Vリーグ女子で東海大の連覇メンバーが活躍中 仲間からライバルになって切磋琢磨する3人

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2024年01月05日 11:01  webスポルティーバ

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Vリーグ注目の若手選手

女子編

(男子編:205cmのミドルブロッカー、パナソニックでレギュラーを奪取した2人も>>)

【身長159cmの闘志溢れるセッター】

 Vリーグで活躍する若手選手は、男子だけでなく女子にも多い。

 全日本大学女子選手権大会で、過去9度の優勝を誇る東海大学。直近でいえば第68回大会(2021年)、第69回大会(2022年)で連覇を果たし、その立役者となった選手たちが今季から戦いの舞台をVリーグに移している。

 そのうちのひとりで、NECレッドロケッツのセッターとして活躍する中川つかさ(23歳)は、さっそく皇后杯で優勝を味わった。決勝では二枚替えで投入され、試合後には表彰式で打ち上げられた金色のテープを、リボン替わりに後ろ髪にくくりつけて喜びを表現した。

 だが、その胸の内を聞くと複雑な心境がうかがえた。

「自分の起用については、チームがいいほうを選んでいると思います。もちろんチームが勝つのが一番うれしいし、先発でも二枚替えでも貢献したいのですが......。やっぱり自分がコートに立って、優勝を自分の手で掴み取りたいという気持ちがある。うれしさ半分、個人としては悔しさも半分、といった感じです」

 やるからにはコートに立ちたい。挑むからには勝ちたい。そんな勝ち気な性格が、これまでの競技人生で数々のタイトルを呼び込んできた。中学、高校、大学といずれも日本一を経験。さらにU20日本代表として、2019年にはU20世界選手権優勝、かつ大会ベストセッターという勲章も得た。

 まぎれもなく同年代を代表するセッターだが、Vリーグに入ってからは壁にぶつかった。これまでとは「違う種類のトス」を追求する必要が出てきたのである。

「速さもあって、かつ高い位置で打たせるトス、ですね。私は学生時代、『高い位置で打たせる=ゆっくりなトス』という感覚で上げていたので、今までやったことがなかったんですが、本当に難しい。まだ課題として残っていて、自分の中でしっくりきたトスが1本もありません」

 未知の領域で奮闘し、「それができれば、視野も広がるだろうなと思うんです」と意気込む。できない自分にも負けたくない、というのが中川の性分だ。

「(身長が)小さいのに、安定感がないと試合で使い物にならないと思うので。コートに立ち続けられる精神力や安定感も磨いていきたいです」

 身長159cmの体には、目いっぱいの闘争心が宿っている。

【ポジション転向もレギュラーに】

 東海大学を卒業してからポジションを転向し、その上でコートに立っているのが、デンソーエアリービーズの山下晴奈(23歳)。現在はアウトサイドヒッター、いわゆるレフトでプレーする。これまでプレーした経験はなく、高校時代はライト側からのアタックを仕掛けるミドルブロッカー、大学ではセッター対角に入っていた。

「レフトとライトでは、トスへのアプローチがまったく違う。最初はかなり苦労して、『リーグ戦えるかな!?』という感じでした(笑)。それでも徐々に慣れてきて、決定打は増えてきたかなと思います」

 不慣れなポジションながら、今季は開幕戦から先発の座を射止めた。「スタートで、しかもレフトでプレーするなんて予想外。大学時代には想像もしていなかっただろうな」と微笑む山下だが、実のところ、大学4年目は苦しいシーズンでもあった。

 振り返ること1年前、春先から右肩に痛みを抱え、「スパイクを打ちたくても、体が怖がってできない。思ったように腕が振れない。反対に、変に力んでしまったり......」と四苦八苦。「心と体のバランスが合わなくなってしまった」と明かす山下は、4年時の秋に手術に踏みきり、最終的には控えという立場で大学バレーを終えた。そんな経験も、今となっては財産になっている。

「それまで、ずっとスタートで出させてもらっていた分、リザーブとしての心構えだったり、『チームの中で自分がどういう存在でありたいか。どうあることが最善か』といったことを考える機会になりました。

 Vリーグに進んでも『最初から、すべてうまくはいかない』と考えていましたし、今もスタートで出られるのが当たり前ではない、と思っています。大学時代の経験があったからこそ、リザーブの選手たちの気持ちを踏まえてプレーすることができている。それは自分の新しい強みになったと感じます」

 ポジションも自らの強みもリニューアルして、1年目のシーズンを過ごしていく。

【大学時代の仲間の活躍は「うれしい」けど「負けたくない」】

 その中川や山下ら、かつてのチームメートの姿を「見てます!!」と、笑顔をのぞかせたのがヴィクトリーナ姫路の伊藤麻緒(23歳)だ。

「配信などを通して、『みんな頑張っているな〜』って。大学の仲間がそうやって頑張っているのは素直にうれしいので、『自分も頑張りたいな』と。でも、試合では当たりたくないかも(笑)」

 伊藤もレギュラーに抜擢され、V2ではブロックの数字でリーグ上位に名を連ねている。ミドルブロッカーとしての持ち味を存分に発揮する一方、皇后杯ではこんな印象深いワンシーンがあった。

 JTマーヴェラスとの準々決勝。伊藤はサーブを打った直後のラリーで、相手ミドルブロッカーが放った強烈なクイックを見事にディグで拾い上げ、チームの得点につなげたのだ。

「私はサーブが得意なわけではないので、Aパス(セッターが動かずトスが上げられる位置へのパス)が返ったら(相手のセッターが)ミドルブロッカーを使ってくるのはほぼ読めていた、というか......。その前にも同様のケースがあったので、『サーブで決められない分、レシーブを上げてやる』という気持ちでした」

 ローテーションにおいて一度しかない、後衛のシチュエーションで披露したファインプレーに、仲間たちも頭をなでて祝福。「周りのすごい選手たちに『ナイス!!』と言ってもらえる瞬間があるからこそ、思いきってプレーができています」と伊藤は振り返った。

 井上愛里沙や宮部藍梨といった日本代表を擁しながら、姫路はV2、いわゆる2部リーグで戦っているが、ルーキーの伊藤は「カテゴリーがどこであれ、自分の力をVリーグでどれだけ試せるか。それは試合に出ないとわからないことなので」と意に介さず。チームの一員として勝利を追い求めるのはもちろんだが、前提として"試合に出る"。その考えは中川と共通する。

 いずれは大学の同期たちとの対戦が実現するかもしれないが、「その時はもちろん勝つ気でいます。でも、それは向こうも同じでしょうから」と伊藤。それと同じような言葉を、デンソーの山下も口にしていた。

「『負けたくない!!』ってなりますね。大学の4年生の時に味わったそれぞれの苦労をお互いに知っている分、Vリーグで試合に出ていたら応援したくなるし、うれしい。でも、自分も負けずに頑張ろう、と刺激にもなっています」

 ともに切磋琢磨する関係は、この先のVリーグでも続いていく。

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