッド方式」だ。コンセントからも充電ができるのでPHEVモデルということになる。発電機としてパワーを供給するのが、新開発の「8C型」直噴ロータリーエンジン。排気量830ccのシングルローターだ。


ちなみにスペックを紹介しておくと、8Cロータリーエンジンは最高出力53kW(71PS)/4,500rpm、最大トルク112Nm/4,500rpm、モーターは最高出力125kW(170PS)/9,000rpm、最大トルク260Nmを発生。リチウムイオンバッテリーの容量は17.8kWhでEVモデルの半分だ。50Lの燃料タンク(無鉛ガソリン)と15.4km/LのWLTCモード燃費から計算すると、フル充電かつ満タンでの航続距離は700km以上となる。



構造がシンプルで小型軽量・高出力という特徴をいかすため、スポーツモデルの駆動用としてマツダが苦労して開発した「夢のエンジン」が、今回は発電専用に役割を変えた。このあたりは時代の変化に合わせた進化ということで納得できるわけだが、やっぱり気になるのはロータリーエンジンの「音」だ。

復活のロータリーエンジンはどんな音?



試乗車はほぼ100%に近い満充電状態だった(モーターのみで107km走行可能)ので、そのまま走ってもすぐにロータリーエンジンが稼働しそうにない。そこでスタッフに尋ねてみると、バッテリー残量がなくなるまでEV走行を続ける「EVモード」、バッテリー残量が45%以下になるとエンジンが始動する「ノーマルモード」、バッテリー残量を20〜100%の間で10%きざみに任意設定できる「チャージモード」の3つの走行モードのうち、チャージモードで100%に設定してちょっと走ればエンジンがかかるはず、ということだった。


言われた通りの設定にして駐車場内を少し走ってみると突然、ロータリーエンジンが回り始めた。すぐに停車して聞いてみると、その音は「ビュルルルルーン」というような、文字で表現するにはちょっと難しい低い音色だった。ボリューム自体も結構大きい。


この音、「RX-7」やル・マン24時間レースで総合優勝した「787B」が発していた、澄んだ甲高い「ロータリーサウンド」とは全く異なる。



8Cを担当したパワートレイン開発本部エンジン設計部の木ノ下浩氏、NVH性能開発部の西川鋭長氏に話を聞くと、最初の試作段階ではもっと大きくてひどい音で、「ちょっとこれどうする?」みたいなところから開発が始まったのだという。ただし、一般の人がイメージするロータリーの音は、市販モデルが搭載していた2ローター以上のものであって、今回の8Cは1ローターで排気量の容積が大きいので、ある程度の予想はついていたとのこと。つまり、これがロータリーエンジンの基本の音なのだ。その音の遮音と、走行状態に合わせてエンジン回転を上げ下げするための制御に結構な時間を費やしてしまい、結果としてロータリーEVの発売時期だけがかなり遅れてしまったのだという。

走行モードを切り替えながらじっくり試乗してみると…



試乗では横浜市内の一般道とベイブリッジやみなとみらいを経由して周回する首都高コースを走行モードを変えながら2周した。



ノーマルモードで走った1周目はバッテリーが満充電に近い状態だったので、走り自体は電気とモーターのEVそのもの。アップダウンとコーナーが多い高速道路上では、自然な操作感覚を提供する「エレクトリックGVCプラス」、トルクコントロールを高精度に行う「モーターペダル」、ブレーキペダルの操作量で摩擦制動と回生ブレーキを効率よく配分する「回生協調ブレーキ」などの制御がミックスされ、静かで安心感のある走りが楽しめた。



合流地点などで一瞬だけキックダウンスイッチが入るほどのフルスロットルを試してみる。エンジンは始動したが、ロードノイズなどの走行音に打ち消されて、ロータリー音はほとんど聞き取れないレベルだ。確かに黒子に徹している。0-100km/h加速は9秒台というので、そんな時も驚くような加速力ではなく、パワーは必要十分といった感じ。ちなみに、ノーマルモードでの走行中、メーター内の燃費表示は40km/L以上にまで到達した。


チャージモードに切り替えた2周目では、エンジンの始動音が頻繁に聞こえはじめ、メーター上の燃費がどんどんと下がって15〜16km/Lあたりの表示に。一般道に降りると車内が静かなので、さらにエンジン音が聞こえやすくなる。



試乗後に聞いた話だと、ノーマルモードでは2,300回転から始動する8Cロータリーは、チャージモードにすると500回転高い領域から始動して一気に充電するので、エンジン音が大きくなる代わりに、1回にかかっている時間自体は短くなるらしい。「ビィィィーン」と発電してすぐ止まり、ちょっとするとまた短く回って休む、というような制御の仕方をする。



1周目のイメージは、平日に通勤などで100km以内をEV走行だけで走るパターン(当然、毎日自宅で充電することが前提)。2周目は週末にロングドライブを楽しんで2日間で600kmを走るイメージ(シリーズハイブリッドとしてエンジンも使って走る)で走った。BEVモデルや25km/Lあたりを公称する他社のPHEVに比べると、環境面や多少の効率の悪さに目をつぶっても、BEV走行と長距離ドライブを両立したロータリーエンジン搭載モデルという魅力は大きいと思う。


フリースタイルドアをどう考える?



観音開きのフリースタイルドアは、単純な4ドア5人乗りモデルとして考えたら使い勝手はいいとはいえない。リアシートから降りようとすると、実は大人1人だと困難を極める。遠くにあるフロントドアノブになんとか手を伸ばし、やっと開けることができたとしても、ヘタをすると勢いがついて隣のクルマにドアパンチを喰らわしてしまう恐れがある。ドアが開いて安心して気を抜いていると、出口のルーフ部分にある大きなドアキャッチに頭をぶつけてしまうおそれもある。


しかし物は考えよう。デザイン担当の松田陽一氏によると、MX-30はフロントシートメインの2+2モデルだと意識を変え、リアのパッセンジャーが降りる際には、先に外に出たドライバーやコ・ドライバーがリアドアを開け、スマートにエスコートしてあげたらよいではないか、という。ロータリーエンジンに魅了されてこのクルマを購入するユーザーさんなら、これくらいできて当たり前、という勢いなのである。


バッテリー容量がそれほど大きくないPHEVモデルなので、普通充電(20%のバッテリーを80%まで充電するのに要する時間は1.5時間)も急速充電(直流出力40kW以上で同25分)も充電時間は短い。V2HやV2Lにも対応している。ロータリーエンジンという遺産を現代に復活させたMX-30ロータリーEVは、今後のマツダの展開が楽しみになるほどの超個性派モデルだった。



原アキラ はらあきら 1983年、某通信社写真部に入社。カメラマン、デスクを経験後、デジタル部門で自動車を担当。週1本、年間50本の試乗記を約5年間執筆。現在フリーで各メディアに記事を発表中。試乗会、発表会に関わらず、自ら写真を撮影することを信条とする。 この著者の記事一覧はこちら(原アキラ)

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