サッカー日本代表の危なげなく見えたバーレーン戦に問題点 イラン戦に向けて課題は?

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2024年02月02日 17:31  webスポルティーバ

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サッカー日本代表はアジアカップのベスト8へ進出したが、次のイランは日本と互角の実力でこれまでの4試合とはまったく違う試合になる可能性が高い。そこを踏まえて見ると、バーレーン戦でも見過ごせない問題点がいくつかある。

【前半はほぼ敵陣でプレー】

 最終スコア3−1で日本が勝利したアジアカップのラウンド16は、対戦相手となったバーレーンとの力量の差がはっきりと出た試合となった。

 確かに63分に相手コーナーキックから2−1と追い詰められた時間帯は不穏な空気が漂ったが、その9分後にはオウンゴールを記録した上田綺世が汚名返上の股抜きシュートを決めて勝負あり。今大会目立っている"個の力"がこの試合でも威力を発揮し、日本が危なげなく準々決勝に駒を進めた。

 日本にとっては試合展開も理想的だった。黒星を喫したイラク戦と同じ轍を踏まないよう、試合序盤をセーフティに切り抜けると、前半は日本がほぼ敵陣でプレーするという一方的な展開。そのなかで、32分に毎熊晟矢のミドルシュートがポストに当たった跳ね返りを堂安律が詰めて先制することができた。

 先行逃げきりは日本が得意とする試合展開で、そこからは後半の試合運びも含めておおむね筋書きどおりだったと言っていいだろう。

 では、日本の目標であるアジアカップ優勝に向けた課題はないのか。中2日で行なわれる準々決勝のイラン戦を迎える前に、改めてこのバーレーン戦を前半と後半に分けて振り返ってみたい。

 韓国のいるグループEを首位突破したバーレーンは、予想どおり4−1−4−1の布陣を採用した。

 かつてチリ代表やサウジアラビア代表を率いた経験を持つスペイン人のフアン・アントニオ・ピッツィ監督の狙いは、日本が苦戦したイラク戦と同様。長身1トップの9番(アブドゥラー・ユスフ・ヘラル)にロングボールを当ててセカンドボールを回収する戦法で、なるべく中盤を省略することで日本のプレスを回避しようとした。

 ただし、それはイラク戦を経験した日本も想定済み。9番をマークした冨安健洋が抜群のうまさと強さを発揮して個の能力で上回ると、ボランチを中心にセカンドボールの回収もできていた。また、相手センターバック(CB)が自由にロングボールを蹴れないよう、前線では上田と久保建英らがプレッシャーをかけるシーンも目立っていた。

 序盤からボールを蹴っては日本に回収されるという、ある意味で最悪のパターンに陥ったバーレーンは、時間の経過とともに攻め手を失い、前進もままならない状態に陥った。結局、前半立ち上がり5分でバーレーンの40%対日本の60%だったボール支配率は、15分の段階で34.2%対65.8%。前半終了時点では、39.5%対60.5%だった。

【ドリブルで剥がせる選手がいない前半に攻撃が停滞】

 一方、前半を通して危なげない守備を見せていた日本だったが、攻撃は機能していたとは言い難いものがあった。これだけボールを保持していながら、シュート数は7本で、そのうち枠内シュートは2本のみ(10分のコーナーキックで上田がヘッドで狙ったシュートと堂安のゴール)。相手守備網を破ったと言えるような決定機は一度もなかった。

 ボールを保持しながら日本がバーレーンの守備を崩せなかった理由は、相手の守備方法と無関係ではなかった。

 日本の陣形は4−2−3−1だったが、相手が4−1−4−1の陣形であることを確認すると、ボランチの一角を務めた旗手怜央が前に上がって4−1−4−1(4−3−3)にシフトチェンジ。相手のワンボランチだった6番(モハメド・アル・ハルダン)の両脇のスペースに久保と旗手が立つことで、ボールの受け手となった。

 多くのチームは、相手にライン間でボールを受けさせまいと立ち位置を変えながら守るケースが多いが、バーレーンは違った。基本のゾーンディフェンスで自分たちの陣形を保ちながら、ボールがライン間に入ったところで受け手に網をかけた。

