「コミティア」の出張編集部でマンガの持ち込みしたら「マジでいいと思った」話

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2024年02月02日 20:43  ねとらぼ

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ねとらぼ

マンガの持ち込みに行こう!

 バーチャルYouTuber、マシーナリーとも子による不定期コラム第38回。今回は、とも子がコミティアの出張編集部にマンガを持ち込みに行った体験談です。


【画像】出張編集部の持ち込み体験を見る


●マンガの持ち込みに行こう!


 こんにちは。マシーナリーとも子です。チョコ〜〜〜!!!(手塚治虫)


 みんなさ、「マンガの持ち込み」って概念知ってる? なんか…見たことあるだろフィクションとかで。


 書類袋に描いたマンガの原稿詰めてさ、デッケエ出版社のビルに立ち向かって、漫画家デビューしたいですッッッ! って読んでもらって、編集にボロクソに叩かれて泣きながら出てくるみたいな……。


 あれさ、怖すぎない? よくあんなことできるよな。


 自分で描いたマンガを生身の人間に目の前で読まれることすらそこそこ怖いし。


 それに営利企業に電話して「俺の漫画読め!」ってアポとってさ、応接室とかの四方が壁に囲まれた狭い空間で黙々と読まれるんだよ。なんか想像したら体調悪くなってきました。


 しかし……そんなハードルの高さを持つマンガ持ち込みが、ある程度気楽に、しかも効率的にできる場所があるんですわ。


 それがオリジナル同人誌の即売会「コミティア」に設けられている出張編集部です。


 今回は出張編集部に持ち込みをしてみたらなかなかいい経験になったのでそのことについてツラツラと書いてみようと思います。マジでいいと思った。


 出張編集部……それはコミティア会場に集った数多のマンガ編集部に次々とマンガの持ち込みができる効率的な持ち込みプレースなのだ! その数なんと100以上! コミティアは年に4回開催されているのだが、なんとこの出張編集部では年間5000以上のマンガが持ち込まれているという……! こりゃあ効率的だぜ!


●そもそも なんでマンガの持ち込みなんてするの


 んで、そもそもなんでマンガの持ち込みなんてしたかって言うと……ここからは自分語りになるんだけども! 別にいいでしょイベントレポじゃなくてコラムなんだから……語るぜ!?


 2022年に『ジャンプ+』にマンガを連載してたんだよね。もう終わったんだけど。


 で、その後もいろいろマンガの企画やらネームやらをたくさん描いたりしてるんだけど、単純にボツになったりとか、公開までタイムラグがあったりとか、色々戦略的判断で保留になったりとかで世にマンガがあんまり出せてなかったわけ。「おれは毎日ものすごい量のマンガを描いているが誰にも読ませるつもりはない」という逆噴射聡一郎先生状態になっていたわけです。


 このままではマンガ描いてるアピールだけしてるワナビ野郎に思われてしまう!


 それはカッコ悪いし、実際最近あんまり「マンガを完成させる」と言うのができてなかったなと思っちゃいまして、リハビリも兼ねて12月31日のコミケで新作マンガの同人誌で出すことにしたのでした。


 ついでに完全新作なら出版社の賞とかに出すのもアリだし、それこそ持ち込みとかして新たな取引先を営業するための名刺みたいな感じで使うのもおもしれーと思った。Kindleとかに出せば小銭が稼げるかもしれんし……。なんだ、マンガ描くのっていいことづくめじゃないか。描くか〜〜〜!!


 そんなときに2023年12月3日、「コミティア」が開催されることに気づいたので、未完成だけど描いてるマンガがあることだしせっかくだから原稿を持っていってみようと思ったのでした。


 あわよくば仕事が……もあり得るし、有用な指摘を受けたらコミケ前に反映できるかもしれないしこれまたいいことづくめじゃんと思ったわけです。何事も経験だ。損はない。


 そんなわけでまだペン入れも半分しか終わってない状態の原稿をコピー用紙に刷り、私はビッグサイトに向かったのだった。


●ボコボコにされたり褒められたり


 というわけでここからは当日のレポです。


 最初の問題は「どこに持ち込むか?」ですわな。「御社にアタイのマンガを読んで欲しいんじゃい!」と言う会社を選ぶ必要がある。選ぶのは緊張するぜ……。


 やっぱ「自分が描いたマンガを載せてくれそう」なところがいいよなあ。いくら持ち込み自由とは言え紙媒体の週刊少年誌とかはあまりにマンガ・パワーが強すぎて軽率に持っていくには緊張するぜ。


 とはいえそんなこと言ってると一生持ち込みできないので、手始めに「おっ あのweb媒体に載ってるマンガは単行本買ってるぞ」程度のノリで某社に持ち込んでみることにしたよ。私の漫画を読めー!!


 「絵もお世辞にはうまいと言えないし、話もおもしろみが無いですね〜」


 ……えっ ちょっ すごい 待って? え?


 なんか


 「マジで本当にこういうのあるんだ」


 ってどこか他人事に思えるくらいめちゃくそのボロボロに酷評された。え? すごくない? なんか……なんか勝手に現代ってこういう感じの言われ方って無いんじゃない? とか甘ったれたことを考えていたかもしれない。


 しかも


 「こっ! この野郎! 我の傑作をボロクソに言いやがって愚かな編集風情がァーっ!!」


 みたいな気持ちも全然湧かなくて、完全に的確と言えば的確というか……そりゃさあ! 「絵が下手でつまらん」って言われたらさあ!? そら面白いと思ったマンガ持って来てはいますけど……絵は下手だけどさあ!? オエッ いや自覚はある程度ありますよ!? って感じだったので「はい…はい…」って聞き入ってしまった。いやーーーーーーー。


 え、ちょっとナメてたかもしれないんだけど持ち込みってマジでこういう感じなの? え?


