アップル『iPhone 15 Pro Max』。アマチュアカメラ道の行き着いた先は、結局iPhoneだったという話

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2024年02月10日 07:41  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
最近、スマホを『iPhone 15 Pro Max』に切り換えた。

僕は第一世代の発売当初から、ずっと浮気せずiPhoneシリーズを使い続ける、そんじょそこらにいる何の変哲もないアップル信者なので、今さら“なぜiPhoneなのか?”は語るべくもないが、『iPhone 15 Pro Max』という機種を選んだ理由は、とにかくカメラ機能が優秀だからだ。


もはやその他のスマホ機能のスペックなどはあまり眼中になく、気分的にはまるで新しいカメラを買うようなつもりで『iPhone 15 Pro Max』を選んだ。

今回はそこに至る経緯を書いてみたいと思う。まあ、話は長くなるけれども。

○■小学生時代に魅入られて、どうしても欲しくてたまらなくなったポケットカメラ



世の中に数多存在するカメラマニアのおっさんが、その道を歩み始めたきっかけは人それぞれだと思うが、自分はどうだったっけと振り返ってみると、思い当たることがある。

あれは確か、1969年生まれの僕が小学3年か4年の時だから、1970年代の終わり頃のことだ。

店先でたまたま見かけた“ポケットカメラ”にえも言われぬ魅力を感じ、欲しくてたまらなくなった。そして親に散々ねだった挙句、何かのご褒美をもらえるタイミングでまんまと手に入れたのだ。



今となってはメーカーも機種もまったく不明だが、“ポケットフィルム”と呼ばれていた110フィルムを使う長方形の箱型で、普通のカメラのように箱を立てて持つのではなく、寝かせて構える仕様だったということだけは覚えている。

そこで「110フィルム 1970年代 ポケットカメラ」などのワードで検索してみると、懐かしい形のカメラがいくつもヒットした。



『Canon 110 ED』、『Kodak Pocket Instamatic』、『MINOLTA POCKET AUTOPAK』、『FUJICA POCKET FUJICA 500』、『National Pocket Camera C-T1』…。

いずれも見覚えがあるようなないような…。

断定はできないが、いずれにしてもこのあたりの機種・シリーズのどれかだったのではないかと思う。


1972年にコダックが開発した110フィルムは、従来の35mmフィルムの半分以下である16mm幅の小さな規格のフィルム。

ロールはコンパクトなカートリッジに収められているので、そのフィルムを使うカメラも従来よりずっと小型化が可能で、ポケットに収まるサイズになった。

そんなポケットカメラの造形に、小学生の僕は魅力を感じたのだ。



しかし結局、せっかく買ってもらったそのカメラを、僕はろくに使わず放り出してしまった。

念願のカメラを手にした瞬間こそ、とてつもない喜びを感じた。

これからは、目に映る世界の全てを自分のものにできるんだという、万能感のようなものも抱いた。

この小さなカメラさえ持っていれば、小さなフィルムの枠に切り取った世界を、自分のポケットに中へ次々と集めていくことができるような気がしたのだ。



ところが最初の1本のフィルムを取り終え、現像された写真を見て、僕はとてもがっかりした。

そのカメラで撮った写真はどれも、いつも父や祖父が自分のカメラで撮って見せてくれる写真と比べ、明らかに精彩を欠きぼんやりしていた。

ピンボケだったり、ブレブレだったり、暗すぎたり明るすぎたり、とてもじゃないが期待していたような美しい世界を切り取った写真ではなかった。

○■つい最近まで愛用していたのはライカのコンパクトカメラだった



今になって考えてみれば、それは当然なのである。

超初心者である小学生の自分が、固定焦点式で露出やシャッタスピード機構も簡略化された、今で言うところのトイカメラ風情のポケットカメラで、距離も光線もまったく考えず無闇にシャッターを切っていたのだから、きれいな写真が撮れるはずはない。

そもそも小さな110フィルムで撮ったネガを、35ミリフィルムにちょうどいいサイズに設定されている紙焼きに引き伸ばしたら、粒子が粗くシャープさに欠けた仕上がりとなるのは宿命だったのだ。



今の僕だったら、そういう写真も「味があっていいね」と評価できたりするのかもしれないが、まだそんな感性も芽生えてないガキンチョだったので、「なんだこりゃ。ダメだな、このカメラ」と断じてあっさり放り出してしまった。

