【武蔵×武尊】K-1ヘビー級で戦っていた憧れの武蔵を見て、武尊が磨いた必殺技とは?

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2024年01月27日 11:01  webスポルティーバ

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武蔵×武尊 スペシャル対談 前編

 元K-1三階級制覇王者の武尊と、1990年から2000年代のK-1で活躍した日本随一のヘビー級戦士・武蔵による初対談が実現した。ふたりは、運営体制は異なるも、年代を越えて立ち技系格闘技大会K-1で世界の強豪と闘ってきた。共に空手の「正道会館」出身で先輩・後輩となるが、意外にも今回が初対面だという。

 1月28日に有明アリーナでのONEチャンピオンシップの「ONE165」で、ONEフライ級世界王者のスーパーレック・キアトモー9(タイ)に挑む武尊が、"レジェンド"武蔵と思いの丈を語り合った対談を3回に分けて掲載。前編は、お互いのバックボーンである空手と、キックボクシングに挑戦した時に苦労したことを語った。

【武蔵から見た武尊は「本物」のファイター】

――おふたりが初対面なのは意外でした。まずは武蔵さんの、武尊選手の印象を聞かせてください。

武蔵 世の中にファイターは星の数ほどいますけど、「本物」と言える選手は少ない。その中で武尊くんは「本物だなぁ」と試合を見させてもらっていました。ファイターにとって勝敗はもちろんですが、それ以上に、応援している人たちを試合で魅了することが大切。リングでは"生き様"が見えますから。

 ただ、今の格闘技界には、強さを追求する前に口ゲンカが強い選手が多くて、「本物」と思えるヤツが本当に少ない。その点、武尊くんはリング外の発言やパフォーマンスでアピールしなくても、試合を見たくなる選手。試合だけでファンを魅了する覚悟が感じられますし、「プロだ」とも思いますね。

武尊 ありがとうございます。僕も武蔵さんにずっとお会いしたくて、いろいろお話したかったので今回は光栄ですし、そのように見ていただけているのはすごく嬉しいです。

 僕がK-1を見始めたのが、小学1年生くらい(1998年頃)からなんですけど、ちょうど武蔵さんが活躍されていた時代でした。ピーター・アーツさん、アンディ・フグさん、アーネスト・ホーストさん、マイク・ベルナルドさん......デカくて、とてつもなく強い外国人選手が席巻するリングで、日本人の武蔵さんが"世界と闘っている"姿がすごくカッコよかった。

 あと、リングネームに武士の「武」が入っていて、僕の名前と一緒だったこともあって憧れていました。

武蔵 さっき武尊くんのプロフィールを見たんやけど、俺がK-1にデビューした時(1995年9月3日、横浜アリーナでのパトリック・スミス戦)は4歳だったんだね(笑)。ビックリしたわ!

武尊 ハハハ、1991年生まれですからね(笑)。

武蔵 生まれてきてくれてありがとう!(笑)。さっきも言ってたけど、K-1を見始めた頃の俺の印象はどうだった?

武尊 当時、僕は武蔵さんと同じ正道会館(四国本部米子支部)で空手をやっていたので、武蔵さんやフグさんとか、空手の選手がすごく好きで応援していました。僕は体があまり大きくなかったので、2m近い外国人選手に武蔵さんが挑んでいるのを見て「体が小さくても、大きい人に勝てるんだ」と勇気をもらっていました。

【武蔵を見て練習した左ミドル】

――空手をやっていた時代に、武蔵さんの試合などを見て参考にした技などはありましたか?

武尊 武蔵さんは構えを左右にスイッチしましたが、正道会館で僕もスイッチを教えてもらっていたので、僕も同じように闘っていました。特に、武蔵さんのサウスポー構えがカッコよくて、その時の左ミドルの軌道がめちゃくちゃきれいでしたね。

 僕は昔から左ミドルが得意で、空手時代からサウスポー構えで左ミドルをめちゃくちゃ蹴っていたんです。今でも、構えはオーソドックスですけど、左ミドルは得意ですね。それは武蔵さんの左ミドルに憧れて練習した賜物ですし、感謝しています。

武蔵 そう言ってくれるのは嬉しいけど......正直、俺の試合を見ただけで武尊くんが左ミドルを得意になったのは才能がある証拠。天性だよ。

武尊 いえいえ、武蔵さんのおかげです(笑)。ちなみに、左ミドルを蹴る時のポイントはどこに置いていたんですか?

