家電製品のスイッチの脇に取り付け、スマホからの操作によってスイッチを物理的に押すためのデバイスは、一般に「ボット」「指ロボット」などと呼ばれる。
家電製品の中には、スマートプラグを使って根元から電源をオン/オフすることで操作できる製品もあるが、中には実際に運転スイッチを押さなければ動作しない製品もある。こうした製品をスマートフォンらから操作したくなった場合に、これらのボットは便利なアイテムだ。
今回はその1つ、セサミから販売されている「SESAME bot」(セサミボット)を入手したので、このジャンルではおそらく最も売れているであろうSwitchBotの「SwitchBotボット」と比較しつつ、そのメリット/デメリットをチェックする。
・家電製品の原点回帰? スマホなしでオン/オフできる「SwitchBotリモートボタン」を試す
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●外付けのアームを使って物理スイッチをリモートで押せる
SESAME botは手のひらサイズで、その側面にスイッチを押すためのアームが取り付けられている。アームは長さが異なる2種類が添付されており、スイッチの高さや、押し込んだ時の深さに合わせて、フィットする方を選んで使用する仕組みだ。
競合に当たるSwitchBotボットは、アームが本体中央に収納される構造ゆえ、スイッチに本体のセンターラインが合うように取り付ける必要があるが、本製品はアームが側面にあるため、スイッチにぎりぎり届く位置に貼り付けたり、向きを90度回転させて取り付けたりと、設置の自由度は高い。
家電製品への取り付けは、SwitchBotボットと同じく両面テープを使用する。粘着力はかなり強く、スイッチを押す力に負けて外れることはまずない。むしろ照明のカバープレートなど土台そのものがはめ込み式の場合、スイッチを押す圧に耐えきれずに土台ごと外れかねないので要注意だ。このあたりはSwitchBotボットに近いものがある。
続いて、スマホとの連携を見ていこう。
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●できることは基本的に「押す」だけ
スマホアプリのセットアップは極めて簡単で、専用アプリを起動し、新規デバイスとして追加を行うだけだ。ちなみに、用いるアプリは同じセサミのスマートロック用のアプリ(セサミ、ひらけゴマ ! /セサミ、ひらけゴマ、初代セサミとセサミminiは要別アプリ)とは別で、なぜわざわざ別のアプリに分かれているのか、ユーザー側から見ると少々不思議だ。
なお本製品ができるのは、スイッチを「押して戻る」「一回りする」「離して戻る」という3つの動作だけだ。SwitchBotボットのように、専用シールをスイッチに貼り付け、押し込んだスイッチを引っ張って戻したり、あるいは遅延実行を踏まえて複数のアクションを組み合わせたりするなどの設定は行えない。
そのため、用途としてはインターフォンの「応答」スイッチのように、1つのスイッチを繰り返して押すという挙動に限定される。実際にメーカーサイトを見ても、本製品をオートロックのインターフォンに取り付け、集合住宅の入り口のドアを、スマホからの操作によって遠隔で開けるなど、押すことに限定した用途が紹介されている。
もちろん本製品を2台用意すれば、スイッチの両端に取り付けて押したり戻したりといった操作は可能になるため、前述のような壁面の照明スイッチなどにも対応できるが、それならばSwitchBotボットを1台だけ導入した方が、ユーザーのニーズに合致する場合の方が多そうだ。
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●Nature Remoと組み合わせれば外出先からの利用も可能に
ところで、本製品とスマホの通信はBluetoothで行われるため、本製品単体では、外出先からの操作は行えない。外出先から本製品を操作したければ、別売のWi-Fiモジュールが必要なのだが、供給が極めて不安定で、本稿執筆中(2024年2月)の時点で、半年近く品切れが続いている。公式サイトの口コミが、納期に関するクレームで埋まっているほどだ。
そのため、現時点で本製品を外出先から操作したければ、本製品が連携可能なスマートリモコン、具体的には「Nature Remo」シリーズの利用がオススメだ。
これらを連携させれば、Wi-Fiを経由し、Bluetoothでは届かない外出先からの利用が可能になる他、Alexaなど音声アシスタント経由での利用もできるようになり、定型アクションにも組み込める。現状ではこの方法が最もオススメだ。なお、対応するのはNature Remoシリーズの中でも一部の製品に限られるのでくれぐれも注意したい。
●使うたびにアームの開始位置がズレる?
以上、本製品のセットアップから本製品に向いた使い方を紹介してきたが、最後に本製品を実際に使っていて、オヤッと思った点を書き留めておきたい。それは操作するたびにアームの開始位置にズレが生じることだ。
例えば「押して戻る」モードでは、押した後、元に戻ったアームの位置は、当初の開始位置よりも数度ほど前方へとずれる。「一回りする」だとさらに顕著で、360度回ったところで止まるのかと思いきや、さらに+45度ほど余計に回って止まる。
後方ではなく前方へとずれるために、押すはずだったスイッチを押せないというミスはないのだが、そうしたミスを防ぐために念入りに回転させるにしては、角度がやや過剰な印象だ。ネットの口コミでも同じ症状が見られるので、個体不良というわけではないようだ。詳しくは以下の動画を見てほしい。
この点、SwitchBotボットは本体にアームが収納される構造上、アームは必ず開始地点に戻る仕様になっている。またスイッチにシールを付けて引っ張る前述のスイッチモードでも、角度はかなりシビアに調整されている。そのため本製品のような問題は起こり得ない。
もしこれが仕様というのであれば、アプリ側に角度を調整する設定項目があってしかるべきだが、実際にはそうした機能はないので、ユーザー側では修正のしようがない。そのため、長期にわたって使っているとじわじわとズレてきて再調整が必要になるケースは、少なからずあると考えられる。
本製品は実売2178円(税込み、以下同様)と、SwitchBotボット(実売4480円)に比べると価格もリーズナブルで、この手のボットを試すには最適だが、ここまで見てきた品質や機能を考えると、SwitchBotボットとの価格差は妥当という印象だ。
なお本稿執筆時点では、同製品の公式サイトでは「ボタンを押している時間の設定機能」や「ダブルクリック操作」などへの対応が予告されている。ただ同社の製品に限ったことではないが、こうした予告は実装に至らず終わるケースもしばしばあるだけに、これら機能に魅力を感じるという人は、きちんと実装されるまで待ってから、購入の可否を判断することをお勧めする。
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