あっという間に頭は次の興味対象、確かゲームウォッチかなんかだったと思うのだが、そっちの方に移行してしまい、ポケットカメラのことは忘れ去ってしまった。



だがその後十数年を経て社会人になった僕は、再びカメラに並々ならぬ興味を持つようになった。

それからというものあらゆる種のカメラに手を出し、フィルムカメラもデジタルカメラも、本当に数えきれないほど使ってきた。

その末に至った結論は、結局のところ自分が一番好きなのは、ポケットに収まるサイズの単焦点コンパクトカメラ一択だということだった。

やはり小学生の時に手にしたあのポケットカメラが、この道の原点だったと言うことなのかもしれない。

そんな僕が、つい最近までもっとも気に入り、頻繁に使っていたカメラは、2009年に買ったライカの『X1』だった。

今のようにカメラの価格が軒並み高騰する前だった当時でも21万円ほどだったから、コンパクトカメラに対する出資としてはかなり思い切った決断だった。


当時としては最高クラスの1220万画素、高品位単焦点レンズのエルマリート24mm F2.8を搭載。撮像素子はAPS-CのCCDセンサー。

そして往年のクラシカルライカを彷彿とさせる、左右両端が曲線を描くバルナック型ボディを採用した見目麗しいカメラだ。

ライカ『X1』は自分にとって特別なカメラで、写りもデザインも所有感も最高。

年を追うごとにスペック的には古臭くなっていったが、そんなことは関係なく、これさえあれば一生満足できると思っていた。

このカメラだけは絶対に手放さず、死ぬまで使い続けようと決めていたのだ。

○■ライカ『X1』のご臨終と、次に選んだ『iPhone 15 Pro Max』



しかし昨年秋、そんな愛しいライカ『X1』がついに逝ってしまった。

もちろん修理しようと思ったのだが、調べるほどそれは致命的な壊れ方であることがわかった。

ライカの公式窓口にも問い合わせたが、本機種はサポート期間が終了し、部品の調達もままならず修理不可能という返事が来た。

後継機を割引価格で紹介するので買い換えろというサジェスチョンまで添えて。



充電池など消耗品の生産も終わっているので、もし修理できたとしても使える期間は長くないということも知った。

昔の機械式フィルムカメラであればいくらでも修理できるらしいが、デジタルカメラというものはこうして、使用可能期間の終わりが否応なしに来るものだということを痛感させられたのだ。



それでもしばらくの間、諦めきれずにライカ『X1』を手元に置いていた。

時折取り出しては、もしかしたら何かのはずみで治っているのではないかという淡い期待を抱き、起動を試みたりしたがやっぱり全然ダメだった。

そして先日、いよいよ完全に諦めて「不動品 ジャンク品」と言うエクスキューズ付きでメルカリに出品。するとすぐに買い手がつき、ライカ『X1』は僕の元を旅立っていった。

ちなみに、ジャンクにも関わらずまあまあの値段で売れたのだから、ライカのブランド力はやっぱりすごい。

買った人は自力で修理するのかな? あるいは部品取りに使うのかな?

いなくなった後もそんなふうに思っているのだから、まるで未練たらたらの失恋男のようだ。



さてさて、『iPhone 15 Pro Max』のことを語るのではないかと思わせて、まったく違う話を長々と失礼いたしました。

そんな経緯でメインカメラを失った僕が、「次はどんなカメラを買おう」と数カ月間にわたり吟味を重ねた結果、選んだのが『iPhone 15 Pro Max』だったのである。


もちろん、カメラに一家言ある人ほど「お前、それでいいのか!」と言いたいことは、よくわかる。

僕も一端のカメラマニアなので、本物のカメラらしいカメラで撮った写真と、画像処理によって絵作りされたスマホカメラの写真の違いもよく知っている。

それでもやっぱり、さまざまなことを総合的に勘案してみると、僕のようなアマチュアが今のところもっとも楽しく充実したカメラライフを過ごすために必要なのは、最新のスマホカメラではないかと思ったのだ。



それにスマホはカメラだけではなく、それこそ世界で起こっているあらゆることをポケットの中に入れられる夢のような機械である。



『iPhone 15 Pro Max』にして良かった。

今のところこれが、あのポケットカメラの一件から40数年後に辿り着いた、私的カメラ道の結論なのです。


文・写真/佐藤誠二朗



佐藤誠二朗 さとうせいじろう 編集者/ライター、コラムニスト。1969年東京生まれ。雑誌「宝島」「smart」の編集に携わり、2000〜2009年は「smart」編集長。カルチャー、ファッションを中心にしながら、アウトドア、デュアルライフ、時事、エンタメ、旅行、家庭医学に至るまで幅広いジャンルで編集・執筆活動中。著書『ストリート・トラッド〜メンズファッションは温故知新』(集英社 2018)、『日本懐かしスニーカー大全』(辰巳出版 2020)、『オフィシャル・サブカルオヤジ・ハンドブック』(集英社 2021)。ほか編著書多数。新刊『山の家のスローバラード 東京⇆山中湖 行ったり来たりのデュアルライフ』発売。
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