ハース小松代表「私は政治的なかけひきをしません。全員と話をする」チーム代表交代の狙いとオーナーの強い期待

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2024年01月19日 08:40  AUTOSPORT web

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ハースF1のチーム代表に就任した小松礼雄氏(写真左)と、ハースF1のチームオーナーであるジーン・ハース氏(写真右)
 ハースF1の新チーム代表である小松礼雄氏は、チームオーナーのジーン・ハースのF1に対する確固たる取り組みについて、チームのファンを安心させるために前に進み出た。先週、ハースは長年チーム代表を務めたギュンター・シュタイナーとテクニカルディレクターのシモーネ・レスタの離脱、およびエンジニアリングディレクターだった小松氏のチーム代表就任を発表した。この変更により、ハースの方向性と、ますます競争が激化するF1環境でレースをするチームの能力に関して必然的に疑問が生じた。

 2016年のチーム発足時から在籍している小松氏は、こうした変化に伴う懸念を認識しているが、ジーン・ハースは引き続きF1に全力で取り組んでいると主張している。1月17日の水曜日、小松氏は「ジーンがどれほど不満だったか、見聞きされていたのは明らかです」と、チーム代表に就任して以来初めて複数のメディアを対象とした取材に答えた。

「当然ですが、最下位を争って喜ぶ人がいるでしょうか? それは本当にきまりの悪いことです。我々の状況にジーンが不満を抱いていることは間違いないと思います。チームメンバーが『我々は最下位で、どこへ進むのか分からないが、ジーンは何も言わないので問題ない』と考えているとしたら、ジーンはただポイントを集めて10位になることに満足だということになるのでしょうか? そうではないことは明らかです」

「そのことは実際に、ここにいる全員のモチベーションになっているのです。『ジーンは真剣だし、チームを改善したいと思っているのだから、一緒に取り組もう』ということです。彼は間違いなくコミットしています。そうでなければ、彼はこの変化を起こすこと、つまり方向を変える必要はありません。これは彼にとっても大きなことなのです」

「ご存知のように、ギュンターはチームを軌道に乗せるのに貢献しました。ジーンが行ったことと彼が下した決断ですが、もし彼がコミットしていなかったら行っていたでしょうか?」

 小松氏はハースF1のチーム代表就任して以来、チームの運営とパフォーマンスの詳細な評価に着手し、チームの強みや弱み、および改善すべき領域を明確に理解しようと努めている。ここ数週間、エンジニア、メカニック、サポートスタッフを含むチームのさまざまなメンバーと向き合うことに専念してきた。

「もちろん、私は改善に重点を置いています。私は自分に十分な正しさがあると考えたいですし、十分礼儀を尽くしていると言いたいと思います。私はかなり率直ですし、透明性と誠実さがあると思います。私は政治的なかけひきをしません。正しい意図を持ち、チームから最大限の力を引き出すという動機が明確であれば、それはスタッフに伝わり、彼らに力を与えて団結させることができると私は考えています」

「私はイタリアに行き、そこにいるデザイナーやエアロダイナミシストの全員と会います。その分野について私は理解をさらに深める必要があります。核心的な問題は何か? どうすればそれを改善できるか、ということについてです」

「ここにいる何人かと話をしましたが、まだ全員と話したわけではありません。ですので、全員と話をするまで待ちたいと思います。『この3日間で私はこのことを特定した』と言うのは、正しい表現ではないかもしれませんから、それよりもみんなを集めて全体像をまとめます」

 小松氏は現段階で最終的な判断を下すことに慎重な姿勢を崩さないが、イギリスとイタリアの施設間のコミュニケーションと連携の強化が、重要な焦点分野になると指摘した。

「もちろんですが、白紙の状態から始めるのであれば、F1チームを設立するのにイギリスとイタリアにふたつの別々のファクトリーを持つことはしないでしょう。しかしそれが我々の始め方だったのです。これは2016年、2017年、2018年に軌道に乗る際には非常に有益でした。その後、当然ながら状況は変化していますし、特定のレギュレーション変更もあるので、チームは進化する必要があります」

「こうしたことは継続的に評価する必要があります。しかし、繰り返しになりますが、ここにイギリスのオフィスがあり、向こうにイタリアのオフィスがあるというのは理想的なことでしょうか? そうではないでしょう。では、それが主な制約になっているのでしょうか? そうではありません。もっとうまくできるでしょうか? もちろんできます。それが私が焦点を当てていることです」

「もし自分たちの体制を最大限に活用しても、『今の体制ではこれ以上のことはできない』ということになったら、(状況を変えることについて)話し合いができるでしょう」

■変化を起こしたのは「いるべき位置にいなかったから」

 ハースの組織再編の重要な側面のひとつは、ヨーロッパを拠点とする最高執行責任者(COO)の採用だ。小松氏がコース上のパフォーマンスのみに集中できるように、COOがコース外の責任を引き継ぐことになる。この戦略的な動きは、運営を効率化し、チームのリソースを最適化することを目的としている。シュタイナーとジーン・ハースの間ではこの点が問題になっていたという。

 小松氏は、アルファタウリ、ウイリアムズ、ザウバーなどのライバルチームが多額の投資を行っていることや、アンドレッティがこのスポーツに参入する可能性があることに言及している。こうした展開が課題を生み出すことを小松氏は、認めているが、引き続きハースの適応力と競争力に自信を持っている。

「これは大変厳しいビジネスですが、現在の体制で何ができるかということについては、非常に前向きでいます。そうして現在の体制を改善するにつれて、特定のことが非常に明白になり、自然に決断を下せるようになると思います。『元のモデルからわずかにそれる必要があるので、このように投資する必要があるかもしれない』といったようにです」

「無理に行うというよりも、自然に出てくるものだと思います。私はこの場をひっくり返すためにここにいるわけではありません。そうしたら我々は活動できなくなり、停止してしまうからです」

「たとえすぐに巨額の投資が行われたとしても、適切に動くことはできず、適切に投資を活用することもできないでしょう。ですから、組織的に成長しなければなりません」

「2023年に我々はいるべき位置にいませんでした。それが変化を起こすことにした理由です。だからといって、いきなり大きな飛躍をすることはできません。そうしてしまったら、2024年は大失敗になるでしょう。2024年に我々はチームを改善しなければならないのです」

「私はこれを過渡期だと考えています。そして2024年の1年間に何を学んだとしても、それは5年後、8年後、もしくは10年後に何をするかということを明確に定義するのに役立つと確信しています」
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