 たとえるなら、アコーディオンを広げた状態にして、相手のパスが懐に入ったタイミングでアコーディオンを収縮してボールを奪う、といったイメージだ。

 しかも網の中央にいる6番のポジショニングは抜群で、ボール回収能力も高かった。全体もコンパクトさが保たれていたため、日本はアタッキングサードでボールを受けた後の展開に苦しんだ。ラウンド16は一発勝負ということもあり、日本がカウンターを警戒して慎重になった部分もあるだろう。

 パスだけでは崩せない状況となった場合、ミドルシュートやドリブルが相手を動かす最大の武器となる。しかし、この試合ではパスを受けた後にドリブルではがせる戦力の三笘薫と伊東純也がベンチスタートだったことも、攻撃の停滞に拍車をかけた。

 その意味でも、6番の数少ないポジショニングのミスがあったとはいえ、先制点につながった毎熊のミドルシュートは値千金だった。

【交代策で失点前に悪い流れを断ちきれなかったか】

 日本にとって追い風となったのは、後半開始直後の49分に久保が追加点を決めたことだ。これにより、2点のビハインドを背負ったバーレーンはあとがなくなり、前に出ざるを得なくなった。カウンターを得意とする日本にとっては、最高のシナリオだ。

 ところが、日本はカウンターで追加点を狙うという意識より、2点リードしたことで相手の前に出る勢いに押されてしまい、受けに回る展開となってしまった。これは、この試合における大きな反省点だろう。

 実際、63分にはその流れのなかでバーレーンに1点を献上。森保一監督はその4分後に三笘と南野拓実を投入したが、できれば2点目を決めた後に流れが悪くなったタイミングで、少なくとも三笘はピッチに送り込みたかったところだ。その後、再三にわたって三笘の突破力が多くの決定機を演出したことを考えると、なおさらだ。

 結果的に、雲行きが怪しくなったところで上田が加点して大ごとにはならなかったが、実力差が拮抗する相手と戦う準々決勝以降の試合では、こういった采配が後手に回る原因となる可能性はある。

 そして、再び2点差となったところでバーレーンは長身の14番(アブドゥラ・アル・ハサッシュ)を起用。身長194cmの9番と191cmの14番による大型2トップを前線に配置する4−4−2の布陣にシフトチェンジすると、日本ベンチはその3分後に、堂安と上田に代わって町田浩樹と浅野拓磨を投入して、町田、冨安、板倉滉の3枚のCBを配置する3−4−2−1(5−4−1)に陣形を切り替えた。

 これは、長身2トップに対してひとりを余らせるという守備的な戦術変更だ。それが奏功し、その後も相手にほとんどチャンスを与えず、逆にカウンターから決定機を作り出すことに成功した。

 そのなかで追加点を決められなかったのは問題だが、アディショナルタイムのパス回しを含めて、勝っているチームが試合を終わらせる戦い方ができたことは、この試合で得られた収穫のひとつと言える。

【準々決勝イラン戦は日本にアドバンテージ】

 カウンターメインとなった後半はボール支配率が低下したため、最終的にはバーレーンの46.8%に対し、日本は53.2%となった。ただ、そのなかでも6本のシュートと3本の枠内シュートを記録しており、およそ試合展開を反映したスタッツとなっている。

 準々決勝で対戦するイランは、日本と互角に戦える実力を持つチームだ。これまでの4試合とはまったく違う試合になる可能性は高い。そのなかで、まだ波に乗りきっていない状態の日本が、予想される接戦をものにできるかどうか。そこが注目される。

 幸い、日本戦の後に行なわれたラウンド16のシリア戦では、ヨーロッパサッカーでもお馴染みのエースのメフディ・タレミ(ポルト所属)がレッドカードをもらい、日本戦は出場停止。さらに延長の末にPK戦で勝ち上がったため、中2日の準々決勝はコンディション的に日本にアドバンテージがあることは間違いない。

 その優位性を生かして、準決勝に駒を進められるか。3日の試合は正念場になりそうだ。

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