フワちゃんの遅刻癖がテレビで重宝されるワケ――2023年「わかりやすさ」を武器にした女芸人たち

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2024年01月01日 22:01  サイゾーウーマン

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サイゾーウーマン

 現代のテレビ界で、ひときわ強い存在感を放つ存在――女芸人。バラエティ番組で、男芸人の陰に隠れていた時代も今は昔。誰よりも前に出て、笑いを取る女芸人の姿は珍しくなくなったように思える。今回、サイゾーウーマンで「女のための有名人深読み週報」を連載中のライター・仁科友里氏が、2023年に特に気になった女芸人(女性お笑いタレント)を発表する。

 11月16日放送の『徹子の部屋』(テレビ朝日系)に出演した清水ミチコ。30代のお嬢さんが結婚して、娘夫婦が清水のライブに来てくれた話を披露していた。徹子が「珍しいわね、あなたがご家族の話をするなんて」と言ったところ、「今まで聞かれなかったものですから」と返していた。

 長い芸歴を誇る清水だが、確かに、彼女に家族の話を振る共演者を見た記憶はないし、清水自身も自分から「聞いて聞いて」と話すタイプではない。もともと親交がある徹子だけに、清水もたまたま流れで家族の話をしたのだろうが、「“そういう時代”なのかもしれない」と気づかされたやりとりだった。

 かつて芸人やお笑いタレントの売れ方というのは、ネタで注目され、賞レースやテレビのゲスト出演で結果を残し、番組レギュラーを増やすというのが、男女問わずスタンダードだったのではないか。清水も“ネタ”で評価されたタレントだけに、私生活がクローズアップされることはなかったが、今や、芸人やお笑いタレントがネタ以外の面で世間の興味を引き、人気につながることは当たり前の時代になったと思う。

 このように、芸人やお笑いタレントの“売り”が多様化する中、活動のフィールドもかつてないほど広がっている。バラエティ番組だけでなく、情報番組、ドラマ、文壇で活躍する人も少なくないし、表現の場所も、テレビや劇場だけでなく、YouTubeチャンネル、SNSと多岐にわたるようになった。こうなると、芸人やお笑いタレントは媒体にあった見せ方を変えていく必要があるだろう。

 そんな中、コンプライアンス意識が浸透してきた現代において、老いも若きも視聴しているテレビでは「わかりやすさ」が求められているのではないだろうか。つまり、幅広い層の共感を呼ぶ人、もしくはその逆で幅広い層から批判されるような人こそ重宝される時代なのだと思う。そこで今回は、今年「わかりやすさ」を武器に、テレビ界で輝いた女芸人・女性お笑いタレント3名を挙げてみたい。

横澤夏子:「母というわかりやすさ」

 12月16日放送の特番『ザ・細かすぎて伝わらないモノマネ』(フジテレビ系)で見事優勝者となった横澤。時代に合わせたのか、それとも母となっていろいろ心境の変化があったのか、彼女のネタ(女子あるあるネタや個性的な女性のものまね)の毒はかなり薄目となっていた。

 3児の母であることがプラスに働いたのだろう、横澤は藤本美貴と共に、ママ特化型バラエティ『夫が寝たあとに』(テレビ朝日系)のMCに就任した。タイトルからして「夫が育児で役に立たない」というような悪口を言うのかと思ったが、ゲストを迎えて、「おしゃれな靴を息子に買ってあげたのに、滑らないところでスライディングするものだから、1日で靴がボロボロ」というような育児あるあるを披露する。育児中の女性で夫にイラッとしない人はいないと思われるが、面白く夫の悪口を言うのは腕がいるし、一歩間違えれば炎上しかねないから、このくらいがいいのだろう。

 正直物足りなさも否めない。しかしおそらく今後、横澤は育児のちょっとした愚痴エピソードを明かすのではないか。夫に対する愚痴とは違い、「とはいえ、わが子はかわいくて仕方ない」と、視聴者もわかりきっているわけだから、誰もが安心して見ていられるだろう。

 ちなみに横澤は18年の『女芸人No.1決定戦 THE W』(日本テレビ系)に出場する際、その理由を「賞金の1000万円を使って、ルミネtheよしもとに託児所を作りたい」と話していた。優勝は逃したが、賛同する企業の支援を受けて、実現したという。「育児のことなら横澤」と言われ、テレビ界で重宝される日は近いのではないだろうか。

 「男性(女性)はこういうもの」というふうに主語を大きくすると反感を買う時代なのに、なぜか治外法権的にそれが許されるのがギャルではないだろうか。6月22日放送の『ダウンタウンDX』(日本テレビ系)に、「最強ギャル軍団」として藤田ニコル、益若つばさ、ゆきぽよらが出演していたが、彼女たちは「ギャルは仲間を大事にする」「ギャルは礼儀正しい」「ギャルは一途で浮気しない」など、ギャルという大きな主語を用い「あるあるトーク」を披露した。

 お笑いコンビ・エルフの荒川は、これらのイメージそのままのギャル路線で売っていると思う。しかし『エルフ・荒川の日めくりまいにち、GAL!なんか知らんけど生きる元気が湧いてくる31のギャル語録』(ヨシモトブックス)によると、「自称あたしは自己肯定感について日本でいちばん考えてるギャル」とある。そんなにも自己肯定感について考え込んでしまうなんて、彼女の自己肯定感は高めとはいえないと思っていたところ、2月28日配信の「ハフポスト」のインタビューで、本人がそのことを認めていた。この記事を読むに、性格もやや暗めなのだろう。

 しかし、一般人からすれば、鋼のメンタルの持ち主より、落ち込みやすく、傷つきやすかったとしても、ギャルとして「なんか知らんけど生きる元気が湧いてくる」言葉を発信する荒川のほうが親近感を得られるような気がする。

 YouTubeチャンネル「鬼越トマホーク喧嘩チャンネル」に出演した際、恋愛をするとメンヘラのようになると打ち明けていた荒川。その経験をテレビで明かすことで、さらに多くの人から共感が得られるのではないだろうか。

フワちゃん:「遅刻というわかりやすさ」

 ブレイク直後から、「週刊女性」(主婦と生活社)で遅刻癖があると指摘されていたフワちゃん。昨今のSNSでは「どちらが正義でどちらが悪か」というふうに白黒つけられる話題が好まれるが、遅刻は「わかりやすく悪いこと」なので、格好のネタを投じたといえる。

 そこにテレビ局も目をつけたのか、今やフワちゃんの遅刻は番組内でもネタとして扱われるようになった。『フワちゃんのオールナイトニッポン0(ZERO)』(ニッポン放送)で、フワちゃんは生放送に遅刻しないよう、ロケバスを自腹(1回2万3,000円)で発注していたことを告白。どうせなら生放送ではない番組の時も頼めばいいと思うが、急にフワちゃんが無遅刻になったら、持ちネタが減ってしまうので、これくらいでいいのかもしれない。

 コンプライアンス厳しき昨今、テレビ局は問題を起こさないよう、細心の注意を払って番組を制作していると思うが、視聴者にとって番組は娯楽に過ぎないので、それほど真剣にテレビを見ていない。今の時代であれば、スマホをいじりながらテレビを見る人もいて、視聴者の注意力はかなり散漫といえるだろう。

 だからこそ、こうした「わかりやすさ」が求められるのかもしれない。24年はどんな女芸人が重宝される傾向になるのか見当もつかないが、皆さんくれぐれも健康には気をつけて、頑張っていただきたいものだ。

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