60代夫婦のリアルな年金暮らし「夫とは基本別行動」節約もプチ贅沢も楽しむ幸せ生活の中身

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2024年01月04日 08:00  週刊女性PRIME

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小暮涼子さん

 5年前に夫婦ふたり暮らしを始めた主婦の小暮涼子さん。夫の退職を機に59歳で夫婦だけの暮らしをスタートさせた。

「いずれふたりになるのはわかっていました。3人の子どもたちにはいずれはこの家を出て自立しなさいと言い渡していましたから」

夫との距離はゆるく、無理なく

 夫が退職したあと、小暮さんも17年間、パートしていた洋服屋さんを退職した。

「夫はまったく家事をしない人。だから私だけ仕事して、家事してって、ちょっと不公平かなあと、あわてて辞めちゃったの」と笑う。

「最初は退職したらごはん作りを交代でやると夫が言っていましたが、どうやら幻だったみたい。でも、朝・昼はお互いテーブルにつく時間が違うので各自で食べることにしたのですが、これが大正解。

 夕飯も、夫が晩酌をしなくなったのでわりと簡単。主婦としての仕事量は前より減りましたね」

 夫の前言撤回に、ことさら怒るふうでもない小暮さん。別のお宅なら不仲の火種になりそうなものだが……。

「だってそういう人だって私がいちばん知ってますから。言っても変わらないと。その代わり、夕飯の片付けはふたりで。キッチンに並んで、私が食器を洗って夫がすすぐ係。早くひとり立ちしてほしいんですけどね(笑)」

 正論を押しつけない代わりに、自分も無理はしない。5年の歳月を経て行きついたバランスだ。

「うちは、なんでもふたりでってことはなくて。ごはんも夜だけで日中もほぼ別行動。趣味も生活スタイルも違うから無理はしない。一緒に出かけるのも週に1回くらい。

 リビングでも別のことをしながら、それぞれのソファに並んで座ってる。でも、それが仲良くいられる秘訣だと思います」

 最初からやりすぎない、寄りかからないのが、いい距離感を生み出すようだ。

生活を大きく変えずコンパクトに保つ

 リタイアしたあとの家計は、誰しもいちばんの心配ごと。現役時代よりは収入ダウンとなる年金生活、この中で、はたして暮らしていけるのだろうかと不安になる。

 せっかく時間ができても、今までより我慢を強いられるのなら、リタイア生活の楽しみも半減だ。

 しかし「年金収入だけで生活をまかなうのはそれほど大変ではありませんね」ときっぱり。もともと、日々贅沢はせず、コンパクトな暮らしが身についていたのが大きいそう。

子どもを3人育てましたから、節約は当たり前でした。ムダ遣いはせず、貯金もコツコツして。おしゃれは好きだったけれど、そのころはしまむらで数百円のTシャツ買って、ジーンズだけ好きなものを選んで組み合わせたり」

 子どもが成長してからも、夫が退職してからも、気を緩めずにコンパクトな暮らしを保ったまま。

「一度、気が大きくなって家計をふくらませると戻すのが大変でしょうが、うちはずっとこんな感じだから」

 築27年になる戸建てはあちこち傷んではきたが、夫がリタイアを迎えるにあたっても大規模リフォームはせず、DIYを楽しみながら手を入れている。

1階の壁は漆喰やペンキ、壁紙ですべてDIYしました。骨董市で買った500円の小瓶だってお気に入りの壁紙を背にするといい雰囲気。家がきれいになるし、自分が頭に描いたイメージを形にできるので、作業は苦になりませんでした」

 自分でできないことは、近所の小さな工務店に依頼。

「お風呂のシャワーホースのカビがどうしても取れなかったので、新しいシャワーヘッドとホースに交換し、水栓の緩みも直してもらいました。これだけでお風呂が新しくなったようでうれしくて」

 小さな修繕も含めて、3万円台で済んだという。

お金の心得
●暮らしを必要以上に大きくしない
●家の手入れはDIYで

具体的な予算立てが買いすぎ防止に

 おしゃれとインテリアは大好き、という小暮さん。特に洋服に関してはあれこれ欲しいアイテムを考えながら、年初に年間予算を決めている。

「いつも着ているチュニック+パンツに合わせるベージュのスプリングコートが2万〜3万円で欲しいなあとか、靴をもう1足2万円でなど、具体的に想像しますね。冬物も入れて、今年の予算はトータル8万円。

