「忙しすぎる30・40代女性」に向け…大人気シナモロールの再構築、サンリオ初の試みが安田顕とのタッグで注目

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2024年02月26日 08:40  ORICON NEWS

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シナモンとヤスケンの料理番組、ツッコミどころ満載で話題(C) 2024 SANRIO S/T 著作(株)サンリオ
 俳優・安田顕によるミニ番組『シナモンと安田顕のゆるドキ☆クッキング』(TBS系、YouTube)が話題を集め、『SNS流行語大賞』にもノミネートされた。番組名のとおり、相棒はシナモンことシナモロール。絶大な人気を誇るサンリオキャラクターだが、実は水面下で大きな変化が起こっていた。キャラクターグッズを愛でる大人が増えた現在、「ファンシーで可愛らしい」ことはある種の“ハードル”に。嗜好が多様化した現代に合わせた、キャラクタービジネスの新たなノウハウとは?

【比較】「あれ、何かが違う!?」従来のシナモンと新ブランドのシナモン、見比べてみて!

■幾重にも重なるツッコミどころ、安田顕とシナモンの料理番組がSNSで注目

 料理番組を謳いながら、一向に料理が完成しない? そんな異色な料理番組『シナモンと安田顕のゆるドキ☆クッキング』がジワジワくると話題を呼んでいる。

 昨年10月よりTBSとYouTubeで放送中の同番組は、俳優・安田顕がサンリオの人気キャラクター・シナモンと一緒に料理をするミニ番組──のはずが、安田が料理の作り方を紹介しようとするたびにシナモンのマイペースな言動に振り回され、そのままエンディングへと突入するのが定番の展開。安田の困惑しきった表情や、時に核心を突くようなシナモンのセリフも中毒性を醸しており、料理の行方を見守る視聴者を増やしている。

 番組が発表された当初は、「ヤスケンがついに料理番組を!?」とSNSをザワつかせた。さらに番組ビジュアルが公開されると、“相方"であるシナモンの見た目にも「おなじみのシナモンのような、シナモンじゃないような…」「私の知ってるシナモンじゃない」と注目が集まることに。そうしたツッコミどころが幾重にも重なり、SNSは大バズり。昨年の『SNS流行語大賞』にノミネートされる結果にもなった。

 このような状況に、「予想を遥かに超える反響に驚いています」と語るのは、サンリオのグローバル・デジタルマーケティング本部 キャラクタープロデュース室の皆川真穂さんだ。

 シナモンの愛称で親しまれるシナモロールと言えば、『サンリオキャラクター大賞』で4連覇中の押しも押されもせぬ大人気キャラクターだ。ところが、『〜ゆるドキ☆クッキング』に出演中のシナモンは、同じようでどこか違う。デザインはシナモン本来のファンシーさはグッと抑えめで、洗練されたグラフィカルな佇まいが目を引く。

 そもそもシナモンには、「ある日、空からふわふわ飛んできたところを、カフェ・シナモンのお姉さんと出会って看板犬として活躍している」というストーリーがある。しかし番組で活躍しているのは、「とある都市に降り立ち、いろいろあったのちに自立したシナモン」なのだという。そうした従来とは異なるパラレルワールドを生きるシナモンを描くのが、昨年スタートした新ブランド「I.CINNAMOROLL」(アイシナモロール)だ。

 既存キャラクターを別の世界線で展開させるのは面白い取り組みではあるが、順風満帆なシナモロールであえてそうした挑戦をする必要はあったのか? という疑問も残る。

 「たしかに、シナモロールはデビューから20年を超えて幅広い世代に愛していただけるキャラクターに育ちましたが、30〜40代女性にはややファンが少ないという課題もありました。というのも、その世代が幼かった頃はまだシナモンは誕生していなかったんです。また、万人受けするシナモンの可愛らしさも、特に嗜好が多様化したその世代にとっては『ファンシーすぎて抵抗がある』『自分ではグッズを持ちにくい』という意見もありました」

■家庭、仕事、子育て…、「誰かのために」忙しすぎる30・40代女性を新たなターゲットに

 新ブランド立ち上げにあたって据えたターゲット層は、“シナモン空白世代”の30〜40代女性。主婦や働く女性、お母さん層だ。デザインの調整もさることながら、その世代のインサイト調査も重ねた。

