「お粗末」「遊園地みたい」と疑問視される「大吉原展」 「女性差別の負の歴史をふまえた展示」と主旨説明

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2024年02月08日 20:58  ねとらぼ

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大吉原展のロゴはビビットなピンク

 3月に東京芸術大学美術館で開催される「大吉原展」について、吉原を美化しているのではないかとする批判が集まっている件で、主催者は「決して繰り返してはならない女性差別の負の歴史をふまえて展示」しているとあらためて主旨を説明した。


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 「大吉原展 江戸アメイヂング」は江戸時代に約250年もの長きにわたって続いた幕府公認の遊郭・吉原の文化や芸術について当時描かれた国内外の浮世絵などを通し、歴史的に検証しその全貌に迫るというもの。しかし、公式サイトの「ファッションの最先端」「エンタメ大好き」「イケてる人は吉原にいた」といった表現や、「他の遊廓とは一線を画す、公界としての格式と伝統を備えた場所」といった説明から、人身売買や性的搾取という側面に触れられていないことに対する違和感を訴える声が挙がっていた。


 脳科学者の茂木健一郎氏は自身のX(旧Twitter)で「アートに関わる国内のトップ大学としてあり得ないお粗末さ」と表現。「全体のキュレーション、文脈付けが致命的に愚か」「まったく調子外れの企画展が出てきた事実に衝撃を受けました。大幅な企画の変更ないしは中止は不可避だと考えます」と批判している。


 また、漫画家の瀧波ユカリ氏も「ここで女性たちが何をさせられていたかがこれでもかとぼやかされた序文と概要。遊園地みたい」と不快感をあらわにしている。


 Xではイベントについて「今のタイミングで風俗キラキラコーティングイベントにGOサイン出たの意味がわからない」「軽薄さが痛々しい」「全て男性目線の気分じゃない?」「人身売買の歴史がウォッシュされています」との批判の声があがっていた。


 こうした意見は主催者側も把握しており、改めて展示会の主旨を説明した形だ。ねとらぼ編集部の質問に対しての回答は以下のとおり。


●本展の開催について


 本展のテーマである「吉原」という場所は、江戸時代に幕府公認のもとで作られました。


 この空間はそもそも芸能の空間でしたが、売買春が行われていたことは事実です。同時に、徹底した非日常の空間演出をはじめ、廓言葉の創造、書や和歌俳諧、着物や諸道具の工芸、書籍の出版、日本舞踊、音曲、生け花や茶の湯など、文化の集積地でもありました。その結果、多くの文化人が集い、膨大な絵画や浮世絵、書籍などを生み出す場となりました。


 本展は、今まで「日本文化」として位置づけられてこなかった「吉原」が生み出した文化を、美術作品を通じて再検証し、江戸文化の記憶として改めて紹介する趣旨で開催を決定いたしました。


 しかしながら一方で、上述しましたように、本展がテーマとする、花魁を中心とした遊廓「吉原」は、前借金の返済にしばられ、自由意志でやめることのできない遊女たちが支えたものであり、これは人権侵害・女性虐待にほかならず、許されない制度です。


 本展では、決して繰り返してはならない女性差別の負の歴史をふまえて展示してまいります。


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