ピエール瀧、小林且弥監督の初監督作での主演オファーは「断れない」 SNSの弊害描いた作品への思い

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2024年02月25日 18:00  ORICON NEWS

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映画『水平線』の(左から)ピエール瀧、小林且弥監督 (C)ORICON NewS inc.
 映画『凶悪』でやくざの親分と舎弟の関係性で共演したピエール瀧と小林且弥。あれから10年の歳月を経て、小林が初監督作品である『水平線』の主役をピエール瀧に託した。企画から製作まで4〜5年かかった中、小林監督は「どうしても瀧さんに真ん中に立っていて欲しかった」と思いを吐露すると、ピエール瀧も「『凶悪』で僕をずっとケアしてくれた舎弟を撃ち殺しているわけで…。やらないわけにはいかなかった」と冗談っぽく語る。そんなピエール瀧と小林監督が二人の関係性や作品に込めた思いなどを語り合った。

【動画】俳優復帰後初主演作への思いを明かすピエール瀧

■ピエール瀧が主演映画のオファーを受けた理由とは

 数々の話題作を世に送り出してきた白石和彌監督が手掛けた映画『凶悪』で共演したピエール瀧と小林監督。元暴力団組長の死刑囚・須藤純次を演じた瀧は劇中で、須藤を心酔している舎弟の五十嵐に扮した小林監督と芝居でガッツリと対峙した。

 小林監督は「瀧さんは覚えていないと思いますが、『リンダ リンダ リンダ』という映画の打ち上げで、場を回している瀧さんを遠目からそっと見つめていたのが、僕にとって初めての生ピエール瀧ですかね(笑)」と出会いについて述べると「その後『凶悪』でガッツリご一緒させていただいてから、ずっと慕っている存在でした」と語る。

 そんな中、小林のもとに届いたオリジナル企画での舞台演出オファー。その時点で『水平線』の元となる骨組みは出来上がっていたが、コロナ禍などの諸事情により別の企画を上演することになった。ただ、この企画自体をどうしても諦められなかったいう小林の想いが今作の映画化につながった。

小林監督は「最初の企画から4〜5年は経っていましたが、ずっと僕のなかには瀧さんには真ん中に立っていて欲しいと勝手に思っていたんです」と片思いをしていたことを明かすと、小林監督の思いにピエール瀧は「付き合いはそこそこ長いですが、俳優同士って現場が一緒じゃないとそこまで頻繁に会うわけでもないので…」と笑い「ある日、久々に電話があって。『あっ、小林君だ』と思ったら、あまり前置きなく単刀直入に『監督をやることになったので一緒にやってくれませんか』ってね」と振り返る。

 やや驚きはあったもののピエール瀧は「初監督ってやっぱり門出になるし、大事な作品だと思う。そこの主演として選んでもらったというのは光栄ですし、これは断ったらダメなやつだ」と直感的に感じ前向きに捉えたというと「でも向いていない役、例えば崖からバイクで飛び込んだり、飛行機から飛び降りたり…というのだと無理だから、一応脚本は読ませてもらったんです」と笑う。

 さらにピエール瀧は「『凶悪』で、(小林演じる)五十嵐は(ピエール瀧が演じた)須藤のことを全部ケアしてついてきてくれたのに撃ち殺してしまったという罪悪感があったんです」とジョークを飛ばすと「そんな小林くんに『お願いします』と言われたら断れないですよね」と笑顔で語っていた。

■ピエール瀧、SNSの炎上に率直な思い「怒りは快楽を生み出す」

 ピエール瀧が演じた井口真吾は、福島県のとある小さな漁港で散骨業を行う男だ。震災で妻を亡くし、娘と二人で生活している。ピエール瀧は「真吾は本当に市井の人。誰かを救うわけではなく、何かを変える男でもない」とヒーロー然とした人物ではないことを強調すると「震災で甚大な被害があった場所にいる人間ということで、イメージしきれない部分はありました。彼の奥深くにあるものを分かり得るのかというところが唯一不安でした」と語る。

 しかし小林監督から「瀧さんは瀧さんのままでフレームのなかにいてくれたらいい」と言われ、演じるのではなくその場に佇むことを意識して真吾という人物を作り上げていったという。

 もう一つ、小林監督の強いメッセージとして作品に込めた思いは、SNSの普及によってもたらされた弊害だ。劇中、真吾の元に、通り魔殺人事件の犯人の弟から、兄の遺骨を海に撒いてほしいという依頼が来る。このことによって直接事件に関係ないジャーナリストが、その是非を煽り、SNS上で大きなうねりを作り出す。

 小林監督は「この10年ぐらい、ソーシャルメディアがどんどん広がっていった。最初のころはいろいろな声を可視化する新たな民主主義なんて言われていましたが、いまでは同じ価値観を持たない人を叩く、分断のツールとしての側面が強いことも認めざるを得ません」と述べると、実際小林監督が福島を訪れるなか、メディアを通して伝えられている「震災を風化させるな」という思いに違和感を持っている現地の人たちが多いことに驚いたという。

ピエール瀧も「炎上と言われる多くの流れは、人の“怒り”なんですよね。それをSNSでさらに焚きつける。実は怒りの感情って一番コントロールしやすいんです」と述べると「怒りを持つことでドーパミンが出て快楽に近いものが生まれる。しかもSNSは匿名性で安全な場所から攻撃することで、よりハマっていく。だから怒りと決別することって難しい。沈静化すると、新たな怒りを見つける。その繰り返しですよね」と嘆く。

 続けてピエール瀧は「震災に遭われた方々も『何で俺の家族がこんなことになってしまったんだ』と怒りと向き合った10数年だったとも思うんです。それでも海とも付き合っていかなければいけないし、前を向かなければいけないと思って気持ちにふたをしている人もいる。僕が演じた真吾もそうだと思う。どうやって怒りと決別するのかと悩んでいるなか、部外者がやってきて感情を逆なでする。その意味で、この映画はとても現代的なテーマが内在していると思います」と語った。

■俳優業は「オチがないままふざけている壮大なギャグみたいな感じ」

 多重的なテーマが内在する本作だが、ピエール瀧演じる井口真吾は多くを語らず、表情や視線で物語に奥行きを与える味のある芝居を見せる。小林監督は「これ以上ないです」と笑みをこぼすと「瀧さんが真ん中にいてくれて、僕が信頼するスタッフたちが作り上げてくれた。生きていてトップ3に入るぐらいうれしいこと」と映画の完成を喜ぶ。

 ピエール瀧は初監督の小林監督に「初めての作品でいろいろやりたいこともあったと思う。しかも、もともと俳優をやっていた人なので」と気持ちを慮ると「でも僕に関してはあまりいろいろなことを言わず、現場でかもし出されたものを記録していた。とても勇気のいる選択だったと思うし、いいものに仕上がっている。これから先、どういう作品を作っていくのか楽しみですね」と称賛。

 本業はミュージシャンのピエール瀧。本作を初め俳優業が続いているが「ずっとオチがないままふざけている、壮大なギャグみたいな感じ」と演じることへのイメージを述べると「すごく面白いし魅力的な職業ではあるなと思っています。僕が職業というのは語弊がありますが、今後も必要としてくださる方がいるならば、応えられる部分は応えていきたいとは思っています」とスタンスを語っていた。(取材・文:磯部正和)

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