山下智久さんが演じる、嘘のつけない不動産営業マン・永瀬財地が活躍する不動産業界のお仕事コメディーシリーズ第2弾「正直不動産2」(NHK総合)。
1月16日に放送された第2話の内容を踏まえ、不動産を借りる場面で住宅業界のここだけは気をつけたいポイントを確認していきましょう。
第2話のおさらい、ネタバレ
永瀬財地とその同僚の月下咲良(福原遥)は、顧客が売却を希望する空き家の調査に訪れたが、その家には顧客の父と息子が現在も住んでいることが明らかになる。永瀬が家族間での話し合いを求めると、怒った顧客は永瀬のかつての師匠でライバル不動産会社の神木涼真(ディーン・フジオカ)に相談。神木は、現在住んでいる2人には家の所有権がないと主張し、不用品回収業者を使って家具などを勝手に家から運び出そうとするが……。
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賃貸借契約で借りている人は守られている
今回の「正直不動産」は、顧客の父と息子が家に10年間住んでおり、使用貸借契約(不動産等をタダで借りる契約)が成立するケースでした。結局、2人は今まで通り同じ家に住み続けることができました。一方、不動産等を有償で借りる契約を賃貸借契約といいます。家を賃貸で借りている場合にも、勝手に家具などを運び出され、追い出されるといったことはあるのでしょうか。
基本的には、家賃をきちんと支払っている限り、住人はその家に住む権利があります。しかし家賃の滞納が続くと、その家に住み続けられる権利を失います。裁判所の手続きを経た強制執行により、家から退去させられ、家具なども運び出されてしまうことがあります。もっとも、1カ月や2カ月の滞納があったからといって、すぐには強制執行されないというのが実際のところです。
ましてや今回のドラマのように、適正な強制執行ではなく、勝手に他人の持ち物である家具などを運び出すことは違法行為にも該当します。
また、賃貸中の不動産物件が新しい所有者に代わったとしても、オーナーチェンジの物件として扱われ、これまでの賃貸借契約は新しい所有者に引き継がれることになります。このため、やはり勝手に家具などを運び出されたり、追い出されたりすることはありません。
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不動産のリスク説明、あなたはちゃんと受けた?
ここまで述べてきたように、借りている不動産が売買された場合でも、これまでの賃貸借契約が新しい所有者に引き継がれ、勝手に家具などを運び出されることもなければ、追い出されることもありません。一方、不動産が競売(裁判手続きで強制的に所有者が所有権を失うこと)にかけられ、所有者が代わった場合にはリスクがあります。ところが、賃貸の不動産営業マンがこのリスクを十分に理解していない、もしくは、しっかりと顧客に説明していないことがあります。
賃貸物件に抵当権の登記がある場合には、契約の前の重要事項説明で説明しなければならないのですが、書面には記載してあるものの、「登記簿に記載された事項はこの通りです」といったように、説明になっていない説明をしている場合もあるのではないでしょうか。
ここで、借りている不動産が競売になった場合の2つのリスクを確認しておきましょう。
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次に、2点目としては、これまでの賃貸借契約は終了してしまうので、敷金が新しい所有者に承継されることもないことです。つまり、敷金は元の所有者から返してもらうことになりますが、抵当権を実行されるくらいの経済状況ですから、支払能力はなく、敷金が返ってこない可能性が高いといえます。
まれなケースとはいえ、抵当権付きの建物に住む場合には敷金が返ってこないことがあることを知っておきましょう。
もっとも、大家さんの経済状況を知る術もなく、かといって、抵当権が付いていない物件や敷金ゼロの物件の中だけからお家を選ぶとなると、選択肢が狭められることにもなり、不動産を借りる方にとっては悩みどころかもしれません。
これから賃貸借契約を予定している方や既に賃貸物件に住んでいるという方は、重要事項説明書の「登記簿に記載された事項」という項目の「乙区」という箇所を確認してみてください。
ここに、「抵当権」や「根抵当権」などの文字があれば、競売になった場合のリスクを抱えていることになりますし、これをしっかり説明している不動産営業マンこそ「正直不動産」といえるのではないでしょうか。
文:みちば まなぶ(ファイナンシャルプランナー)
大学卒業後、大手ハウスメーカーや不動産業者などを経て、住宅ローンを切り口に、住宅購入をはじめとしたライフプランニングを提案する1級FP技能士。
(文:All About 編集部)