製作に名を連ねる俳優たち…作品づくりにもたらす効果とは?

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2024年02月25日 13:01  cinemacafe.net

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Netflixシリーズ「忍びの家 House of Ninjas」2月15日よりNetflix にて世界独占配信開始
Netflixシリーズ「忍びの家 House of Ninjas」が2月15日から配信中(全8話)。本作は、俳優の賀来賢人が主演・原案・共同プロデューサーを務めた一作。『哀れなるものたち』のエマ・ストーンや『バービー』のマーゴット・ロビーのように、出演者がプロデュースも兼任するのは海外ではさほど珍しくない印象だが(制作プロダクションを設立・運営している俳優も多い)、国内においてはまだまだレアケースだろう。

ただ、そうした旧来の構造は近年、徐々に崩れているようにも感じる。『デイアンドナイト』でプロデューサーを務めた山田孝之(阿部進之介らと短編映画制作プロジェクト『MIRRORLIAR FILMS』を運営)、『完全に詰んだイチ子はもうカリスマになるしかないの』『くすぶり女とすん止め女』ほか企画・プロデュース作を続々と放つMEGUMI、『沈黙の艦隊』で主演・プロデュースを兼任した大沢たかお、ニュースショー「THE TRUTH」を企画・主演した松田翔太、監督作をコンスタントに発表しつつ、移動映画館プロジェクト「cinéma bird」等も精力的に行う斎藤工等々、俳優における作品への関わり方はどんどん多様化している。

大物俳優の所属事務所からの独立も加速し、より「自分に合った」働き方が進んでいくことだろう。本稿では、直近〜今後の新作を中心に、こうした作品への関わり方の変化と、クリエイティブに何をもたらしたかを見ていきたい。

賀来賢人がNetflixに企画を持ち込んだ「忍びの家 House of Ninjas」

日本上陸以降、エッジの利いた企画を開発してきたNetflixが、またもや新たなチャレンジに打って出た。新作「忍びの家 House of Ninjas」で注目したいのは、賀来さんが原案を務めている点。「死にたい夜にかぎって」の演出を務めた村尾嘉昭、出演者の今井隆文と共に企画書を作成し、Netflixに持ち込んだそう。その後、デイヴ・ボイル監督が加わって構想・脚本を練り上げていった。つまり、本作は賀来さんから始まったオリジナルドラマなのだ(家族モノを作りたいという気持ちに、現代に忍者がいたら? というアイデアが掛け合わさったのが骨子だという)。

彼は主演として作品を引っ張りつつ、共同プロデューサーとしてクリエイティブ面を担ったそう。「衣装やロケ地をどうするか」等の撮影前段階の準備から、編集作業の仕上げのプロセスにも参加。賀来さんによれば本番ギリギリまでセリフの差し替えを行うなど試行錯誤を続けたそうで、こうした“粘り”の作品づくりが出来たのは「そういう現場である」という空気感の醸成――主演が製作も兼ねている座組だからこそ、ともいえる。かつ、賀来さんがボイル監督と二人三脚で進めることでイメージ共有もスムーズに進んだのではないか。また、出演者が製作も務める場合キャスティングが早い、という効果もある。賀来さんの呼びかけで決まった出演者もいるそうで、これもまた大きな利点だろう。

なお、Netflixコンテンツ・アクイジション部門バイス・プレジデントの坂本和隆はかねてより「スタジオ機能の内製化」を語っており(制作を外部に委託する体制を見直す)、クオリティとスピード感を強化していくと考えたときに、俳優部と制作部、演出部の垣根を取っ払っていくような動きは今後加速していく可能性が高い。

「沈黙の艦隊」原作者への企画プレゼンに出向いた大沢たかお

原作モノでも、新たな動きが生まれている。例えば、かわぐちかいじの人気漫画をAmazonスタジオが東宝と組んで実写化した『沈黙の艦隊』。公式サイトのインタビューを参照すると、主演・製作を務めた大沢たかおはかわぐち氏への企画プレゼンにも出向いたとのこと。さらには防衛省・自衛隊への協力にも一役買い、各地に足を運んだそう。元々はプロデューサー陣からの要望を受け、製作の兼任が決まったようだが、主演俳優が自ら動くことで安心感を与え、交渉がスムーズに進む&芝居も含むクオリティが上がる、という効果があったと想像できる。

これは映画製作に限らないが、ビッグプロジェクトなればこそ資金調達は必須。その際に、ビッグネームが責任者に近い立ち位置で関わる“座組”が敷かれていれば、投資する上でのリスク軽減にもつながる。特に映画は「どんなものになるか」「どれくらい当たるか・価値をもたらせられるか」が予測しづらい。『沈黙の艦隊』はテーマ的にもバジェット的にも“冒険”の側面が強いともいえるが、大沢さんが製作も務めたことで原作ファン的にも、主演俳優の並々ならぬ愛情を感じられる実写化は大きな安心材料といえる。

2月20日には続編の制作も発表され、大沢さんのプロデューサーとしての手腕にも更なる期待が寄せられている。

脚本開発から宣伝会議までカバーする『52ヘルツのクジラたち』杉咲花
「忍びの家 House of Ninjas」『沈黙の艦隊』は新たなチャレンジをしやすい配信プラットフォームだが、劇場映画はどうか。ここで紹介したいのが、『52ヘルツのクジラたち』(3月1日公開)の杉咲花だ。彼女はクレジットこそ出演者だが、その動きは一般的なイメージに留まらない。

出演が決まったのち、約1年間に及んだ脚本の改稿作業に参加。さらに、『エゴイスト』で活躍したLGBTQ+インクルーシブディレクターのミヤタ廉をチームに引き入れたり、公式サイトやチラシに「トリガーウォーニング」の掲載を提案したり、宣伝会議にも顔を出すなど、八面六臂の活躍を見せている。『市子』でも宣伝クリエイティブ面の意見出しを行ったそうだが、今後の彼女の作品づくりがどのように拡大していくのかに注目したい。

『ヴィレッジ』で横浜流星が脚本のフィードバックやロケハンに参加して役作りに活かしたり、『カラオケ行こ!』で綾野剛がオーディションに参加したり、「現場に行って演じる」だけが俳優の領域ではない。コンテンツ過多の現代、いかに協働して選ばれる・残る作品を創り上げていくのか。俳優陣の意識も、大きく変化しつつある。



(SYO)

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  • 竹内力の存在を忘れてはならない。彼と、彼が率いるRIKIプロダクションの製作作品には秀作&良作が多い。
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