 でも、すごく気に入ったものに出合ったら、少々オーバーしていてもエイッと買って、その代わり長く着ます。気分よく着た回数で割ったら、そんなに高くないと思うんですよ」

 買い物計画を立てると欲しいものが明確になるので、「安いから」「なんとなく」という出費はしなくなるという。吟味して買うので、思い入れもある。

「愛用している服は10年、20年選手もザラです。やっぱり少々高くても上質なものは長く着られますね」

 やむなくどうにも生地が傷んできたら、繕って家着にしたり、思い切ってリメイクしたり。惚れ込んで買ったからこそ、最後まで大切に使い切りたいと思っているそう。

 よいものを長くというポリシーは家具も同じで、今まででいちばん高い買い物が、9年前に買ったソファ。

「大阪の『TRUCK(トラック)』という家具店のものを奮発しました。座っている時間が長いせいか(笑)、クッションがへたり、それだけ最近、新しく購入しました。おかげさまで新品同様の座り心地に」

 高くても大切に使い続ければ結局はお得だし、良いものだからこそそれができる。

持ち物はすべてお気に入りだけに

 気に入ったものを厳選して持つ、という精神はかねてあったが、数年前に片付け本を読んで刺激を受け、力仕事ができるうちにと家じゅうの物を減らした。

 クローゼットも引き出しも見渡せば把握できる量にし、家の中にはガラガラの棚も。

「ガラガラ、がいいんです。捜すのも入れるのもラクで、心の余裕につながります。なかなか服が捨てられないという話も聞きますが、私の場合、とにかく眠っている服はすべて実際に着てみて、これ着て出かけたいかどうかを自分に問うんです。

 そう思わなかった服はたたんでクローゼットの床に置き、資源回収の前日にもう一度確認してサヨナラします。この方法で後悔したことは今のところないですね」

物欲の心得
●おしゃれは年間予算で
●良いものは思い切って
●そもそも物を減らす

手軽な料理も器でおいしさアップ

 料理好きでも料理上手でもない、と小暮さんは言うが、その器使いや盛りつけにはセンスが光る。インスタグラムを始めてからは、写真に収めるという楽しみも加わった。

 朝食は各自となっているので、小暮さんが毎朝作るのは自分の分だけ。タンパク質や野菜、とバランスよく食べることを心がけてはいるが、朝食に関しては量は少なめ、頑張りすぎないのがモットー。

 出かける予定で急いでいるときは卵かけごはんと漬物、もちろん、前日の残りものを食べる日も。

「前日の夕飯のおかずや汁物を朝食用に取り分けておくこともありますよ。買ってきたコロッケをパンにはさんだり、前日の煮物を刻んでちらし寿司にしたりと、手間をかけずにいろいろ楽しんでいます」

 すべて手作りと力まず、あるものでちゃちゃっとアレンジする。頑張らなくていいのも、リタイア生活のいいところだ。

食の心得
●器で楽しむ
●朝食は頑張らない

娘と訪れたパリにもう一度

 リタイア生活を謳歌していても、確実にせまる老い。小暮さんはどんな心がまえでいるのだろう。

「たしかに老いを感じてはいますが、母がまだ93歳で健在なせいか、人よりは楽観的かな。幸いまだまだ身体も動き、自分の時間がたっぷりあるので、今この時を楽しみたいですね」

 小暮さんは、40歳のときに高校時代からの親友を病気で失った。そのとき、友人の分まで楽しもうと心に決め、迷ったら楽しいほうを選ぶことを大切にしてきたそう。

「その友人を亡くしたこともあって、私、友達は少ないんですよ。でもね、いつも誰かと一緒じゃなくていいと思う。自分の物差しで生きて、ひとりで行動できるって幸せなことです」

 日々の暮らしを楽しむことはもちろんだが、未来に夢を持つことも今日を楽しく生きる糧となる。かつて娘さんと訪れたパリに、もう一度行きたいというのが今の小暮さんの夢だ。

「ただ街を歩いて、お茶飲んで、蚤の市を眺めて回るだけでいいの。それなのにコロナ禍になっちゃって、コロナが終わったら円安になっちゃって……。でも、絶対もう一度行きたいんです。パート時代、そのために頑張って貯金したんですから」

 ちゃめっ気たっぷりに笑う表情の奥に、絶対に実現させるという強い思いが見えた。

老いの心得
●楽しいほうを選ぶ
●ひとりで行動する
●未来に夢を持つ

小暮涼子さん●子ども3人を育て上げ、リタイアした夫とふたり暮らしを謳歌中。雑誌『ナチュリラ』の取材を機に、Webマガジン「暮らしとおしゃれの編集室」にて連載をスタート。このたび、その連載をまとめた初の著書『60代大人暮らしの衣食住』を上梓。

取材・文/野沢恭恵 写真/小暮涼子さん本人

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