 そんなわけで1社目でボロクソのミソッカス扱いを受けて足腰が立たなくなった私は完全にビビってしまい、数十分「これからどうしよう…」と会場をふらふらしていた。


 そんなとき目に着いたのが……


 「あなたのマンガ褒めます!」と宣言した編集部を発見!!! こういうのもあるのか!


 ここは行ってみるしかない! これは決してビビりではない、この後もいろんな会社に持ち込むためのダメージコントロールなんだッッ! 行くぞーーーーっ!!


 「キャラがかわいいし関係性もいい感じですねぇ〜」


 めちゃめちゃ褒められた。


 さっきは「絵が下手!!」って言われたのに「絵がかわいい〜〜」って言われてめちゃめちゃ自己肯定感が上がりました。


 うおおまだ行ける! まだ回れるぞ!!


●結局のところはマッチングなのだ


 そして……結局イベントが終わるまでに6社くらいに持ち込みすることができました。大成功。


 いろんなところに読んでもらってあらためて実感したことは、本当にマンガひとつとっても意見が三者三様十人十色なんですよ。


 出版社によって人によってまったくと言っていいほど仰ることが違うんですわ。


 例えばあっちの出版社では「お話はとっ散らかってるけどすごくキャラが魅力的だね」って言われたと思ったらこっちの出版社では「お話はすごくおもしろいのにキャラが弱いですね」って言われたりするの! 


 でもそれは、あっちの出版社が合っていてあっちの言うことが間違っている……みたいな話ではなくて、それぞれの媒体の傾向であったり、ひとりひとりの経験や思い描いてる理想像の違いであったり、単に読み方、噛み砕き方……解釈の違いとも言えるかな。そういうのとか、後は単に語彙、言語化するにあたっての違いだったり……あくまでそう言うことなんだよなと言うのが実感として得られました。


 だからやっぱり、究極的には「マッチング」なんですよね。


 今まで漠然と「媒体によって合う合わないはどうしてもあるよな」と言う想いはあって……ありつつもほんとかな〜〜? 単純に「良くない」マンガを描いてるんじゃないの〜〜? みたいな不安も抱えてたんだけど、いろいろ回ってみて体感できてすげー良かったと思った。


 それと、当然読んだ編集さんから「このコマにはどういう意図があるの?」とか「どんなのが好きなの?」みたいなことを聞かれるんだけど、結構、マンガ描いてるときって無意識とかノリとか流れとかで描いちゃってることが多いので、それを言語化する機会が得られるのもいいなと思った。やっぱり頭で考えるだけじゃなくて人に聞かせるために言葉にするってすごく身体に沁み込んでいく感じがあるからな。


 あとこれはものすごく単純なことなんだけど、いろんな人からその日のうちに忖度なしの感想言ってもらえるのってすごく嬉しいなと思った。


 創作に関わる人はみんなそうだと思うけど我々が一番欲しいのって感想なんですよ。


 それが目の前の、しかも自分のこと全然知らない人が初見のマンガ読んで、思ったことを理論的に述べてくれるのってめちゃめちゃありがたいし超嬉しいので「あ、持ち込みって単純にこういう嬉しさあったんだ」って新しい視点を得ることができた。これ面白いわー。ハマりそう。


●考えてみれば贅沢な話


 そんなわけで持ち込み編集部、超いい経験になりました。


 会場でもらった意見もちゃっかり参考にして、冬コミで出した同人誌も「展開が唐突すぎるかもね」と言われたポイントの伏線をこっそり序盤に追加したりとか、「序盤で期待していた話が、オチで違う話になっちゃってオヤッと思った」って言われたりしたので「ほんじゃいっそのこと……」と思って真ん中でぶった斬って「2エピソード制の話です」ってことに無理やりした。結構いい感じに改善できたんじゃないかなあという雰囲気に仕上がって大満足です。いやー、これこそ編集さんに求めてるものだよなあ。考えてみれば6人の担当編集からアドバイスをもらった作品とも言えるので贅沢な話だ。ふつうひとりだもんな。


 そんなわけで趣味でマンガを描いてる人はコミティアの出張編集部、超おすすめです。


 直近では2月25日にコミティアがまた開催されてるし是非みんな行ってみて〜〜。ボコボコにされる可能性もあるけど。


 そしてそうそう記事中で散々触れた同人誌はBOOTHで通販・デジタル版の販売もしてるのでよろしく(宣伝)。


 あと!! 本日『ジャンプ+』に原作とネームを担当した新作読切が掲載されてるので! こちらも読んでもらえたらうれしいなッッ。


 ほんじゃ。お仕事くださ〜い。


 よろしく。


 さようなら。


●ライター:マシーナリーとも子


殺人サイボーグ。ふだんはVTuber、ライター、イラストレーター、漫画家として糊口をしのいでいる。満遍なく浅いオタク。お仕事募集中。


Twitter:@barzam154__


このニュースに関するつぶやき

  • これが本当の”手前味噌“_φ(・_・ 下手に漫画描くよりねとらぼなら稼げますな話www
    • イイネ!1
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