武蔵 膝の角度かな。相手の蹴りが「ハイキックなのか、ミドルキックなのか」を見極めるために見る部分だよね。膝が高い位置まで上がらなければミドルで、高ければハイキックと判断する。だから、蹴りを出す時に膝の高さをハイの位置にすれば、相手は顔面をガードするからレバーがガラ空きになる。

 だから俺は、膝をハイの位置に上げてからのミドルが得意で。ハイキックのように見せてミドルを蹴ると、相手はみんなそれにハマってくれたよ。これは、空手で学んだ蹴りだから、空手出身の武尊くんもできると思うよ。

武尊 子どもの頃は、武蔵さんの蹴りとか、(極真空手のブラジル人選手だった)フランシスコ・フィリオさん、グラウべ・フェイトーザさんの「ブラジリアンキック(股関節を内旋させてキックの軌道を変え、蹴り足を振り下ろす蹴り技)」を見よう見まねで、自分の感覚で練習していました。

 実は、昨年6月24日のパリでの試合(ベイリー・サグデンに5回KO勝利)も左ハイで倒したんですけど、あれは相手の死角からくる空手の蹴りです。試合が終わった時に、「空手時代の蹴りが自分の中に残っていたんだ」と思いました。

武蔵 あの試合は俺も見ていて、「あの蹴りは空手だな」と思ったけど、やっぱりそうやったんか。例えば、仮面ライダーの「ライダーキック」じゃないけど、自分で必殺技と思える武器があれば、試合で危ない状況に陥った時も起死回生で逆転することができる。ハイでもミドルでも、武尊くんの左からの蹴りは、まさに必殺技だと思うよ。

【K-1に参戦した時の苦労】

武尊 僕もそうですが、武蔵さんも空手からK-1に参戦して、顔面への打撃ありのグローブをつけての闘いに挑戦しましたよね。その時は難しかったんじゃないですか?

武蔵 空手からK-1に参戦する時は、「一度、完全に空手を捨てよう」と思ったよ。空手は接近して闘うけど、キックボクシングはそうじゃない。距離感がまったく違うから、キックのスタイルをイチから覚えようと思って、蹴り方も変えたね。

武尊 まさに僕も同じで、距離感がすごく難しかったです。グローブをつけて相手と対峙した時、パンチの距離になった瞬間に全然違いました。あと、なかなかガードも上げられなくて。イチからボクシングを習って徐々に変わっていきましたが、「空手で培った固定概念を壊さないと順応できない」と思い知らされました。

(2011年9月に)デビューした当初は、試合でもパンチをすごくもらって効かされることが多くて。蹴りでは勝てるのに、パンチの攻防になると押されちゃうので、「どうにかしないと」と思っていました。

武蔵 それにはどう対応したの?

武尊 構えを変えました。僕は、いまだにディフェンスよりオフェンスを重視していて、「当てられる前に当てちゃえ」みたいな感覚があるんです。なので、ディフェンスはそんなにうまくないんですけど......ボクシングのようなパンチの攻防になると、上半身を使わないとパンチを打てないので、上半身で打てるようなスタンス、構え、重心の置き方を空手時代とは完全に変えて、それで対応できるようになりました。

武蔵 距離感の克服は、すごくよくわかるよ。俺のミドルは空手時代から使っていたけど、それをK-1でも使い始めたのは参戦してからだいぶ経ったあと、キャリアの後半くらいからだった。キックボクシングでは、相手との距離が近い空手で使えるような"撃ち落とす蹴り"はできなかった。それが、経験を積んでいくうちに距離感に対応できて、「空手時代に使っていたミドルを出せる」と使い始めたんだ。

武尊 そうだったんですか。ホントに、距離感の克服は難しいですよね。

武蔵 あと、さっき武尊くんは「当てられる前に当てちゃえ」と言ったけど、俺の場合はヘビー級だったから、一発で試合が終わるリスクもあった。だから、どちらかというとディフェンスに重きを置いてたね。

 自分より体重が10〜20キロくらい重い、100キロ超えの選手たちと闘っていたから、ガードの上からパンチや蹴りをもらうだけでバランスを崩して危なかったから。ヘビー級では、「まずは相手の技を外すことが大事だ」と思っていたから、それを徹底してたよ。

(中編:武蔵と武尊が明かすK-1の過酷な闘いの日々 「負けたら終わり」と考えていた理由>>)

【プロフィール】
■武蔵(むさし)

1972年10月17日生まれ、大阪府出身。1995年に「K-1 REVENGE II」でのK-1デビュー戦を2ラウンドKO勝ちで飾る。その後、K-1 JAPAN GPを4度制覇し、2003年、2004年にはK-1 WORLD GPにおいて、2年連続で準優勝を成し遂げるなど、強豪ひしめくヘビー級で活躍した。現役時代の戦績は85戦49勝(19KO)30敗5分1無効試合。2009年に引退後は、バラエティやYouTubeなど幅広く活躍している。

◇武蔵チャンネル>>

■武尊(たける)

1991年7月29日生まれ、鳥取県出身。2011年9月24日、「Krush.12」でプロデビュー。2015年4月に初代K-1スーパー・バンタム級王座決定トーナメント、2016年11月に初代K-1フェザー級王座決定トーナメントを制して2階級制覇を達成。2018年3月の「K'FESTA.1」では第4代K-1スーパー・フェザー級王座決定トーナメントで優勝し、前人未到・K-1史上初の3階級制覇を成し遂げる。2022年6月に中立のリングで那須川天心と対戦。その後、ONEチャンピオンシップと契約を結び、2024年1月28日にONEデビュー戦を迎える。戦績は43戦41勝(25KO)2敗。

◇『ONE165』スーパーレックvs武尊はアベマで国内独占配信

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