 「一番多く聞かれたのは、『忙しい』という声でした。家庭のこと、仕事のこと、子どものこと、親のこと…自分はさておき、誰かのために日々を目まぐるしく過ごされている方がこの世代にはとても多いんです。その世代に届けるために「I.CINNAMOROLL」のシナモンには、人の目よりも自分自身の心と体を大切にする、自分自身が自分を一番好きだと思える、そんな“ご自愛マインド”を体現してもらおうと考えました」

 従来のシナモンの特技は、長い耳でふわふわと空を飛ぶこと。しかし「I.CINNAMOROLL」のシナモンは、朝は目覚まし時計で起き、自分の足で歩き、電車に乗って目的地まで行くといった地に足をつけたキャラクターだ。YouTubeで公開中のミニアニメでは、そんなシナモンの特別ではない日常を大切に過ごす様子が描かれている。

 「自立したシナモンですので、元の小さな男の子設定から、少年くらいの年齢感に変更しました。少年らしく、安田さんにちょっぴり生意気な口を利いたりもしますが、自分や他人を傷つけるようなことは絶対に言いません。そこは従来と変わらないところですね。I.CINNAMOROLLのシナモンは知らない街をお散歩するのが趣味なので、いつかスタジオを飛び出して安田さんと街ブラできたらいいな、なんていう野望もあります」

 シナモロールほど安定感のあるキャラクターの別ブランドを立ち上げるのは、サンリオでも初の試み。熱烈なファンも多いキャラクターだけに、魅力を損ねてしまうなどの懸念はなかったのだろうか。

 「たしかに、30〜40代をターゲットにするなら『新たなキャラクターを開発してはどうか』という案も出ました。ただ、私たちとしてはシナモンの長い耳や真っ白でふわふわなフォルムは絶対に可愛いという自信がありましたし、このフォルムを生かしながら今以上に幅広い層に届けたいという強い思いがありました」

 デザインを洗練させるにあたって、色使いや目の位置、口の形などミリ単位で微調整を行なった。特にこだわったのが正方形に収められる縦横比で、これはインスタグラムで最も美しく見える比率なのだという。

 「これまでシナモンとタッチポイントのなかった層に届けるためにも、単純に“ちょっとデザインが変わっただけ”では終わらせたくありませんでした。数メートル離れて見るとどちらもシナモンだとわかるけれど、近づくと明確に違いがわかる。デザイナーには、とても難しい調整をしてもらっています」

 このような過程を経て誕生した「I.CINNAMOROLL」は、グッズが発売されるやいなや売り切れが続出。その洗練されたデザインで、新規ファンを多くつかんでいるという。

 「店頭でお話を伺ったところ、『これまでサンリオショップに来たことがなかった』というお客さまが大勢いました。番組やSNSで知ったという方が多かったですね。SNSのコメントでも、従来のシナモロールに対しては可愛らしさを愛でる声が多いのですが、I.CINNAMOROLLには同じ世界を生きている感覚でコメントしてくださる方が多いです」

 勢いづく「I.CINNAMOROLL」の一方で、従来のシナモロールファンは不安になっているかもしれない。しかし「I.CINNAMOROLLが頑張ってくれているからこそ、シナモロールにもさらに力を入れよう! という空気が生まれています」とのことだ。

 新キャラクターが続々とデビューするなか、シナモロールですら誕生から20有余年。長寿化するキャラクターがいる一方で、嗜好の多様化にともないキャラクターの種類は増加。また、それらを愛でる層も子どもだけではなく、大人が多くを占めるようになった。80〜90年代のキャラクターがレトロの文脈で再評価される流れも近年増えたが、このような風潮も関係しているのであろう。

 しかし、明確なターゲット設定のもと、既存キャラクターをドラスティックに再構築し、タッチポイントを拡大するに至ったケースは珍しい。キャラクタービジネスに新たなノウハウをもたらしたサンリオで、今後もこのような取り組みが行われるのか注視したい。

(文:児玉澄子)

(C) 2024 SANRIO S/T 著作(株)サンリオ

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