高良健吾主演映画『罪と悪』は正直、もう少し〇〇が欲しかった!最後まで生きにくいダークな世界観を貫く作品

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2024年02月03日 14:31  Pouch[ポーチ]

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【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、本音レビューをします。

今回ピックアップするのは、高良健吾さん主演映画『罪と悪』(2024年2月2日公開)です。共演は大東駿介さんと石田卓也さん。演技派がしっかりした芝居で魅了するノワールミステリー映画です。

ツッコミどころはあるものの、見応えある作品でしたよ。では、物語から行ってみましょう!

【物語】

何者かに殺された13歳の少年。同級生の春、晃、朔は友だちを殺した犯人と思われる人物を突き止め、殺したのちに家に火を放ち事件は幕を閉じたはずでした。

それから20年後、晃(大東駿介さん)は刑事になり、あることをきっかけに少年時代に過ごした故郷に戻ります。すると20年前と同じような少年の殺人事件が発生したのです。

 

その殺人事件の捜査するうちに、晃は春(高良健吾さん)と再会。彼は若い男たちを集めて面倒を見ながらも、悪事に手を染める若社長になっていました。そこに朔も加わり、彼らは過去の罪と向き合うことになるのですが……。

【友情が復讐に変わるときが悲劇のスタート】

前半は春、晃、朔の少年時代、後半は20年後に大人になって再会した3人を描いています。

いつも戯れあって、楽しそうだった仲よしの少年たちでしたが、同級生が殺されたことから彼らの日々は一転します。友だちを殺した犯人に復讐を遂げたことで、彼らは罪を背負って生きていかなければらならなくなるのです。

仲間を思って起こした行動が最悪の結果を招いてしまう。怒りと悲しみからの行動とはいえ、罪は罪。ちゃんと償わなければいけない。でも彼らは償うよりも罪を抹殺することを選択するのです。それが後半、大人編の鍵になっています。

【気まずい再会が空白の時間を物語る】

晃は20年ぶりにかつて暮らした町に帰って来るのですが、当時の友だちに再会しても気まずいんですよね。

晃は過去を封印しようとしている感じだし、半グレ軍団を率いる春はその現在の姿が明らかに過去の影響大だし。朔は実家の農家を懸命に手伝うことで過去を風化させようとしています。

再会してもモヤモヤしたバツの悪い空気感がなんとも居心地悪くて……。

そもそも彼らが暮らす町の空気がどんよりしているんですよ。半グレがウロウロしていて、治安もよろしくない。町全体が負の連鎖で覆われているよう。だったら出ていけばいいんですが、それができるのは比較的、裕福な晃だけ。

春と朔はこの町でしか生きられない環境で育っていて、この映画は格差社会の一端も描いていると思いました。

また20年前と同じような殺人事件が起こったことがきっかけで、かつての事件の真相が明らかになっていく流れには驚き。復讐したはずの犯人は……。この先は映画を観ていただきたいのですが、「え〜そんなぁ」と思わず呟きそうになりましたよ。

【もう少し希望を描いて欲しかったかも】

本作、助演キャストに佐藤浩市さん、椎名桔平さん、村上淳さんなどが登場し、役者陣は強力! 高良さんたちも上手いし、絵力は最強!です。でも前半の少年時代がけっこう長かった〜。この映画にとって少年時代は最重要なのですが、子役の3人が担うには荷が重かったのかもしれません。

正直な感想を申しますと、現実はそんなにうまくいくもんじゃないと思うけれど、もう少し希望を見せて欲しかった〜。最後の最後まで生きにくい世界を貫いたのはアッパレなんですが、見ているこちらは、ドッと疲れました……。

重めの映画をじっくり見たい、ダークな人間ドラマを見たい人におすすめの作品でした!

執筆:斎藤 香(c)Pouch
Photo:©2023「罪と悪」製作委員会

『罪と悪』
2024年2月2日より全国ロードショー
監督・脚本:齊藤勇起
出演:高良健吾、大東駿介、石田卓也

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