根尾昂は先発か?リリーフか? 今中慎二が語る「一軍レベル」になるために必要なもの

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2024年01月11日 07:21  webスポルティーバ

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 2022年のシーズン中に投手へ転向し、昨年は先発ピッチャーに挑戦した根尾昂。一軍での登板はシーズン終盤での2試合にとどまるも、12.2回を投げて防御率0.71(勝敗はつかず)と数字上では一定の成績を残した。

 今年は先発での登板数増加やプロ初勝利が期待されるが、そんな根尾を、かつての中日のエース・今中慎二はどう見ているのか。昨年のピッチングを振り返るとともに、新シーズンに向けた課題などを聞いた。

【まず、自分の立ち位置を理解すべき】

――昨年の根尾投手は9月18日の広島戦で先発し、6.2回を4失点(自責点0)。2回目の登板となった9月30日の巨人戦では6回1失点と好投しました。ファームの結果(23試合登板・先発9試合、0勝7敗、防御率3.43)も踏まえ、昨年のピッチングをどう見ていましたか?

今中慎二(以下:今中) なんとも言えません。「おっ!」というインパクトがあまりないんです。ファームではずっと打たれていて、フォアボールを出して......の繰り返しでした。シーズン終盤に一軍で投げましたが、状態がよくて一軍に上がったわけではないですから。

 勝った負けたは別の話で、ピッチングの内容でもうひと皮むけてくれればいいのですが......。厳しい言い方になりますが、昨年に一軍で投げた2試合の内容で満足しているようであれば、今の先発陣に根尾が入っていくのはまだ難しいと思います。

――先発ピッチャーへの挑戦1年目で、2試合だけとはいえ、最後に一軍で登板できたのは今年につながりそうでしょうか。

今中 う〜ん......というより、今の根尾はショートイニング、リリーフとして起用したほうがいいんじゃないかと思うんです。

――それは、体力や球種などが理由ですか? 昨年は、5、6回くらいから少し球威がなくなる傾向も見られました。

今中 そういう部分もあるかもしれません。ただ、僕が思うのは、まずは本人が"自分の立ち位置"を理解しないとどうしようもないということです。

 ピッチャーに転向したばかりではありますが、とにかく一軍にいないとチャンスは掴めません。根尾が一軍の先発陣の枠に入れる確率と、リリーフ陣の枠に入れる確率を考えたら、リリーフのほうがいいんじゃないかという話です。

――ピッチャー陣の状況を考えると、リリーフのほうがチャンスがありそうですか?

今中 得点力不足など今のチーム状況を考えると、ショートイニングのほうが力を出しやすいんじゃないかと。「なぜ、先発にこだわるのか」と思いますね。

繰り返しになりますが、やはり一軍にいることがすべて。特に根尾の場合はプロ入り1、2年目の選手ではありませんし、本来はシーズンを通して一軍にいないといけない。「1勝した」といったことではなく、チームのためにどれだけ投げられるか、インパクトを与えられるかといったことを考えると、リリーフのほうがいいと思います。

【スピードよりもキレがある真っ直ぐを】

――根尾投手の真っ直ぐはいかがですか?

今中 今のワンランク上を目指すぐらいのつもりで、もっと磨きをかけていかなければいけません。「スピードを上げろ」ということではなく、"キレ"を意識してほしいんです。スピードガンのコンテストではないので、150kmが出るかどうかではなく、一軍で通用するボールをどれだけ投げられるかということですね。

 バッターが真っ直ぐを狙っていても、ファウルを打たせるくらいの真っ直ぐを投げてほしい。今の根尾は「真っすぐが狙われている」と感じたら変化球を投げるタイプですが、狙われていても真っ直ぐで押し切る自信を持てるようになるのが理想です。球速は147、148kmでもいいので、そういうことができるようになれば、ピッチングを組み立てられると思います

――今は変化球でかわしてしまっている?

今中 そうですね。根尾に限らず、狙われているボールがわかるとそれを避けるバッテリーが多い。ただ、狙われているとわかっていても、そこで勝負しないといけない場面もたくさんありますから。例えばカウントでボールが先行している時に、「ここは真っ直ぐ1本でしのぐ」というところで変化球を投げ、それがボールになってフォアボールを出してしまう、なんていうケースもよく見ます。

 狙われているとわかっていても、真っ直ぐにキレがあればファウルを打たせることもできるし、ちょっとバットの芯を外せば内野フライや凡打になる。そこまで自信を持てるような真っ直ぐを投げられるようになったら一軍レベルの投手です。これは、他のピッチャーにも言えることですけどね。もしくは、ボールが先行した時に絶対にストライクが取れる変化球を身につける、ということでもいいかもしれませんが。

――根尾投手の投球全体における変化球の割合はフォーク(約30%)が多く、次にスライダー(約14%)、カーブ(約4%)の順になります。変化球についてはいかがですか?

今中 フォークは精度を高めていきたいところですが、抑えていけばどんどん自信がついていくものです。カーブに関しては、投げることで投球フォームのバランスがよくなるメリットもありますし、いいと思いますよ。カーブは投げられるピッチャーと投げられないピッチャーがいますが、投げられるなら緩急をつける意味でも使っていったほうがいいと思います。

――あらためて、新シーズンを一軍で過ごすために必要なことは?

今中 先ほども言ったように、今の中日のピッチャー陣を見るとリリーフのほうがチャンスがあるし、チームから認められる可能性も高くなります。二軍にいるようでは認められませんし、一軍と二軍を行ったり来たりする選手になってしまう。

 とにかく一軍にいること。リリーフでも、最初はビハインドの試合での登板になるかもしれませんが、そこで結果を出していけば勝ちパターンで起用されるようになりますし、チームにとって必要な選手になれると思いますよ。

【プロフィール】

◆今中慎二(いまなか・しんじ)

1971年3月6日大阪府生まれ。左投左打。1989年、大阪桐蔭高校からドラフト1位で中日ドラゴンズに入団。2年目から二桁勝利を挙げ、1993年には沢村賞、最多賞(17勝)、最多奪三振賞(247個)、ゴールデングラブ賞、ベストナインと、投手タイトルを独占した。また、同年からは4年連続で開幕投手を務める。2001年シーズン終了後、現役引退を決意。現在はプロ野球解説者などで活躍中。

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